2021年6月24日木曜日

タリアテッレとタヤリン。

今月は遅くなりましたが、総合解説改め『CIR(クチーナ・イタリアーナ・レジョナーレ)』の紙版とPDF版、2019年9・10月号を発売いたしました。
よろしくお願いいたします。

このところピエモンテ料理の話題が続いたので、「CIR」からも、ピエモンテ料理の話題。
“タヤリンtajarin”です(日本語訳はCIRのP.17)。


イタリアの料理雑誌には、ほんの数語で的確にその料理を言い表したフレーズが毎回あるので、イタリア人のイタリア料理感は日本人とは全然違うなあ、と、いつも思います。
今回は、こんなフレーズでした。
「タヤリンはピエモンテの方言でタリエリーニtaglieriniをイタリア語化したもの。よく似たエミリア地方のタリアテッレtagliatelleが語源ではない。」
・・・深いなあ。
タヤリンは細いタリアテッレみたいなもの、と、多分多くの人が思っているけど、それとは違う、というこだわりが感じられます。そして強い説得力も。

エミリア・ロマーニャのタリアテッレ↓


タリアテッレとタリオリーニ(タヤリン)は同じ材料で同じ製法で、どこが違うのか、まったくわからないけど・・・。
ピエモンテ人やエミリア・ロマーニャ人にはわかるらしい。
一つだけ確かな違いは、タヤリンはランゲ地方の食べ物で、タリアテッレはボローニャの名物、ということ。
イタリア料理は世界中に広まったけど、コピーもされやすく、世界中でなんちゃってイタリア料理にアレンジされている。
オリジナルの料理のアイデンティティーを守るのは、地元の人の情熱だ。
ランゲもボローニャも、様々な手段でオリジナルのリチェッタを伝えてきた。

タリアテッレとタリオリーニの違いを知る一番確実な方法は、ランゲとボローニャを知ることだ。
動画で世界中を旅できる時代だけど、パスタ作りの重要な要素は、実は動画からは伝わりにくい。パスタ作りの重要な点は、麺を乾燥させること。

これは生麺だけでなく、乾麺にも当てはまる原則。
例えば乾麺は低温で長時間かけて乾燥させるのが麺の味を強めるために重要だけど、タリアテッレもタリオリーニも、ごく薄いパスタなので(タリアテッレは約3mm、タリオリーニは約2mm)、産地の湿度が大きく影響する。
さらに、麺を薄く均一に伸ばすのに必要なのは腕の力。そして細く切るのに必要なのは熟練の技。
ボローニャの麺打ち職人(スフォリーナ)は尊敬される伝統の仕事だ。

でも、湿度も職人の腕の筋力も、動画からは伝わりにくい。
ボローニャは霧が有名な地方。
下の動画はボローニャの隣町が霧で覆われる様子。
この霧のおかげで麺はゆっくり乾燥する。


タヤリンは水分が少ない麺なので伸ばすのが大変。
卵黄がたっぷりはいるので麺は濃い黄色になる。
動画の先生は、麺の細さには麺の厚さが影響すると言ってます。タヤリンは固くて大変だけど、細く伸ばします。ちょっと力がいると言ってますが、これを年配のおばあちゃんが作るのは大変そう。
下は、ピエモンテのホテル学校の動画。ランゲ地方のタヤリン↓


『サーレ・エ・ぺぺ』のタヤリンの記事には、ボッコンディヴィーノの伝説のシェフ、マリア・パリアッソが、タヤリンの生地が固くて伸ばすのが大変だった、とぐちっていることを暴露していますが、この店は、スローフード発祥の地。
ということは、スローフードの本、

オステリエ・ディ・イタリア
には詳しいリチェッタが・・・ありました。

売り切れの本ですが、これに変わる新しい本、イタリア・イン・クチーナ

が発売されています。

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オステリエ・ディ・イタリア

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