2023年7月18日火曜日

モッツァレラとブッラータの違いはプーリアのカゼイフィーチョで買ってみるとよくわかる。

今日は(CIR)の5月のリチェッタに戻って、お題は、前菜の2品目から、ブッラティーナです。
ブッラティーナは、小さなブッラータのこと。
こういう言い方を初めて聞きました。そしてまざまざとよみがえったのが、プーリアのアンドリアの行列のできる人気のチーズ屋で初めてブッラータを買った時のこと。
プーリアのチーズ専門店で、ブッラータを買う、というのはかなりのカルチャーショックな体験でした。
このチーズは、モッツァレラみたいだけど、モッツァレラとは全然違うチーズだということが、この一時の体験で刻みこまれました。

この時まで私は、ブッラータを買う、ということは、モッツァレラを買うようなもんだと思っていました。つまり、ブッラータの製法をまったく理解していなかったわけです。
とにかく、プーリアに行ったらチーズ屋さんでブッラータを買うことをお勧めします。強烈に。

ブッラータ。


モッツァレラ。

店でショーケースの中をどんなに探してみても、ブッラータらしきものはありません。
どこにあるのかな・・・、と探していると、職人さんらしき店員さんに、何グラム?と聞かれました。これは想定外の質問だったので返事に困っていると、職人さんは、何人で食べるの?
と聞き直してくれました。3人という私の答えを聞くと、職人さんは、さっと作業場の中へ消えていきました。あ、チーズはショーケースには出さないで作業場の中にあるのね、さすがは賞味期限が短いフレッシュチーズ・・・。なんて思いながら、ちょっと手持ち無沙汰に待っていると、職人さんは、手に立派な包みをもって再登場しました。
その時まで、ブッラータってモッツァレラみたいな丸いぽよよんとしたチーズだとばかり思い込んでいたのです。

ちょっと思い出してみると、ブッラータはモッツァレラで作る袋にスキアッチャータを詰めで口を縛ったチーズでした。形は球形ではなく、口を笹のような長い葉っぱで縛った巾着袋状のものでした。
ストラッチャテッラはモッツァレラを細く割いて生クリームを加えたもの。


下の動画のブッラータは、ストラッチャテッラが100g、大きなものは800g詰めるそうです。
つまり店で聞かれた重さは、ブッラータの重さではなく、ストラッチャテッラの量のことだったのでした。多分、3人分で300g詰めてくれたのでは・・・。そして100gのストラッチャテッラを詰めたブッラータは、ミニブッラータ。これが今回のリチェッタの主役、ブッラティーナburratinaです。
さらに職人さんからブッラータを渡されながら出て行きがけに、店で順番を待っていた満員のお客さん全員から、冷蔵庫に入れちゃだめだよ、と念を押されるという、超楽しい体験もしました。その日一日、ブッラータを抱えてプーリアをあちこち歩き回りました。夕方食べた時は、ストラッチャテッラはバター状になっていて、まさにブッラータ。こんな美味しいチーズ、初めて食べた~と感動したのでした。


モッツァレラvsブッラータ。





ブッラティーナはサラダの中央にどーんと置くのにぴったりのサイズ。


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イタリアの料理月刊誌の日本語解説『(CIRクチーナ・イタリアーナ・レジョナーレ)
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2023年7月15日土曜日

サルデーニャのドルチェは人の温もりと創造力と器用さが感じられる。感動するドルチェ。

(CIR5月号)の5月のリチェッタから、一品目は“アスパラガスとポロネギのグラティナーティ”。
野菜のグラタンですが、この料理のポイントは、白いベシャメルをかけて焼く定番のグラタンではなく、ベシャメルをサフランで黄色にしているところ。
ベシャメルが黄色になっただけで、随分印象が変わるもんですね。

オーソドックスなベシャメル。

白いポロネギのグラタンにはサフランが欠かせない。

さらにこの料理のポイントは黄金色のベシャメルで野菜を覆うのではなく、中央部分にだけかけて、両端のアスパラガスの緑を出しているところ。料理が美しくなるでけでなく、軽快になります。

サフランといえば、先日取り上げたばかりでした。
サルデーニャはサフランの産地で、その料理にもよく使われています。
サルデーニャのサフラン入りドルチェといえば、パルドゥラス。
個性的なサルデーニャのドルチェらしく、丸く抜いた生地に、サフランを加えて黄色くしたリコッタを詰めて角が6個ある籠の形にするという、手先の器用さと創造力が要求されるドルチェ。人の手のぬくもりが黄色いリコッタの地詰め物からも感じられます。

パルドゥラス。

サルデーニャのドルチェ。
作ってている最中は、どんな出来上がりになるのか想像もつかない。
でも、出来上がりは、素晴らしい!!! 長いけど話題になった力作ドキュメンタリー。


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2023年7月14日金曜日

ミラノの定番料理、ポレンタとゾーラは、タレッジョでも応用できます。ゾーラと呼ぶと都会風だけど、洋梨を組み合わせると、ぐっと農家風。

今日はゴルゴンゾーラの本場、ミラノのゴルゴン―ラの定番料理、“ポレンタ・エ・ゾーラ”です。
ゾーラはミラノでのゴルゴンゾーラの呼び方。

ポレンタ・エ・ゴルゴンゾーラPolenta e Gorgonzola。


ゴルゴンゾーラだけでなく、他のストラッキーノ、タレッジョなど溶けるタイプのチーズでも作ります。

きのことタレッジョの詰め物のポレンタのトルティーノ。

さらにゴルゴンゾーラのフォンドゥータは、ゴルゴンゾーラを牛乳で溶いてソース化したもの。肉のソースやパスタソース、ブルスケッタにしたりと、ゴルゴンゾーラ料理の幅が広がります。

ゴルゴンゾーラのフォンドゥータ。

材料
バターかサラダ油・・30g
小麦粉・・40g
牛乳・・400ml
ゴルゴンゾーラ・・150g
おろしたパルミジャーノ・・30g

・バターと小麦粉でルーを作り、黄金色になったら牛乳を加えてホイッバーでよく混ぜる。
・小片にしたゴルゴンゾーラを加えてかき混ぜながら煮詰める。
・パルミジャーノを加える。

ゴルゴンゾーラと洋梨のスパゲッティSPAGHETTI CON PERE E GORGONZOLA

材料
上質のスパゲッティ・・320g
洋梨・・1個
ゴルゴンゾーラ・・150g
バター・・40g
塩、こしょう

・パスタをゆでる。
・フライパンにバターを熱する
・洋梨は皮をむいて小角切りにする。
・フライパンに洋梨を加えてさっと炒める。
・バターが溶けたらゴルゴンゾーラ少々とゆで汁を加えて溶かし、こしょうをかける。
・小さく切ったゴルゴンゾーラとゆで汁少々を加えてなじませる。生クリームや牛乳は加えない。
・チーズが溶けたらパスタを加えてなじませる。
・レードルとトングを使って山型に盛り付け、洋梨をトッピングする。

すごくくるみを散らしたくなります。

 ミラノの庶民の味を知りたくなったら、市場へ。

 
ミラノのピッツァとスナック。

前菜からドルチェまで、イタリアのチーズ料理が名物のミラノのオステリア。

ゴルゴンゾーラのジェラート。

材料/
植物性生クリーム・・500g
全乳・・200g
ゴルゴンゾーラ・ドルチェ・・300g
刻みアーモンド・・100g
蜂蜜・・50g

・鍋に牛乳、ゴルゴンゾーラを熱する。
・生クリームをホイップしながら刻みアーモンドを加える。熱したゴルゴンゾーラを少しずつ加え、冷凍庫で冷やす。



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2023年7月13日木曜日

2回の搾乳のミルクから作るのがストラッキーノ。その一種、ゴルゴンゾーラはうっかり者の羊飼いのドジから生まれたチーズで、やっぱりポイントは2回の搾乳。

今日のお題はゴルゴンゾーラです。
ゴルゴンゾーラは、ストラッキーノの一種。
ストラッキーノの製造過程は今月の(CIRP.14)でも詳しく説明していますが、朝、晩2回の搾乳から造られる、というのがポイント。チーズの話の中で、この朝晩2回の搾乳という言葉が時々で来るので、一応興味はありました。
でも、訳してみて、カゼイン分子がなんたら、という言葉が出てきたあたりから、文系脳の限界を突破したみたいで、あまりに理系な話で、羊飼いのみなさんへの尊敬しかないです。
なんとなく理解したのは、1回目の搾乳が固まり、つまり水分を出してから再び2回目の朝搾ったミルクとレンネットを加えるとカゼイン分子が再圧縮されてホエイの放出が可能になる、ということのようです。しらんけど。

ストラッキーノ造り。
ところで、今月の(CIR)の“ストラッキーノ”の記事にもある通り、同じルーツの朝、晩2回の搾乳から作るチーズは、出来上がりは全く違うチーズになります。
その代表がゴルゴンゾーラやタレッジョ。

タレッジョ。

ゴルゴンゾーラ。

2回の搾乳なんて、そんなに大切なこと?
と思うかもしれませんが、ゴルゴンゾーラは、その大切さがあまりよくわかってないうっかり者の羊飼いがうっかりつくっちゃったチーズと言い伝えられています。
つまり、うっかりして二日分の搾乳を同じ容器に入れちゃったという、いかにも起こりそうなドジで、濃度の違うミルクの間に空気の層ができて、その結果カビが発生した、というのです。カピーシ?

いまどきの搾乳。

乳搾りの世界大会。


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2023年7月12日水曜日

今どきの移牧は山の放牧地まで巨大な2型建てトラックでちゃちゃっと移動。絶対疲れてないね。

今日から(CIR/クチーナ・イタリアーナ・レジョナーレ)2021年5月号の解説です。
まず、移牧に出発するために美しく飾られた牛を見た後なので、最初の記事は“ストラッキーノ”です(P.13)。
ストラッキーノは、ロンバルディアの方言で“疲れた”という意味のstraco/ストラッコ。
4㎞山の上の放牧地から時速4㎞のペースの旅から戻った、重さ700㎏の疲れた牛のミルクから作るチーズ、という基本情報は、知っていたのですが、その旅の間に牛が食べるのが夏り終わりの栄養が少ない草で、牛乳はたんぱく質や脂肪も少ない、ということは初めて知りました。色も黄色より青みがかっているなんて、牛たち、えらい。つまり、掛け値なしに疲れている牛のミルクがベースなんです。
こんなちょっと悲惨な牛のミルクから、個性が大きく違う数種類のチーズが造られています。
有名なのは、ゴルゴンゾーラ。

ロンバルディアの今どきの放牧の動画を見つけてしまった。
2階建ての大きなトラック数台で山の放牧地へ出発。
夏休みの林間学校にでも行くみたい。
猛暑の中で見る山の放牧地は、涼し気~。
きっとこの牛たちは元気一杯に違いない。
やっぱり動物愛護の観点からも、疲れた牛のミルクなんて、残酷すぎる。
でも安心してください。帰り道は下りですから。

移牧から帰ってきた牛たち。お疲れ様~。


下りとはいえ、とぼとぼ歩いてる牛たちは、かなりお疲れなのでは・・・。


ストラッキーノ。

ストラッキーノはや柔らかい、つまり水分の含有量が多いチーズ。
ミルクは朝晩2回の搾乳から作る。
2回の搾乳から作るチーズというのはイタリアのチーズの一つの大きな分類なので、どういう製法なのか気にはなっていましたが、今回は、かなり詳しく書かれていたので、正直、まったくいみふながら、頑張って訳してみました。
正直言って、羊飼いってすごい理系な職業じゃない?

夜の間、1回目の搾乳のミルクは酸凝固が進み、乳酸菌が糖分を食べて乳酸を作り、乳酸は酸度が低下してカゼイン分子を沈殿させる。
これに朝の搾乳分のミルクを加え、さらにカゼイン分子を分解する子牛の胃から取ったレンネットも加えると、カゼイン分子が凝縮してと再圧縮され、液体成分の放出が可能になる。

これだけ書くだけでもくたくたです。
この基本的理論を理解したうえで、次はいよいよ、代表的ストラッキーノ、ゴルゴンゾーラを見ていきます。





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2023年7月11日火曜日

(CIR5月号)発売しました。

(CIR/クチーナ・イタリアーナ・レジョナーレ)2021年5月号、発売しました。
最近、移牧、移牧と何度も言っていた気がしますが、5月号のスタートは、移牧の旅に出発するために花で美しく飾られたアルト・アディジェの牛がトップ。
5月22日は世界生物多様性の日だそうですが、この生物多様性という言葉は、最近のイタリア料理の話をする時に、必ず登場する言葉です。
WWFによると、イタリアには58000種類の動物と12000種類の植物がいて、ヨーロッパ最大の数だそうです。

アルプスの移牧の出発は、ファンタジーの世界に迷い込んだみたい。

そして記事は、移牧から戻った疲れた牛のミルクで作るチーズ、ストラッキーノの話へ。
代表的なストラッキーノチーズはゴルゴンゾーラ、タレッジョなど。
“食材”は羊のチーズ。ペコリーノを詳細に解説してます。
“リチェッタ”はパスタ・クレッシュータ。ピッツァ・フリッタなどの揚げパスタです。
“エノテカ”はランブルスコ。基本のワインですが、初めて聞く話もあって、納得でした。

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(CIR)は約50ページの小冊子です。
価格は1冊\900(税・送料込)、1年12冊の定期購読だと15%引きの\9200(税・送料込)になります。紙版と、ネット上にupするPDF版があります。PDF版の価格は\800/号、定期購読は\7700/1年12冊です。

現在、2021年の号を販売中です。それ以前の号と、旧総合解説はシステムの変更のため販売を終了しました。
現在販売している(CIR/クチーナ・イタリアーナ・レジョナーレ)バックナンバーは、2021年1~5月号です。
定期購読は2021年からできます。
古い雑誌や本は在庫を探しますのでご相談ください。

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2023年7月10日月曜日

白いガーディアン、マレンマ・シープドッグと、穴掘り大好き犬、ラゴット・ロマニョ―ロ。イタリアの2大働く犬。

羊飼いの本場として知られるサルデーニャ。羊に関しては中央イタリアも負けず劣らず知られている。
(CIR4月号)によると(日本語訳はP.51~)、中央イタリアの子羊肉は、アニェッロ・デル・チェントロ・イタリアというIgp製品。管理組合によって厳しく管理されています。
中央イタリアの範囲はトスカーナ、ラツィオ、アブルッツォ、マルケ、ウンブリア、エミリア・ロマーニャの一部。

(CIR)5月号は来週発売予定ですが、それには羊のチーズの記事があります。毎月記事を訳していて、なんだか、羊の群れが飼えそうなくらい詳しくなった気がします。羊の群れを引き連れて移牧に行くなら、牧羊犬も必要ですね。クマや狼と戦える大型犬が必要だそうです。
動画に白くて大きな牧羊犬がでてきましたが、イタリアでは牧羊犬とトリュフ犬が大人気。

優しい巨人、白いガーディアンと呼ばれて愛されているマレンマ・シープドッグ。ちなみにprime videoで“プロセッコ殺人事件”を観てたら、いきなりマレンマ種のワンちゃんが登場して、カルティッツェのぶどう畑、とかいう話も出てきて、大人気のプロセッコの40haのぶどう畑を親から受け継いだ伯爵の気持ちがよくわかって面白かったです。映画の冒頭、伯爵は、毎年1haを休耕地にするように、プロセッコの土地を受け継ぐということは畑の一部になることだ、と相続人に言う話から映画は始まります。最初はよく意味がわからないこの言葉も、話が進んでいくうちに、あるいはプロセッコが好きな人なら、分かるはず。
それにしても、プロセッコは映画ができるほどアメリカで知名度か広がって、人気になったということ。

アメリカだけでなく、イギリスでも人気だそうです。

マレンマ・シープドッグ。



一方、トリュフ犬として知られるラゴット・ロマ二ョ―ロ。穴掘りが大好きで優れた嗅覚を持つ。子犬の頃からの訓練を経てプロになる。



agnello del centro ItaliaIgp。

動画に出てきたアブルッツォの子羊料理の代表、アニェッロ・カーチョ・エ・オーヴァは4月号のベルパエーゼでもアブルッツォの代表料理としてリチェッタを載せています(P.27)。

おまけの動画は子羊には全然関係ないけど、柴犬の動画。“四つ足の侍”だって、なにこれ、壮大なBGMで超カッコいいんですけど。

サルデー二ャの子羊肉は野性味があり、中央イタリアの子羊肉はやや大型で味と色はもっと濃い。
中央イタリアには、乳飲み子羊肉、という分類と、乳離れした子羊の次に、アニェッロ・レッジェーロという分類がある。
今日は肉の話のつもりが、牧羊犬の紹介しちゃいました。イタリアの働く犬たち、サイコー。

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ブローヴォローネ・デル・モナコ、産地のモンティ・ラッテリは、ローマ人との戦いに敗れて追放された人々が住む荒れた未開地でした。

今日のお題はブローヴォローネ・デル・モナコ。 名物ナポリ料理のベースになっている名物チーズ。 工場で大量生産する現代のプロヴォローネ。 この工場では、一日に600トンの牛乳を加工しているそうです。 アルティジャナーレなプロヴォローネ・デル・モナコ。 牛乳のチ―ズです。 ソレント半...