2008年5月14日水曜日

アンドリアのブッラータ

昨日は、バーリ在住のミステリー作家、ジャンリーコ・カロフィーリオの話を書いたので、その流れで、今日はプーリアの話です。

プーリアにも、おいしいものがたくさんありますよねー。
実は私、『ア・ターヴォラ』2003年5月号で、最高のブッラータの作り手と言われている店の記事を読んで以来、その店のブッラータを食べてみたい!と思い続けていました。

ブッラータは、モッツァレッラ状のチーズでできた薄い袋に、ほぐしたチーズと乳酸発酵体入り生クリームを混ぜた“ストラッチャテッラ”を詰めたチーズ。
1920年代(30年代という話もあり)に、アンドリア郊外のカステル・デル・モンテのピアーナ・パドゥーラ農園で、ロレンツォ・ビアンキーノ・キエッパという人が、モッツァレッラを作る時に出る残り物を有効利用しようと考え出したもの。


切る前のブッラータ

クリームがパンパンに詰まってます。


中からクリームがとろ~り

切ると中からとろ~り。


アンドリアにあるその店は、ヴィッサーニも毎週仕入れているとか。
うーん食べてみたい。

思い続けて幾歳月。
そしてとうとう、アンドリアまで買いに行っちゃいましたよー。
いや~、面白い体験だった!

その時のことは別のブログにも書いたので内容が重複してますが、あしからず。


そのチーズ屋は、客が10人も入ると身動きが取れなくなるような小さな店でした。
ところが、客が切れ目なくやってくるので、ほぼいつも満員状態。
みんなじっと自分の番になるのを待ちます。

店に入った時から気付いていました。
『ア・ターヴォラ』に写真が載っていた店員さんだあ。

それにしても、この店の人たちはニコリともしません。
ちょっと怖い。

そしていよいよ私の番。
その時まで、ブッラータはショーケースの中に並んでいるのだとばかり思っていましたが、違いました。

「ブッラータください」
「大きさは?」
「(え、大きさって言われても・・・)???」
「何人で食べるんですか?」
「3人です」
「今日食べるんですね?」
「そうです・・が?(ここで違うなんて言ったら売ってくれない雰囲気)」

それを聞くと、店員は店の奥に引っ込んでいきました。
客にあいまいな態度を許さない無愛想な職人気質にどきどきしながら待つことしばし。

「これでいいですか?」

さっきの店員が、ブッラータを1個手にして奥から出てきました。
その時点で、ようやく理解しました。
奥で、モッツァレッラの袋に3人分のストラッチャテッラを詰めていたんです。
出来立てほやほやです。

「ハイ!」
「冷蔵庫に入れちゃダメですよ!」
「は、はい?」
すると私の隣にいた客が、
「冷蔵庫に入れちゃダメだよ」
さらに店員も繰り返して、
「絶対冷蔵庫に入れちゃダメですよ!」
「は、はい」
「今日中に食べるんですよ!」
「はい・・・」
「3ユーロです」
「ひえ、やす!」

店を出た私の頭の中で、「冷蔵庫に入れてはいけない」、「今日中に食べろ」という言葉がぐるぐる回ってました。

結局その日は、ブッラータを抱えたままあちこち観光してまわり、いよいよブッラータを食べよう、ということになった時はすでに夜。
冷蔵庫に入れてはいけないという命令はしっかり守りました。

パーネ・ディ・アルタムーラと赤ワインも用意して、さあ、いよいよいただきま~す。

モッツァレッラの袋は、3人分にはちょっと大きすぎたようで、上の写真のようなパンパンに膨らんだ姿ではなく、ビニール袋のようにふにゃふにゃです。
そこで、ちょっと切り込みを入れて、その間からストラッチャテッラをすくってみました。


いよいよ


生地の固形部分はモッツァレッラのような繊維状なんですが、とろーんとして完全に固まっていないので、フォークに巻きつけることができます。
あたりにはミルクのフレッシュで甘い香りが広がってきました。

そして一口。

おー、なんだこれは!
こんな濃厚なもの、食べたことな~い!
今まで食べたブッラータと、全然違いますよー。
一番上の写真のブッラータと比べても、濃厚さが違うことが分かりますよね。
第一印象は、とにかく濃い!

モッツァレッラはよく豆腐に例えられますが、ブッラータは、例えるならやっぱりバター。
でも、脂肪じゃないんです。
クリームなんです。
なおかつチーズなんです。
濃厚でなめらかでこくがあって、でもミルクのようにフレッシュで、草原の風が感じられそうなチーズ。

農場で湯気を立てている搾りたてのミルクが目に浮かんでくるなあ。
いったい何を食べたら、こんなに風味が詰まったお乳が出るんだろう。
こんなにおいしいミルクで育つ子牛は幸せ者だあ。
ちなみにこの店では、イタリア種とオランダ種の牛のミルクを使っていて、オランダの牛のミルクは脂肪分が多いんだそうです。

ブッラータとは、ストラッチャテッラを食べるもの、ということを実感しました。
それにしても、このとろとろ具合を保つには、確かに冷蔵庫に入れてはだめですね。
だからその日のうちに食べないといけないわけだ。
ということは、地元でないと体験することができない味。
たとえ3ユーロでも、足を延ばす価値はありますよ。

アンドリアの町の中には、ブッラータを売っている店がたくさんあります。
バーリからは電車で行けるし、町はそれほど大きくないので歩いて回れます。

郊外に足を延ばせば、世界遺産のカステル・デル・モンテもありますよ。

Castel del Monte 01
カステル・デル・モンテ, photo by Federico Filacchione


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関連誌;『ア・ターヴォラ』2003年5月号(在庫なし)
“ブッラータ”の記事は「総合解説」P.31に載っています


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4 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

わー、恥ずかしい。今となっては自分が恥ずかしいです。専門家にあんなものをお渡しするなんて。プレッツェーモロさんも言ってくれればよかったのに。
にしても、ブッラータ。上のレストランとセットでぜひお伺いしたいです!今後日本ではブッラータを目にしても絶対食べません(笑)

prezzemolo さんのコメント...

くるりさん
いただいた情報、とーっても役に立ちましたよ!ほんとですよー。それに何より、すんごく嬉しかったです♪
バーリの人たちの、あのしつこいまでの人懐こさが懐かしい今日この頃です。

匿名 さんのコメント...

自分にとってバーリは、ちょっと怖い印象でして、以来行ってません(ナポリ再訪するまで十数年かかりました)初めて一人旅で行った頃だからなおさらですね。でもグルメな街なんですよね。今度プーリアに行くときは寄ってみたいなぁ。その時はまた教えてくださいね(^^)人なつこいのは、南の人特有なんですかね。北はほとんど行ってないからわからないけど。

prezzemolo さんのコメント...

くるりさん
今のバーリは、なかなか絵になる町、という印象でしたよ。
同じプーリア人でも、バーリ人は超熱いですよねー。レッチェの人はもっとクールだったなあ。
ナポリ、ずいぶん行ってません。変わったかなあ。

ジェラートはパンとの相性も良いデセール。シチリアとナポリの人のジェラートの食べ方は、ほんとに自由。

今日は、(CIR)7月号のリチェッタから、ジェラートの話(P.12)。 リチェッタのテーマは、シンプルにコーンやカップに入れるジェラートではなく、クロスタータやボンボローニ、はてはフォカッチャにのせるジェラート。 ジェラートのデセールの最高峰はトルタ・ジェラート。 パン・ジェラー...