2025年1月21日火曜日

バッカラ・マンテカートは、ハリーズ・バーの創業者がノーベル賞に値する、と言うくらいの好物。口の中で溶けるようなマイルドさがポイント。

ベネチアのチケッティの話。
イワシのイン・サオールの次は、“バッカラ・マンテカート”です。(CIR)の日本語リチェッタはP.21。
ベネチア料理を代表する1品。
バッカラの話は、何度も取り上げてきました。
北欧のメルルーサがイタリアに普及するその歴史はとても劇的です。
そもそも、メルルーサは北の海で穫れる魚。北大西洋のグリーンランドとノルウェー海、北海、バレンツ海の間に多く棲む魚で、これを干したものはベネト料理の代表的な食材。
北欧の人はメルルーサを生かスモークで食べ、バッカラにはあまり興味を示さない。一方、地中海は大西洋ほど魚が穫れないので、大航海時代以降は、北国から様々な魚の保存食が輸入されてきた。
海洋共和国として強力な力を持ってていたベネチアは、バイキングの時代から北欧の干し魚を取引していた。新大陸発見後の1497以降は、カナダ産のメルルーサの塩漬けがヨーロッパに大量に出回るようになる。大口の輸入先は、イタリア、スペイン、ポルトガルだった。

北海のメルルーサで作るフィッシュ・アンド・チップス

ノルウェーのメルルーサ漁■■■


バッカラとイタリアの出会いは、映画になりそうなくらい、詳しく知れ渡っている。そもそもは1432年、ベネチア共和国のピエロ・クイリーニ艦長がロフォーテン諸島のロフト島に流れ着いたのがきっかけだった。

ロフォーテン諸島■■■


艦長と乗組員は地元の漁師からもらった風と天日で干して木のように硬くなった大量の魚で命をつないだ。
それは脂肪分が少ないので傷む心配がなく、味も変わらなかった。しかも完璧に保存ができたので予想にも適していた。
食料を腐らせずに輸送することが大問題だった時代には理想的な食材だ。
艦長は、ノルウェーを出発する前にライ麦パンと60本のストッカフィッソを贈られたと言うことまで分かっている。このうち何本かがベネチアまで届いたわけだ。
さらにキリスト教の肉食を断つ断食の規則もイタリア中の魚の消費を増やした。
ベネチアではバッカラは重要な食材となり、バッカラ・マンテカートが誕生する。
ジェノバやメッシーナ、アンコーナにもストッカフィッソの伝統料理がある。それらがストッカフィッソの強い味を活かしたものなのに対して、ベネトではストッカフィッソをできるだけマイルドにして口の中で溶けるような料理にするのが好まれた。

ちなみに、ストッカフィッソはメルルーサを天日と風で乾燥させたもので、棒(ストック)のように硬いのでストックフィッシュと呼ばれる。ベネトとその周辺ではストッカフィッソのことをバッカラと呼ぶ。

安くて味がよいバッカラは、あっという間に国民食になり、現在では戻すのに手間のかかるバッカラはトラットリアやリストランテで食べる料理となっている。

大衆的な地方料理をイタリアで最初に出したリストランテ、と言われるハリーズバーの創業者、アリーゴ・チプリアーニは、その著書『ハリーズ・バー』で、バッカラ・マンテカートを発明した人はノーベル賞に値する、と言うほどこの料理゛か大好きだった。

バッカラ・マンテカート信者会のリチェッタ


ベネチア料理の象徴、サルデ・イン・サオールと、バッカラ・マンテカートはチケッティでも定番のメニュー。さらにポレンタを添えるのが定番中の定番。



(CIR)のリチェッタは、バッカラ・マンテカートにサリコルニアを添えている。海のアスパラガス、アスパラジ・ディ・マーレと呼ばれる和名はアッケシソウという植物。

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(CIR)は『クチーナ・イタリアーナ』と『サーレ・エ・ペペ』という2冊のイタリア料理の月刊誌のリチェッタと記事を日本語に翻訳した約50ページの小冊子です。
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