2025年9月22日月曜日

ミラノのマンゾーニ家で出された料理は、ミラノの伝統美食文化に基づいた季節の料理。

永遠の都、ローマの食文化の話はおもしろくて、深堀りすると果てしなく続いていきそうでした。なのでローマの話は今回はここまで。
次はミラノです。
『クチーナ・イタリアーナ』誌のミラノ特集は、(CIR4月号)の“眠らない街、ミラノ”の記事から始まり、ラストを締めくくる今月の記事は、“ミラノのマンゾーニ”というテーマです。

マンゾーニ


マンゾーニはミラノの下級貴族の生まれ。イタリア近代文学を代表する作家です。代表作は『いいなずけ』。イタリア料理の話でも度々登場するので、読んでみようかなあ、と思ったこともあるけど、結局未読です。
マンゾーニは、グルメだったことでも知られています。もちろん調理は料理人がしましたが。母親のジュリア・ベッカーリアは、大勢いた娘たちに地元の伝統料理を伝え、それを娘たちが各家庭に伝えました。さらに彼が残した数多くの書簡からは、彼が栽培業者や農民の精神を持つ人であることが明らかになっています。外国に苗を注文してニセアカシアのような新しい品種の作物を育てたり、当時まだロンバルディアでは知られていない白いアジサイが大好きだったそうです。

ミラノのマンゾーニの家。


彼の家には多くの著名人が訪れ、ミラノの伝統的美食文化に基づいた季節の料理を味わい、各自がその様子を書き記しているので、マンゾーニ家の料理は、後世にかなり伝わっています。
ロンバルディアの特産物に満ちたその料理は、今日なら地産地消と呼ばれる料理。
もう一つ、マンゾーニは歩くのが好きで、1日に最低15㎞は歩き、軽くお腹を空かせていた。年齢の割にはスタイルもよかったようです。健康の秘密は、上質の食べ物を優秀な料理人が調理し、適度な量を食べ、余分なカロリーは燃やして消化する、というもの。
ミラノ料理は当時の中産階級の象徴でした。
キーワードは、中産階級。いわゆるブルジョワジー。
それまでのイタリア料理に登場するのは貴族と農民。その中間が、都市の裕福な市民階級。
彼らはその後の市民革命の主勢力となり、新しい時代を切り開いていく原動力になります。
ミラノはその中心にある街で、マンゾーニはその象徴でした。
(CIR)の記事では、マンゾーニの時代の料理を紹介しています。日本語訳はP.38~。
貴族の料理とも、農民の料理とも違うそれらの料理は、イタリア料理の大きな変化を感じさせます。
詳しくは次回。

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2025年9月20日土曜日

ローマのオステリアのベースは羊と内臓料理。

アマトリーチェとローマのオステリーアの関係を知って、ビックリしていますが、元になった記事は、もうなくなった『クチーナ・エ・ヴィーニ』誌の2005年2月号の記事です。重厚で本格的な食文化の記事がとてもよい雑誌だったので、廃刊になった時は残念でした。
20年も前の記事だったんですね~。
アマトリチャーナを作る時、アマトリーチェを思い浮かべる人はどれくらいいるでしょうか。

記事はこんな文章で始まっていました。
アマトリーチェの住民は自らの町を「ラツィオの僻地」と呼ぶ。山の中に位置し、グラン・サッソ国立公園の一部でもあるアマトリーチェは、豊かな自然に恵まれている・・・。

大地震の前のアマトリーチェ。


この料理を理解するポイントは、やっぱりアマトリーチェだったんですね。

アマトリーチェのグアンチャーレ。



豚肉加工職人の本拠地、ノルチャ(ウンブリア)も地震の被害を受けた。
現在のノルチャ。
ノルチャはアマトリーチェとペアのようなグルメに人気の美しい街。



内臓料理が名物のローマ料理。その中心地はテスタッチョのオステリーア。
老舗の一つ、ケッキーノ。


ローマで最も歴史が古い店、ラ・カンパーナ。


ローマきっての老舗、カンパーナも、内臓料理をもっと美味しくするにはどうしたらいいか、常に考えている。

ローマの名物と言えば、内臓と子羊。実は、ローマのリコッタ、リコッタロマーナは歴史がとても古い名物。ラツィオ州の羊の全乳の乳清から作ります。

リコッタ・ロマーナ


リコッタ・ロマーナの風味は羊の餌がベースになっているので、牛乳から作ったリコッタとは明確に違う。餌は天然の飼料が中心で、ラツィオの草原の香草がたっぷり含まれている。

新鮮さも大切なので、ローマに行ったらぜひ味わってみたいもの。
ローマで食べたいものの1つが、アッバッキオ。

リコッタ・ロマーナ。


ローマの食文化は知れば知るほど奥深く、今すぐ行って味わいたくなる。
強力にお薦めのローマ料理の本はグイド・トンマージの地方料理シリーズの『ローマとラツィオ

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2025年9月19日金曜日

アマトリチャーナは羊飼いが移牧の時に作った料理がルーツ。なんとこれがトリッパと結びついて大人気のローマ料理が生まれた。

(CIR5月号)からローマ料理の話をしています。
今日のお題は、ローマのトラットリアの定番料理、“パスタ・アッラ・アマトリチャーナ”。
当然ながら、アマトリーチェというラツィオの村が由来。ただ、このアペニン山脈の村がラツィオになったのは1972年。それまでは隣のアブルッツォの村でした。
この村を語る上で忘れられないのが2016年の大地震。
アマトリーチェは大きな被害を受けましたが、地元の人たちと世界中のアマトリーチェファンたちが立ち上がって再建した。

アマトリーェ地震からの再建。



移牧のルート上にあるアマトリーチェ。


パスタ・アッラ・アマトリチャーナは、元々は羊飼いの料理だった。移牧の間に持っていける傷みにくい材料は、熟成させたグアンチャーレやラルド、サルシッチャなどの脂の多い食材とチーズ。当然パスタもこれらで調味します。
これはカーチョ・エ・ウントcacio e untoという料理。
アマトリーチェの羊飼いたちは、冬の間、家から遠く離れて何か月も過ごした。その間の食料は、小麦粉と豚の脂身(ラルドとグアンチャーレ)。この単純な材料からアマトリーチェの伝統料理が生まれていった。
例えば、平らな石の上で粉と水をこねて細く切る。それを焚火にかけた鍋でゆで、ゆで上がる少し前に小鍋で溶かしておいたラルドを加える。これは“金切声のミネストラ”と呼ばれた。溶けたラルドを熱湯に入れる時の音が、名前の由来だ。
軽い食事なら“パンノタ”を食べた。
グアンチャーレを木の枝に刺して火にかざし、溶け落ちる脂をパンにかけ、焼いたグアンチャーレを載せて食べるスナックだ。

そこで問題になるのがグアンチャーレとパンチェッタ(ベーコン)の違い。


アマトリーチェのシェフが作るアマトリーチェ。アマトリーチェのグアンチャーレを使うのが正当派。チーズももちろん牛のミルクでなく羊のミルクのペコリーノ。


ウント・エ・カーチョとも呼ぶみたい。
下の動画では、ベースはラルドとパンチェッタ。


カーチョ・エ・ウントはやがてグリーチャと呼ばれるようになる。
トマトが加わるのはコロンブスの航海の後のこと。

羊の群れはローマまで連れて行った。17世紀にアマトリーチェは同業組合への加入を認められた。1790年代には、この組合からトリッパローリ組合が誕生し、ローマでトリッパや豚のすね、子羊、子ヤギを販売する独占権を獲得する。これらをきっかけとしてこうした素材を扱うトラットリーアが数多く誕生し、やがてそこから作られる料理がイタリア中、そして外国にも知れ渡る料理になっていったのだった。

ローマ風トリッパ。



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2025年9月18日木曜日

狂信的な評判と過剰な客で知られるローマの老舗人気店。

永遠の都、ローマの話。もはや経営者が起業家と呼ばれ、マスコミを上手に使って世界的な大ヒット店になる店もあれば、新世代のローマ料理ではなく本物のローマ料理をめざす時代に媚びない店と、ローマのオステリアも様々あります。
中でも(CIR5月号)の記事で、“ ローマではトレビの泉くらい評判の店”、と語られているのは、ロッショーリ。

アンティコ・フォルノ・ロッショーリ。


ロッショーリ・サルメリーア。


ローマの人気店は、狂信的な評判と過剰な客で有名。そんな店の一つがソーラ・レッラ。
ソーラ・レッラが亡くなって30年が過ぎたが、カンポ広場の青果店はエレーナとアルダ姉妹が後を継いだ。さらに伝統に忠実な孫のレナート・トラバルツァへ受け継がれている。お勧めは、決して変わらないもので強化されたコーダ・アッラ・バッチナーラ。
ソーラ・レッラ


レナート・トラバルツァ。


コーダ・アッラ・バッチナーラ。



次回はローマの定番料理です。


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2025年9月17日水曜日

トラットリアで守られるローマの食の伝統

ローマは歴史の厚みを感じる永遠の都でも、そこに住む人々は、まぎれもなく現代人。
ローマの食の伝統はトラットリアで守られている。ローマの伝統に忠実なトラットリアは革新にも敏感。
(CIR5月号)の記事で最初に紹介している店は、トラステヴェレの店、アンティカ・ぺーザ。
レストラン経営者、起業家としても有名なフランチェスコ・パネッラの店で、1922年オープンのパネッラ一族が経営するトラットリア。


なんだか彼の成功はアメリカのメディアに愛されていることにあるよう。
ローマ風ラーメンなどのアレンジしたローマ料理も出していたり、プンタレッレにボッタルガを散らしたりと、とても自由な発想の持ち主のよう。   

アンティカ・ぺーザ


次のシェフはフルビオ・ビエランジェリー二。ホテル・ロッコ・フォルテ・グループのレストランのクリエイティブ・ディレクター。
シンプルさの中に誠実さと驚きの味が詰まっている料理を作っています。



国際的に活躍するシェフの話が続きましたが、伝説的な映画監督のパゾリーニが最後の食事をとったことで有名になったオステリア・ポンミドーロは、今もあるそうです。かつては芸術家やインテリのたまり場でした。

ポンミドーロ


パスタ・アッラ・アマトリチャーナはローマのトラットリアの定番料理。
ローマの老舗の1つ、ケッキーノのアマトリチャーナ。

オステリア・ディ・サン・チェザ―リオは最高のローマ情理を出す店の1つ。町の南部、サン・チェザ―リオ門の外にある。
陽気なシェフ、アンナ・デンテが作るのは、新世代のローマ料理ではなく、本物のローマ料理。


次は、ローマでトレビの泉くらい評判の店。

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2025年9月16日火曜日

ローマのオステリア

(CIR5月号)の記事のビジュアル解説。今日のお題は“永遠の都、ローマの食文化”です。
記事の日本語訳はP.28。まずはローマ料理の入門編。
イタリアの外食産業の中でも、トレンドに敏感なことで世界中に知られているのはミラノ。でも、ローマを有名にしているのは、この街のオステリーアです。以前から、「打倒寿司、トリッパ万歳」というのがこの街の傾向でしたが、最近はそれが顕著になっているようです。伝統的なローマ料理を出す店が大繁盛しています。
さらにローマ料理は“ユダヤ料理”、“ラツィオの農民料理”、“クイント・クアルトの料理”の3つの柱で構成されています。

二人のアメリカ人女性の初ローマ。ローマにやってくる観光客は多かれ少なかれ、みんなみんな感じ。特にアメリカのような若い国から来ると、見るものすべてが重厚で、ワクワクで、口が開いちゃう。そのうち冷静になって、自分も世界中からやってくる大勢のお上りさんの一人、という現実に気が付く。


ほとんどの外国人はローマにやってくるので、彼女たちを見ていると、自分が初めてイタリアにやって来た時の事を思い出します。誰もが体験する貴重な思い出。私の場合は卒業旅行で初一人旅。バックパックをしょって、ロンドン経由でギリシャのアテネから飛行機で到着しました。それまでの生活とあまりにも違う世界が広がっていて、空港からのバスが夕暮れ時にコロッセオのすぐ横を通った時は、感動しました。
これから一人旅が始まる、という緊張とごった混ぜになって、すべてのものに感動していました。松並木さえ、これがローマの松か、と新鮮でした。

ローマの松


テヴェレ河の右岸で、ヴァチカンの南がローマで最も人気の個性的な地区、トラステヴェレ。元々はエトルリア人の住む地区だったが、テヴェレ河の左岸に街を作ったローマ人によって征服された。

テヴェレ河


トラステヴェレ



ローマ料理は臓物料理とも言われる。食肉処理場で働く人たちが、売り物にならない内臓を持って帰り、それを料理したものがローマの名物料理として知背れるようになったからだ。貧しく、庶民的で、地元に固執し(ローマ郊外のカステッリ地方より外では味わえない)、大げさで、あまり上品でないところなど、臓物料理はローマっ子たちとそっくり。ところが現代人の胃袋は、ハンバーガーや寿司や「健康に良い」食べ物を求めるようになり、ローマの家庭から手間がかかって消化に時間がかかり、傷むのも早い内臓料理は消えてしまった。今や、一部のトラットリーアやレストランだけがローマの伝統を守る砦となっている。
臓物料理はテスタッチョ地区の雄テリーアを経由してローマの家庭に普及していった。テスタッチョはアヴェンティーノの丘の麓にある地域で、以前はここに公営の食肉処理場があった。そのため、この地区には内臓料理を出す店が集まっている。

アヴェンティーノの丘とテスタッチョ。



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アサリ入りパッパ。

(CIR)の今月の料理の解説です。海がないミラノで、スタイル重視で新鮮な魚を出すトラットリア、“ランゴステリア”の人気料理は、“アサリ入りパッパ・アル・ポモドーロ”。 パッパは、堅くなったパンをトマトで煮たトスカーナの素朴な家庭料理。 パッパ・アル・ポモドーロ トスカーナのオステ...