サルデーニャのクルルジョネス(リチェッタはCIR2021年12月号P.4)は旅をするのに値する芸術的なパスタ。
形が芸術的なパスタですが、このパスタの詰め物は、ゆでたじゃがいも、ペコリーノ、ミントなど。
古代ローマの羊飼いによってイタリア中に広まったフレッシュチーズを使うリチェッタも。
ちなみに豚や牛の飼育はロンバルディアから広まりました。
詰め物入りパスタは、閉じ方がポイント。クルルジョネスはかなり複雑で伝統的なパスタ。
イタリアには閉じ方で有名な詰め物入りパスタがたくさんあります。
まず、このタイプのパスタは北イタリアの食べ物で、南ではあまり見かけません。そういう意味からもクルルジョネスは特別なパスタ。
ローマ時代に羊飼いの文化が広まった地方では、リコッタなどのフレッシュチーズや野菜を具にし、その後、ロンバルド族に支配された地方では牛と豚の飼育が義務付けられたため、パスタの詰め物にも牛肉や豚肉を使うようになったという説もあります。
このパスタは薄く平らに伸ばすことに特化した北伊で栽培される軟質小麦粉を使うからです。硬質小麦粉は3Dの立体的な造形には向いていますが、細かい細工には適しません。
北イタリアには有史以前から軟質小麦が生えていました。一方、イタリア南部や地中海全的では、硬質小麦が栽培されています。北部の気候は硬質小麦には適さないのです。
軟質小麦はパンにするとおいしいですが、粘り気がありすぎて小麦粉と水を混ぜた乾麺には向きません。軟質小麦は硬質小麦と比べると、でんぷんの量が多く、グルテンを始めとするたんぱく質、ミネラル、ビタミン、脂肪が少ないからです。そこで北イタリアの人は動物性たんぱく質を加えることによって腰のある生地を作りだしました。軟質小麦にない性質を補う動物性たんぱく質、それは卵白でした。
北伊の詰め物入りパスタの傑作は、トルテッリーニです。
クルルジョネスによく似た詰め物入りパスタ、ピアチェンツァのトルテッリ・コン・ラ・コーダ。
色んな形の詰め物入りパスタがありますが、基本は薄~く伸ばしたパスタ・テーザ。これをカットするとタリアテッレになります。
パスタを薄く均一に伸ばす技も芸術的。ボローニャの女性はこの技を母親から受け継いでお嫁に行きます。
トルテッリーニの仲間、パルマやピアチェンツァのアノリーニは道具で成形するブキッチョの味方。トルテッリーニ、アノリーニ、カッペッレッティなどは同じ生地から造られる詰め物入りパスタですが、トルテッリーニは生地が一番薄い。
詰め物入パスタからはイタリアの食文化が形成される過程が見えてきます。
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