2025年10月6日月曜日

インヴォルティーニはモンデギリをサボイキャベツで包んだ1品。パスタで包むとカネロニ、残り物を有効利用する南伊の名物料理でもある。

当ブログでは、とのところ『クチーナ・イタリアーナ』誌の記事“ミラノのマンゾーニ”(CIR5月号)を元に、眠らない街として知られるミラノの食文化を取り上げていますが、その過程で知ったのは、ミラノが富裕な市民層、ブルジョアジーの街として栄え、やがてはイタリア統一へとつながる力を持ち、家庭での女性の働き方が変わり、それまでは貴族と農民が作り上げてきた主に南イタリア発のイタリア料理が、大きく変わっていった姿でした。
さらに、ガンベロ・ロッソの創始者ステファノ・ボニッリのイタリア地方料理書、『ティピコ・イタリアーノ

から、独特の感性と美食文化論を確立した彼のイタリア地方料理論を詳しく見ていくことにしました。
ミラノ料理の本は、グイドトンマージの地方料理シリーズの『クチーナ・ミラネーゼ

がお勧めですが、この2冊を手掛かりに、ミラノ料理についてみてみたいと思います。
まず、『ティピコ・イタリアーノ』では、ミラノが州都のロンバルディアは、北西イタリア
に位置しています。本の中でこの地方の料理として取り上げているのは“メッシカーニmessicani”。別名“インヴォルティーニinvoltini”。馬小屋で産着にくるまってよりそう牛に温められながら眠るキリストの姿を現したものという、初耳の説が披露されていました。聞いたことなかったけど、まさかあのくるくる巻いた料理にこんな物語があったとは、驚きです。
肉が薄いとペラペラの毛布にくるまってたみたいですが、厚いと豪華な羽毛布団感ある。

『ティピコ・イタリアーノ』のメッシカーニのリチェッタ。
材料/4人分
子牛のもも肉の薄切り・・12枚、約600g
バター・・40g
EVオリーブオイル・・大さじ1
白ワイン・・1/2カップ
ブロード・・レードル1杯
小麦粉・・少々
《詰め物》
豚肉・・100g
脂身のある生ハム・・50g
パンのクラム・・約50g
おろしたパルミジャーノ・・大さじ2
牛乳
卵・・1個
にんにく・・小1かけ
無農薬のレモンの皮・・1/2個
ナツメグ、塩、こしょう

・肉から筋や脂身を切り取り、できるだけ同じ厚さにする(約12×6-7㎝)。
・豚肉、生ハム、薄切り肉の切り落としを2回挽く。牛乳に浸して絞ったパン、おろしたにんにく、パルミジャーノ、卵、レモンの皮のすりおろし、ナツメグ、塩、こしょうを加えて
手でよくこねる。
・台に薄切り肉を広げ、肉叩きで軽く叩く。詰め物を同量ずつ小さなサルシッチャ状にして薄切り肉にのせ、肉で巻く。2個ずつ2本の楊枝で留める。
・ソテーパンに油とバターを散らす。ロールに薄く小麦粉をまぶし、中火で両面焼く。きれいな焼き色がついたらソテーパンの底にワインを流し入れ、アルコール分が飛んだら蓋をして30分焼く。途中で2回裏返し、レードル1/2杯のブロードをかける。
・仕上げに火を強め、ブロード少々を入れて焼汁をこそげ、軽く煮詰める。これを熱々のメッシカーニにかけてサーブする。サフランのリゾット・ジャッロやパルミジャーノのビアンコ、じゃがいものピューレ、バターで炒めたほうれん草の上に盛り付ける。

インヴォルティーニ


さらに『クチーナ・ミラネーゼ』でインヴォルティーニを調べると、この料理のもっと別の一面が見えてきました。ミラノ料理でインヴォルティーニと言えば、代表的なのは“インヴォルティーニ・ディ・ヴェルザinvoltini di verza ”。言い換えるなら“ロールキャベツ”です。確かにミラノ料理として知られる1品。この料理は残り物を有効利用する料理として知られています。ボッリートやローストの残りにパン粉やイタリアンパセリを加えてサボイキャベツで巻く料理。ん?最近、残り物の有効利用という言葉を使った記憶が・・・。そうです。モンデギリの話の時でした。モンデギリはミートボール。あっそうか、モンデギリをキャベツで巻いたのがロールキャベツだ。

『サポーリ・ミラネーゼ』のインヴォルティーニ・ディ・ヴェルザinvoltini di verzaのリチェッタ。

材料
加熱した子牛肉(赤身ではなくもも肉など)・・300g
サルシッチャ・・50g
柔らかいサボイキャベツの葉・・8枚
ゆでたじゃがいも・・1個
完熟トマト・・2個
にんじん・・1本
セロリ・・1本
玉ねぎ・・1個
イタリアンパセリのみじん切り・・10g
セージの茎・・1本
ローズマリー・・1枝
シブレット
タイム
オレガノ
おろしたロディジャーノ・・80g
EVオリーブオイル、塩、こしょう

・塩、にんじん、セロリ、玉ねぎ、じゃがいもを加えた湯で肉を90分ゆでて冷ます。ミンサーでブロードから取り出した肉、サルシッチャ、じゃがいもを挽き、ロディジャーノとすべてのハーブのみじん切りを加えて塩、こしょうで味を調える。固すぎる時はレードル1杯のブロードを加える。
・同じブロードでサボイキャベツを1分ゆでて氷水に取る。水気をふき取って太い葉脈を切り取る。詰め物をのせてインヴォルティーノ状に包む。
・オリジナルのリチェッタでは白ワインとトマトで45分煮るが、本では煮崩れしないようにこの過程を省き、塩、オイル、オレガノで調味した生のトマトを添えている。


モンデギリ


『クチーナ・ミラネーゼ』のモンデギリのリチェッタ

インヴォルティーニ・ディ・ヴェルザ
材料/
子牛肉(赤身過ぎないもも、肩肉など)・・400g
卵・・1個
固くなったパン粉・・100g
牛乳・・1カップ
にんじん・・1本
じゃがいも・・1個
玉ねぎ・・1個
にんにく・・1/2かけ
ナツメグ
おろしたロディジャーノ・・40g
バター
EVオリーブオイル・・大さじ2
塩、こしょう

・肉と野菜を熱湯で2時間ゆでる。柔らかくなったら鍋から取り出して冷まし、小さく切る。野菜、にんにく、牛乳に浸して柔らかくしたパンと一緒に挽く。卵、ロディジャーノ、ナツメグを加えて塩、こしょうで調味する。直径4㎝のボール状にし、両端を掌で平らにする。パン粉をまぶし、フライパンで油とバターで片面1分焼く。
・肉と野菜でゆでたブロードはリゾット、ミネストラなど他の料理に使う。



“ティピコ・イタリアーノ”には、調理過程の写真もあります。詰め物(ミートボール)はボールというより楕円形で、出来上がったインヴォルティーニも楕円形。
包むのは肉だけでなく、魚や野菜で巻いて楊枝でとめます。この残り物を混ぜて包む、という料理は家庭料理の基本の一つです。当然南イタリアの家庭料理には多用されていました。例えば、包むものがパスタだと、カネロニやクレスペッレになります。

ナポリ風カネロニ。


南も北も、残り物を有効利用というのはイタリアの家庭料理の魔法のキャッチフレーズ。

さすがにインヴォルティーニは基本のイタリア料理なので、広げていくとイタリア中にあります。
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毎週末は新書籍の紹介です


new『スッド・グランデ・クチーナ(南伊・山・海)』

【地方料理、シリーズ】
シチリア』、『ローマとラツィオ』、『トスカーナ』、『ミラノ
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(CIR)は『クチーナ・イタリアーナ』という地方料理の本としては最高の雑誌のリチェッタと記事を日本語に翻訳した約50ページの小冊子です。
このブログはこの解説のビジュアルガイド。お手元に用意してご覧ください。
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