2021年11月27日土曜日

地中海のシンボル、小麦。パスタ入門編、その1

プーリアの硬質小麦の話題が出たところで、大好きなテーマ、《パスタ》の話に入ります。
パスタの基本編、
小麦の収穫

小麦には硬質小麦grano duroと軟質grano tenero小麦があることは、皆さんとっくにご存知。
私達には麺を食べる食文化があるけれども、小麦を麺にするためには複雑な過程が必要とか、小麦には長い歴史があって品質も最高のものを目指して改良されてきたとか、あまり知らないかも・・・。
そもそも、パスタは生では食べられない。
小麦を食料にするための壮大な工夫がそこにはあるのです。
ちなみに私はラーメンのことは勉強不足で何も知りません。あくまでもパスタ限定の話です。
パスタの原料は硬質小麦。軟質小麦はパンやドルチェになります。

小麦は地中海のシンボルです。
イタリアは硬質小麦の栽培量は世界一ですが、昔はパスタ用硬質小麦はカナダ産の小麦が主流でした。現在、イタリアでは軟質小麦より硬質小麦の方が多く栽培されています。硬質小麦の栽培面積は軟質小麦の2.5倍です。
それが次第にカナダ産からイタリア産小麦にシフトし、今ではプーリアの小麦が注目されています。
南イタリアの経済に占める硬質小麦の重要性が高まり、プーリアでも品質改良の動きが活発です。
イタリアでは法律でパスタには硬質小麦を使うように定められています。
パスタの輸出量はもちろん世界一。
パスタの生産は、今や南イタリア全体の経済にも影響しています。
それと同時に、南イタリアの農家は、質か量かの選択を迫られているのです。

最初に栽培された小麦は、3種類あるファッロの一つ、triticum、籾殻に覆われた小麦でした。

5世紀末には籾殻がない改良された品種が普及して、小麦から粉を作ることが容易になります。
さらに風に強くて成長速度が早い外国の品種との交配も行われました。
こうして栽培の便利さが追求されていき、逆にこれらの改良が加えられていない小麦はほとんど姿を消すほど貴重になり、古代品種と呼ばれてその利点が注目されるようになりました。

硬質小麦の粉はパスタやパンに最適でしたが、気温が低く、夏の日照が少ない北イタリアでは、そもそも栽培できません。
北イタリアでは軟質小麦粉(farina)を使ったパスタが普及します。

プーリアの硬質小麦のパンの1つ、パーネ・ディ・アルタムーラ。

硬質小麦粉(semola)と水をこねた生地は、様々な形に成形ができて、熱湯に入れても崩れません。これは、グリアジンとグルテニンというタンパク質がグルテンになったおかげです。
ゆでている間に小麦粉(semola)のデンプンがゲル化すると膨張して柔らかくなります。
グルテンが少ない軟質小麦粉では、状況が違います。そのためにグルテンの代わりにレシチンが豊富な卵を加えました。

軟質小麦粉と水だけの生地は形を保つことが殆どできません。
デンプンが溶け出て、柔らかくてベタベタしたパスタになります。
このタイプのパスタはイタリアの伝統料理では殆ど見かけません。もっとも貧しい料理で、主に生地が溶け出ても問題がないスープに使われます。
卵を加えるとパスタの状態は大幅に変わります。レシチンを含むのは卵黄です。

次回は北イタリアのパスタ・フレスカの話。

参考にした本は、スロー・フードの“スクオラ・ディ・クチーナ”の『パスタ・エ・スーギ


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