2024年1月11日木曜日

今やナポリピッツァのカリスマになるということは、天才であるだけでなく、時代の先端を走り続けるすごいプレッシャーに押しつぶされない、という強さも併せ持つ人。

ナポリ・ピッツァの話、続けます。
もしあなたがピッツァイオーロを目指していて、ナポリのピッツェリアの息子に生まれたなら、親ガチャ大成功、勝ち組だあ、なんて思うかもしれません。
ところが、生まれた当初はベスビオ山とナポリ湾の間の地区の隙間産業と言われたナポリピッツァは、今や世界中から注目され、莫大な売り上げをもたらすイタリアの国民的食文化になり、世界中に広まっていきました。ナポリのピッツァイオーロは、もはやナポリで生まれたぐらいじゃ、誰も注目しない。次から次へと世界を目指す優れたピッツァイオーロが現れる大激戦の時代になり、カリスマピッッァイオーロも現れては消えてい行く時代になりました。ピッツァイオーロには強烈な個性と時代を導く知性が求められるようになりました。凡人にはかなりハードルが高い。
は、そんなナポリピッツァが世界に花開いていく時期、いわばひと昔前の時代に活躍したピッツァイオーロをパリ在住でナポリ出身の料理研究家が取材した本。
かつては、ミケーレやブランディなどの超有名店に、ナポリ人も外国人も殺到していたのですが、今、一番注目されているのは、カゼルタのフランチェスコ・マルトゥッチです。
遠く離れた日本からは、彼のピッツァのどこが優れているのか、ただ想像をめぐらすことしかできませんが、今月の(CIR)では、彼が発明したピッツァ、“マリナーラの未来”について説明しています。

まずはその前に、ナポリピッツァの基本中の基本、“マリナーラ”。

かつて世界一のピッツァと言われていたミケーレ。

マルゲリータを考案したブランディ。

そして今や時代の寵児となったフランチェスコ・マルトゥッチのマリナーラを、『クチーナ・イタリアーナ』誌は、イタリアの伝統を尊重した新しくて難しいコンビネーションのピツァと形容しています。
このピッツァは100℃で蒸し、180℃で揚げて焼き色をつけ、トッピングをのせて380℃のかまどで焼く、という3種類の温度と調理を用いるそうです。説明されても何のことか理解できない。常に新しい、時代の先頭を行くピッツァのことを考え続けていないと、こういう発想は生まれないでしょう。
それはそれで、きつい人生。

フランチェスコ・マルトゥッチの“マリナーラの未来”。
ナポリのマリナーラはオレガノとにんにく風味だけど、カゼルタのマリナーラはケッパー、オリーブ、アンチョビ風味。かまどに炎はなく、電気オーブンです。
う・・・、おばあちゃんにはついていけないかも。最後にはトラバニのアンチョビの小片をのせて海の風味も一応加えていますが、つっこみどころ満載です。


始めてミケーレに行った若かりし頃を思い出しました。当時はピッツァにはビールと信じられていた時代で、私は観光客丸出しでワインを注文しようとして同行者に信じられない、という目でさえぎられたのでした。今ではいい思い出ですが、ピッツァにはビールといまだに信じられているのでしょうか。
時代が変わる前にマルトゥッチの店、イ・マサニエッリも行ってみたいものです。
ミケーレで行列してた人たちは、蒸して揚げて焼いたピッツァを受け入れるでしょうか。
私も、今時のピッツァを見ると、つくづく時の流れが速すぎると感じます。
この流れのど真ん中で足を踏ん張って立っているカリスマピッツァイオーロたち、ほんとにすごい。


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