子羊の話。イタリア料理を知るまでは、肉と言えば、豚、鶏、牛しか知らなかったのですが、イタリア料理と出会うと、子羊や去勢鶏といった肉とも出会いました。子羊も、去勢鶏も、イタリア料理には欠かせない食材。そして子羊と言えば、ローマ料理。
ローマでは、草を食む前の乳飲み子羊のことを“アッバッキオabbacchio”と呼びます。
その語源は、“屠殺する“という意味の“アッバッキアーレabbacchiare”という説と、ラテン語で“棒のそば”という意味の“アド・バクルムad baculum”だ、という説があります。古代ローマでは、生まれたばかりの子羊が飛び跳ねてけがをしないように、地面に立てた棒に縛っておく習慣があったことに由来します。
子羊は飛び跳ねるのがデフォルト。
考えてみれば子羊なんて見たことなかったから、こんなに飛び跳ねるなんて、しかもこんなに可愛いなんて知らなかった。はあ癒される~。危なっかしくて、棒に縛っておきたくなる気持ちも分かるなあ。
羊飼いも羊を飼う文化も、地中海では一般的だけど、日本までは伝わらなかったなあ。そういえば、トロイア戦争から故郷に戻る途中のユリシーズが立ち寄った島に住む一つ目の巨人サイクロプスは、羊飼いでした。
恐ろし気な一つ目巨人の周りに羊がウロチョロするのもお約束。
ローマのアッバッキオは地域の特産物でありながら、日本では口にする機会はまったくなく、ローマに行ったら絶対食べたい食材。肉は脂肪が少なく、とても柔らかく、味はデリケートなのが特徴で、炭火でスコッタ―トする調理方法が代表的。
子羊肉の話をする時は、あの超可愛い動物を食べるという、正直言ってつらい話。はっきり言って、かなり割り切らないとできない。でも、ローマの食文化と子羊は、切っても切れない関係。長~い歴史があります。とは言っても、大都会で羊を飼育するというのは、現代ではかなり無理がある話。ラツィオ産のアッバッキオは減少の一途。ペココリーノ・ロマーノが、実際にはサルデーニャで造られているのと同じ。
アッバッキオ・ロマーノ。
アッバッキオ・スコッタディートabbacchio scottadito
アッバッキオ・アッラ・ロマーナのリチェッタ。
アッバッキオはデリケートな肉なので、加熱時間は短い方がよく、さっと焼いたら弱火にして時々焼き汁をかけながて乾かないようにしながら加熱します。
現在では一年中流通していますが、旬は春。
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