2025年2月13日木曜日

地中海式食生活のベースは、小麦のパンとパスタじゃなくて、大麦(オルゾ)とファッロだった。大麦は人類が最初に栽培した穀物。ヒポクラテスはその薬効も信じていた。


小麦の話をしようとしたら、小麦、大麦、硬質小麦、軟質小麦、古代小麦と、基礎情報が欠如していることを痛感しましたが、幅広い小麦の話をするには、もう少しのんびり取り組む必要がありそうです。
そもそも、地中海式食生活は小麦のパンとパスタがベースと考えがちですが、実際には大麦(オルゾorzo)やファッロが何世紀にも渡って、イタリアの農民にとっては大切な炭水化物源でした。
オルゾについて、2012年11月号の総合解説(旧CIR)の記事にはこうあります。

「小麦はもとも高貴な穀物で、第二次世界大戦後、他のマイナーな穀物に取って代わっていった。その結果、オルゾはイタリアの食生活から消えていった。わずかに90年代に入って生まれた、特殊な食材の価値を見直す文化活動によって、マイナーな穀物にも光が当たり、栄養価や味が再注目されるようになった。

現在オルゾは地中海式食生活の重要な食材の一つとしてその価値が評価されている。またグリセミック指数が最も低い、つまり血糖値が上がりにくいでんぷん質ということも知られている。つまりオルゾがベースの食事をすると、新陳代謝が刺激されて脂肪の中の糖質が蓄積されるのを選らすことができる。これにより空腹を感じにくくなり、昼食後のインスリン分泌による眠気を軽くすることができる。
オルゾは水溶性繊維質、特にベータグルカンを多く含む。この食物繊維は腸を移動するときに粘膜を傷つけないという特性がある。発酵の過程で結腸の腫瘍を予防する働きもある。オルゾのベータグルカンの最大の利点は、心臓脈管系のリスクを減らすことにある。オルゾは煮ると大量に水分を吸って膨らむ。そのため低カロリーのダイエット食にもなる。
オルゾのたんぱく質は、他の穀物と同様、豆類と補完関係にある。オルゾ入りの豆のスープは、たんぱく質のバランスが取れたピアット・ウニコとなる。

オルゾといんげん豆のミネストラ

オルゾは皮がむけやすいハダカムギと呼ばれる品種の大麦だ。ミネラルとビタミンB群が豊富でとてもヘルシーな食材だが、このことは昔から知られていた。
 ヒポクラテスは、紀元前5世紀に、オルゾは頭にも体にもよいと考えて、抗炎症効果のある煎じ薬として使っていた。
食べ物としてオルゾを使った歴史はもっと古く、人間の歴史と強く結びついている。人類が紀元前9000~10000年頃、最初に栽培した穀物は大麦だった。最古の痕跡は、肥沃な三日月地帯(メソポタミア)で見つかっている。誕生した地は現在でも野生種が存在しているエチオピアだと考えられている」

2012年頃は、オルゾに関するこんな専門的で詳しい記事がちらほらありました。それが今ではまったく見なくなりました。

オルゾOrzoの栽培

確か昔には大麦のコーヒーなんかがあった気が・・・。19世紀、オルゾはコーヒーの代用品でした。ホテルなんかでも出していました。この習慣は第二次大戦後まで続いた。その後長い間忘れ去られていたが、最近になって再び市場に登場してきている。
さらにこの古い穀物は新しい食物として、あるいは現代病のメタボリック対策に有効な食べ物として見直されるようになった。

オルゾのコーヒー

ギリシャでは大麦のパンとポレンタはとても人気があり、食生活の基本だった。しかし、ローマ人は大麦を主に家畜の餌やグラディエーターや奴隷の食料にしたり、煎じ薬として使った。やがてもっと精製ができてパンに適する小麦が大麦に取って代わった。

参考にした旧総合解説2012年11月号

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小麦は一人でも多くの飢えを満たすために、収穫量が多く機械化に適した品種に生まれ変わっていった。

イタリアの農民の食生活を支えた穀物、オルゾとファッロ。 今日のお題は、現代まで生き残った古代小麦の一つ、ファッロです。 出典は2013/2014年6月号の『総合解説』の記事。 本を扱う身としては、紙の媒体は10年や20年は簡単にもつ、という思いが強烈です。 20年前に訳した記事に...