2022年4月15日金曜日

クラテッロ、パルミジャーノ、バルサミコ酢が名物のカノッサの屈辱で知られる地方、レッジョ・エミリア。

このところ、お題はずっとエミリア・ロマーニャ地方のトルテッリーニでした。
トルテッリーニと言えば、ボローニャを始めとするエミリア・ロマーニャの料理、というイメージがあります。
下の動画はボローニャのトラットリアを紹介する動画ですが、トルテッリーニの食べ方もわかります。スプーンで食べます。皮が薄いので、口の中で溶けるそうです。

トルテッリーニには、イタリア各地の食文化が詰まっています。
まず生地は、軟質小麦粉。北イタリアの小麦粉です。
そして詰め物は、肉、野菜、チーズ。牛肉と豚肉はエミリアの主役。牛や豚の飼育はロンバルディアから広まり、フレッシュチーズは古代ローマの羊飼いたちによってイタリア中に広まります。詰め物入りパスタはイタリア各地にあります。

ロマーニャ地方のカッペッレッティcappeelletti。
これもスプーンで食べてますね。
詰め物は去勢鶏とフレッシュチーズがベース。ボローニャのものと比べるとかなり大きい。去勢鶏(カッポーネ)やひね鶏のブロードでゆでるのがポイント。
トルテッリーニより軽くてマイルド。


カッポーネはクリスマスのご馳走のために去勢して太らせた鶏。
モロッツォ(クーネオ)のカッポーネが有名。

スローフードのパスタの力作、『パスタ・フォルメ・デル・グラノ』

によると、トルテッリーニとカッペッレッティはどちらもエミリア・ロマーニャの手打ちパスタの伝統から生まれたパスタですが、カッペッレッティは長い間、発祥地のレッジョ地方から外に出ることはなかったそうです。カッペッレッティの語源は“caplet”(大きな帽子)で、トルテッリーニより大きく、イン・ブロードにするよりは、パスタシュッタとしてソースをかけて食べたようです。また、動物性脂肪を絶つ“マーグロ”の日にはフレッシュチーズを詰め物にしました。
ボローニャとモデナはよく似た食文化の街ですが、もう一つ、クラテッロ、パルミジャーノ、バルサミコ酢の産地のよく似た街がありました。レッジョ・エミリアです。名物のカッペッレッティはトルテッリーニにそっくり。

レッジョ・エミリア料理

レッジョ・エミリアの地元民に愛されてるカッペッレッティ。
レッジョ・エミリア人にとっては家族の思い出と結びつく大切な故郷の味。

この街の歴史上の有名人は11世紀頃に街を納めていたマティルデ・ディ・カノッサ。1077年のカノッサの屈辱という事件の当事者です。名前の衝撃が強すぎて、何が起きたのかまったく知らない出来事ですが、この地方には宝石のような美味しいものがある集落があります。例えば、下の動画の酪農場、ラッテリーア・サン・ジョルジュはミラノの高級惣菜店、ペックに40年前からパルミジャーノを販売しています。平野部にある大手メーカーと比べると1日の製造量が20個以下とかなり限られている特別なパルミジャーノ。


サルミフィーチョ・ジャンフェラーリSalumificio Gianferrariのクラテッロは、最高のクラテッロを選ぶ会議でグラン・クラテッロ賞を受賞しています。

中世には4つの城があったことで知られるクアトロ・カステッラ地区ですが、今は白は1つしか残っていません。その城は古い田舎家風に改装されて、ロカンダ・マティルデというホテルレストランになっています。ミシュランの星もついています。
ロカンダ・マティルデ↓




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2022年4月14日木曜日

ポー河の霧とカビを利用して作るサルーミの王様、クラテッロ。

今日のお題はバッサ・パルメンセ地方。
この地方に君臨するのはイタリア最長で、もっとも重要な河、ポー河。自然豊かなイタリア北部をアルプスからアドリア海まで横断して流れています。
ポー河の水源から河口まで。

ポー河の豊かな水によって、草や牧草が育ち、それを食べて牛がたっぷりミルクを出す。そのミルクからチーズを造り、残りは豚の餌になる。そしてやや湿気の多いこの土地の気候は、クラテッロの熟成には最適だった。こうしてこの地方はクラテッロの産地として世界中に知られるようになる。

ジベッロのクラテッロ。

クラテッロは豚のももの一番柔らかい部位、脂があるランプの前の部分から造る。縛ったらワインを揉み込む。このワインはアルコール度が低くて個性の軽い地元の赤ワイン、フォルタナ。二日ごとに3回塩をまぶし、ワインを揉み込み、豚の膀胱に詰めてきつく縛り、70日後に室温を調整してフォルタナの搾り粕で覆った部屋で熟成を開始する。
秋と冬には窓から霧が入り込み、壁からは湿気が染み出て搾りかすとカビがクラテッロを守る。
60日ごとにカビを取り除き、16~17か月間はクラテッロはカンティーナを出ることはない。熟成期間は長くて35~40か月に及ぶ。“イセタン”という名札が輝いていましたが、ここでは毎年6~7千個のクラテッロが造られています。
マッシモ・ボットゥーラシェフも得意客の一人で、カンティーナには彼専用のスペースもあります。

アンティカ・アルデンガ↓はバッサ・パルメンサのクラテッロの有名な作り手の1軒。クラテッロは薄くスライスして、ランブルスコと一緒にいただきます。
このランブルスコの栓の抜き方がちょーかっこいい。

ジベッロの昔ながらの料理を出す有名トラットリア・ラ・ブーカ。


女性の社会進出が今ほどあたりまえでなかった時代に、4代に渡って母から娘へと女性のみに受け継がれてきた料理を出す。男性はクリエイティビティーで料理を作り、女性は愛情で作る、というのが現シェフの持論。


この地方のシェフたちは、こんなにおいしいものが多い土地に生まれて自分は幸運だった、と誰もが言いますね。



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2022年4月13日水曜日

ポー河右岸の肥沃な平野、バッサ・パルメンセ地方とクラテッロ。

トルテッリーニはモデナ市民の食文化との深い結びつきがよくわかる料理でした。
今日は(CIR/7月号)から《アルティジャナーレ》の記事の話です。
アルティジャナーレの食材はクラテッロ。
舞台はクラテッロ博物館やカンティーナがある高級ホテルレストランで、クラテッロを味わいに世界中から観光客がやってくる、アンティカ・コルテ・パラビチーナです。
クラテッロの話をする時は必ず登場する有名な店です。
その名の通り、パラビチーニ侯爵が1320年に建てました。
ポー河から6mしか離れていないこの場所に、金貨と商品をしまっておくためのカンティーナ(貯蔵庫)として建てられました。
記事を読むと、当時のこの地方の領主と農民の関係がよくわかります。
店のシェフ、マッシモ・スピガローリは料理人で、農民で、肉屋で、先祖は3代に渡ってカンティーナで毎年造られる無数のクラテッロを熟成させてきたそうです。
ちなみに、クラテッロは領主におさめる地代でした。クラテッロの間で育ったシェフも、クラテッロを食べることはできなかったのです。

アンティカ・コルテ・パラビチーナとマッシモ・スピガローリシェフ


このカンティーナは、ポー河右岸で、700年後の今も、洪水や悪天候にもめげず農民の産物を守っています。
この地方は、ポー河右岸のパルマとピアチェンツァの間に広がる肥沃で穏やかな平野。
巨大な楡の木が畑の真ん中に生えていると、何世紀にも渡ってそこをよけて耕すような人々が暮らしています。

デストラ・ポー(ポー河右岸)。別名バッサ・パルメンセ地方は、冬は霧に包まれ、夏は猛暑で蚊と湿気が多いのですが、クラテッロを始めとするイタリアでも最高のサルーミの産地。

2022年4月12日火曜日

ボットゥーラシェフが故郷モデナのために創設した2つのボランティア団体はトルテッリーニを通してモデナの人を一つにがっしりと結びつけている。

モデナの人にとって、トルテッリーニがとても愛されている料理、というのはだんだんわかってきました。
今月の《ノンナのリチェッタ》の記事にも詳しくある通り、この料理は、モデナの人々が伝統を作り上げてきました。その主役はレズドーラrezdoraです。
(CIR)P.15の写真は、孫からハグされるレズドーラ。トルテッリーニは、生地、詰め物、ブロードからなりますが、レズドーラは主に生地を担当します。
この地方では麺打ちは女性の役割。


イタリアでは昔ながらの男女の役割がまだ健在のようで、麺打ちは女性の仕事、詰め物作りは男性の仕事、とかなりはっきり区別していたようです。
嫁が姑から持参金として受け継ぐのはこの立派な麺棒materello(matarela)。
レズドーラには麺棒使いの達人、という意味もあります。
長女が母親の技を受け継ぐ象徴が、麺棒でした。

女性のレズドーラには、麺打ちの名人とともに、家計を切り盛りする優秀な主婦、というニュアンスもあります。
料理教室で習うのも麺棒の使い方。

薄く均一に伸ばすのがベテラン。リチェッタには、麺棒が長いのは、両腕を広げて掌で麺棒を回転しやすくするため、というアドバイスが。さらに生地の端はテーブルから垂れ下がらせるとも。
こんな秘訣を若い世代に受け継がせることに、モデナのノンナたちはとても熱心ですが、マッシモ・ボットゥーラのようなモデナの名士も熱心に活動しています。
ボットゥーラシェフは、自閉症の長男の存在が大きいのでしょうが、自閉症児のためのボランティア団体を支援して、子供たちがトルテッリーニを作る共同研究所、トルテッランテtortellanteを創設しています。
トルテッランテ。

ラ・サン・二コラはモデナのノンナたちが若者に技術を伝える場にもなっているカルチャーセンター。カステルフランコ・エミリアのトルテッリーニ祭りの中心でもある。この団体もボットゥーラシェフが作ったボランティア団体。


2022年4月11日月曜日

カステルフランコ・エミリアのトルテッリーニは天才詩人の妄想が産んだ超絶面白いエピソードとして後世まで語り継がれている。

今日のお題は(CIR/クチーナ・イタリアーナ・レジョナーレ7月号)から、P.15〜の“ノンナのリチェッタ”です。
料理は“カステルフランコ・エミリアのトルテッリーニ”。
トルテッリーニといえば、ボローニャの名物詰め物入りパスタとして知られています。


記事にもあるように、ボローニャには、トルテッリーニを巡ってライバルが存在しました。モデナ県に属す隣町、ボローニャの北西25kmにあるカステルフランコ・エミリアです。
ちなみにボローニャとモデナはかつて戦争をしていました。その最中にある伝説が生まれて、モデナ出身の詩人タッソーニの代表作に描かれます。
ほとんどがフィクションの詩ですが、
ビーナスとバッカスと軍神マルスが宿屋に泊まった時、ビーナスの入浴シーンを宿屋の片目の主人が覗き見して、裸の女神の美しさに驚き、その姿を肉の詰め物入りパスタで再現しようとしてトルテッリーニが生まれた、という話は、天才詩人の妄想力のとんでもなさもあって、世界中の人に愛される物語として語り継がれるようになったのです。
この他に、モデナ軍は町の中央広場の井戸のバケツを盗み、ボローニャの返還要求に応じなかったという話も伝わっています。モデナの博物館には当時のバケツ、というものが大事に保管されているそうです。
このリアルとほら話の微妙なさじ加減が、この詩人の話のおもしろさ。
モデナ人はもこの話が大好きなようです。笑いをこらえながら再現ドラマなんか演じています。

カステルフランコ・エミリア。

町の名物、トルテッリーニ。

カステルフランコ・エミリアのトルテッリーニはボローニャのトルテッリーニより小さいのが特徴。

ボローニャのトルテッリーニ。


そもそも最初からトルテッリーニはとても小さなパスタ。何しろビーナスのオヘソを模したものですから。
私はトルテッリーニ・イン・ブロードを大きなスプーンで一度に2〜3個すくって食べる姿を見るのが好きです。その小ささがよくわかります。




2022年4月10日日曜日

イタリア地方料理の基本は残り物で造るご馳走。

エミリア・ロマーニャの話題多めの今月号ですが、リチェッタ2品めは、“バルサミコ酢入マヨネーズ”。手作りのマヨネーズにモデナの名物、バルサミコ酢を加えただけの、超シンプルなソース。なのに、モデナという強い地方色と高級品感が爆上がり。すべてはモデナ人御用達ビネガーから世界的な食材になったバルサミコ酢のおかげです。



バルサミコ酢は重いビネガーなので、他のフレーバー・ビネガーのようにサラダや白肉にかけるものではなく、ゆでたじゃがいも、鳩肉、牛肉などの赤肉にかける、と上の動画では言っています。
バルサミコ酢についてはこのくらいで、今回は、エミリア・ロマーニャのパスタの話。
パッサテッリです。リチェッタは今月の(CIR)、P.4にあります。
“ノンナ・アンチェッラのパッサテッリ”と料理名にありますが、このノンナはボッツゥーラシェフのおばあちゃんのこと。つまり、おそらくシェフはこの味を食べて育ったのですね。
“パッサテッリ”は個性的なロマーニャ地方のパスタ。イタリア地方料理の基本を網羅した本、

『1001スペチャリタ・デッラ・クチーナ・イタリアーナ』によると、ロマーニャ地方の田舎で生まれた料理で、固くなったパンと干からびたチーズ(残り物)で作る創意工夫にあふれた料理で、厩から生まれたレストラン料理、なんて呼び方もします。パッサテッリの型がない時はポテトマッシャーで代用します。定番はスープパスタ、(in brodo)ですが、最近のシェフは、ラグーをかけたり、アサリやエビのソースをかけた乾麺のパスタのような1品にするのがトレンドです。
“残り物で造るご馳走”というのは、イタリア地方料理の大切なキーワード。
主婦たちが、創意工夫をこらしてやりくりした結果生み出された料理です。



スローフードのオステリア・ディ・イタリアのガイド兼地方料理書、『イタリア・イン・クチーナ』


のパッサテッリのリチェッタは、ボローニャのオステリア・ボッテガのものです。


 
リチェッタは、パッサテッリのラグー。Passatelli al ragù。

Osteria Bottega, Bologna

材料/4人分
《パスタ》
パン粉・・120g
卵・・2~3個
パルミジャーノ・・100g
レモンの皮・・1/2個、塩
《ソース》
子牛肉・・250g
ミニトマト・・5~6個
にんじん・・2本
ズッキーニ・・小2本
にんにく・・2かけ
セージ・・2枚
セロリ・・1本
セルフィーユ・・1束
白ワイン、EVオリーブオイル、塩
《その他》
ブロード・・1.5ℓ

・トマトを4つに切って水気を切り、種を取る。
a.にんにくとセルフィーユをみじん切りにする。
・トマトを油とaで調味して冷蔵庫で3時間マリネする。
・パン粉とおろしたパルミジャーノをこねて卵、塩少々、レモンの皮のすりおろしを加える。閉まった生地になったら低温の場所で休ませる。
・肉を小角切りにする。セロリ、セージ、にんじんをみじん切りにする。
・香味野菜のみじん切りとにんにく1かけを油でソッフリットにする。
・肉を加えて炒め、塩、こしょうする。ワインをかけてアルコール分を飛ばす。
・ズッキーニを小角切りにして小さく切ったトマトと混ぜる。ラグーに加えて混ぜ、取り出す。
・生地を穴の大きな型を通してパッサテッリにし、ブロードでさっとゆでる。浮かび上がったら取り出してラグーのフライパンに加え、よく混ぜる。

2022年4月9日土曜日

地方料理の集合体のイタリア料理は、東西南北の食材とリチェッタを組み合わせて、まったく新しい味を作り出すのが醍醐味。by マッシモ・ボットゥーラ。

マッシモ・ボットゥーラシェフの本、『パルミジャーノ』

は、祖国イタリアと故郷モデナが誇る食材、パルミジャーノのリチェッタから、グランシェフがこの食材をどう使いこなしているかを知ることができます。

熟成期間の違う4種のパルミジャーノを硬さの違う4つの料理に。

20か月熟成はスプーマ、24か月熟成はスフレ、30か月熟成はサルサ、36か月熟成はブロード・・・。本にはもっと様々なバリエーションのリチェッタが載っています。

例えば、定番の薄焼き


のアレンジは、“パルミジャーノとトリュフのプリングルス”
ポテチの豪華版です。
細かくおろした18か月熟成のパルミジャーノ、薄くスライスした黒トリュフ、チンタ・セネーゼのラルドの細切りを混ぜてシートの上に乗せた6㎝のセルクルに入れ、パルミジャーノ、ラルド、バターをのせてこんがりきつね色に焼き、波形の網に乗せて冷ます。

スプーマは、エミリア地方の霧にかけてヴァル・パダーナの霧、という名前

パルミジャーノのスプーマ。
下の動画ではパルミジャーノのホエイに板ゼラチンを加えてサイフォンで泡にしています。

本では、ハムの骨のブロードを泡にしてパルミジャーノのジェラートにのせています。

モデナ風チーズケーキというのもありました。
モッツァレッラ・イン・カロッツァのパルミジャーノ版、“トゾーネ・イン・カロッツァ”は、チェターラのアンチョビ入り。
トゾーネというのは出来立ての若いパルミジャーノのこと。

料理の説明をする時、とても楽しそうですね。地方料理が集まってできているイタリア料理の楽しさは、東西南北、各地方の料理をミックスして素晴らしい料理を生み出すことだ、と言っています。トゾーネ・イン・カロッツァはモデナとナポリのミックス。パスタ・フィラータの南伊の名物チーズ、モッツァレラではなく、パスタ・グラナの北伊の名物チーズ、パルミジャーノ。
なんでも長い期間熟成させてゆっくり造り出すのがエミリア・ロマーニャ。一方、南のチーズは新鮮さが命。この正反対の環境をどう克服するのか。彼が選んだのは、トゾーネという出来立てのパルミジャーノを使うこと。

パルミジャーノのトゾーネ。




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サーモンのベルガモットマリネ入りのミカンのリゾット。柑橘果実の活かし方をよく知っているのが南イタリア。

みかんのリゾットの話。まずは米の“ヴィアローネ・ナノ”について見てきましたが、次はみかんです。 みかんは今回はbergamottoと指定されています。 ベルガモットはミカン属の柑橘類。柑橘類を使うリゾットは各種ありますが、ミカンのリゾットは見たことなかったです。それにちょっと食べ...