2023年9月12日火曜日

トンノ・ディ・コニッリオは決して新種のマグロの料理ではなく、北イタリアならではの白肉の保存方法、オイル漬けにしたうさぎ肉がマグロのオイル漬けのようだ、という話。


今月の(CIR)の地方料理、次は“うさぎのトンノ”です。
イタリア語ではtonno di coniglio、トンノ・ディ・コニッリオ。
トンノはもちろん、“マグロ”。つまり“うさぎのマグロ”。グーグル翻訳風に言うとうさぎマグロ。新種のマグロかい!?
なんだかイタリア料理にしては珍しく可愛い名前の料理。
どの地方の料理だと思いますか。
答えは(CIR)7月号P.29にもある通り、ピエモンテです。
料理の話に入る前に、大前提。
この料理には、マグロも他の魚も入っていません。コース的には前菜です。

うさぎのトンノ。

うさぎはピエモンテ料理にはよく使われる食材。
マグロは、ヴィテッロ・トンナートというピエモンテの名物料理があるけど、別にこれにもマグロははいってない。
リグーリアのバカンス地は、庶民が押し寄せる夏のシーズンが終わると、次はピエモンテ人とロンバルディア人でいっぱいになる。海がないこれらの北イタリアの州では、ツナ、と言うかマグロのオイル漬けとアンチョビは、リグーリアの行商人が売りに来る貴重な海の食材だった。

オイル漬けは、地中海地方の最古の保存方法。塩漬けとスモークについては北イタリアの肉の保存方法として、何度も取り上げてます。

アルト・アディジェの生ハム、スペック。保存方法はスモーク。

南イタリアでは、太陽で干す天日干し、バジリカータのペペローニ・クルスキ・セネージ。



そしてもう一つの方法は、オイル漬け。うさぎなどの白肉をこの方法で保存するとマグロのオイル漬けのような味になるそうです。


うさぎはリグーリア内陸部の名物料理の一つ。リグーリア風は松の実とオリーブ風味。



イタリアのうさぎの地方料理として有名なのは、うさぎのイスキア風。
イスキアはカンパーニアの島。カプリやアマルフィに物足りなくなった人が行くちょっと上級の島。漁業より農業が中心。かつては野生の穴ウサギが生息していたのですが、今は数が減って飼育されたうさぎが主体。


(CIR)の記事にもある通り、ピエモンテ料理には前菜の名物がたくさんあります。

ピエモンテ風前菜、ジャルデイニエーラ。

ビテッロ・トンナート。


アンチョビ・アル・ベルデ。


白肉と言えば鶏肉。なので“鶏のマグロTonno di gallina”という料理もあります。

上の動画のシェフは、自らを農民シェフと名乗るカンパーニア出身のピエトロ・パリージシェフ。

ピエトロ・パリージ』/クオーコ・コンタディーノ



スローフードの地方料理の本、『イタリア・イン・クチーナ』には鶏肉のトンノのリチェッタが載っていますが、板版大変なのは平外の鶏をさばくこと、とあります。ただし、平飼いの鶏は現在では数が減って貴重品になっています。

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イタリアの料理月刊誌の日本語解説『(CIRクチーナ・イタリアーナ・レジョナーレ)
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