トマトが入らないパスタソースは、野菜やハーブがベースのリグーリアのソース、(ペーストやくるみのソース)。
乳製品、チーズ、生ハム類がベースの、ローマやラツィオのソース、(アッラ・グリーチャ、アマトリチャーナ、カルボナーラ、カーチョ・エ・ぺぺ)
これに魚介のソースを加えた3種類が基本のパスタソース。
そして今日のお題は、ラツィオのソース。
ラツィオの特徴は、海岸線とアペニン山脈、ローマの街道等によって、周囲のトスカーナ、カンパーニア、ウンブリアなど、海の幸、山の幸に恵まれた地方と繋がっていること、さらにカトリックの総本山、バチカンという強固な中心地がありました。
中心地はもちろんローマです。
豚の脂、ラード、パンチェッタ、ペコリーノ、モッツァレラ、生ハムの骨や皮、いんげん豆、塩漬けアンチョビなど数々の海産物、ローズマリー、チェーチなどの特産品もありました。
アペニン山地のきこりの料理と言われるカルボナーラ、漁師が作ったアドリア海のズッパ・ディ・ペッシェがベースの魚のパスタソースなどが生まれて作られていました。
スローフードのスクオラ・ディ・クチーナシリーズの『パスタ・エ・スーゴ』
には、「スーゴがパスタを作る」という一文があります。
そしてブカティーニ・アッラ・アマトリチャーナを例にとって説明しています。
アマトリチャーナはトマト、グアンチャーレ、ペコリーノ、唐辛子がベースの羊飼いが作ったパスタソースです。最初は、ペコリーノとグアンチャーレだけで作っていました。
スパゲッティ・アッラ・カルボナーラも、カーチョ・エ・ぺぺも、スパゲッティ・アッラ・グリーチャ、ペンネ・アッラ・アッラッビアータ、スパゲッティ・アッラ・プッタネスカ、パリアータのリガトーニも、スーゴが育てたパスタです。
『パスタ・エ・スーゴ』には、こんなことも書いてありました。
たとえ同じトマトソースをかけたとしても、スパゲッティとリガトーニは違う料理だ。
というのです。しかも、よく似たどころではなく、まったく違う料理、と言い切っています。
この感覚を理解しないと、数多いイタリアの乾麺のパスタを理解することはできないでしょう。
トマトソースのスパゲッティ。
リガトーニ・アッラ・グリーチャ。
パスタ・アッラ・グリーチャについて、昔の『クチーナ・イタリアーナ』誌に、こんな事が書いてありました。
ローマ出身のある編集者は、行きつけの店のアッラ・グリーチャのことをこう書いています。
そこは、文字に書かれた料理は誰も注文しないような、ハウスワイン以外を注文する人が誰もいないようなローマの典型的なトラットリアだった。この店のリガトーニ・アッラ・グリーチャは食べたことがないくらいおいしかった。店の名物カメリエーレはパスタを食べ始めて2分後、ほぼ食べ終わった頃にすかさず戻ってきて、「セコンド?と聞く」
「グリーチャは5世紀前からラツィオの羊飼いの主食だった。すぐにできるパスタで、安いのにとてもボリュームがあった。フォークを差し込んでむしゃむしゃ食べて美味しいワインで流し込むようなパスタだった」
ワインはハウスワインのフラスカーティ・スーペリオーレが定番だった。
フラスカーティ。
パスタ関係ないけど、羊飼いと相棒犬のマレンマ・シープドッグ。
スパゲッティは長くて穴があいていない麺の代表。シチリアやナポリ、ジェノバで作っていた麺はこのタイプで、つまりアラブのティリアから続くパスタのルーツはこの形。
ロングパスタは、さらに、平らか断面が四角いかに分けられます。
手打ちパスタは主婦が手作りする生麺で、乾麺のパスタは工場で機械で大量生産される麺。
ちなみにアルデンテの概念は乾麺にだけあるもので生麺にはありません。
ロングパスタに対するショートパスタですが、昔はロングパスタを折ってショートパスタにしていました。
パスタソースは、最初は塩やチーズ。そこに身近に手に入るものを加えていきました。北部ではバターやチーズ、南部ではにんにく、オリーブオイル、唐辛子などでした。
そしてイタリアが統一され、世界大戦が終わると、イタリアの食も変わりました。そしてパスタはリストランテのメニューに登場する料理になります。
やっぱりしめくくりは、バリラのリガトーニの傑作CM、監督はフェデリコ・フェリー二。
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