2022年4月11日月曜日

カステルフランコ・エミリアのトルテッリーニは天才詩人の妄想が産んだ超絶面白いエピソードとして後世まで語り継がれている。

今日のお題は(CIR/クチーナ・イタリアーナ・レジョナーレ7月号)から、P.15〜の“ノンナのリチェッタ”です。
料理は“カステルフランコ・エミリアのトルテッリーニ”。
トルテッリーニといえば、ボローニャの名物詰め物入りパスタとして知られています。


記事にもあるように、ボローニャには、トルテッリーニを巡ってライバルが存在しました。モデナ県に属す隣町、ボローニャの北西25kmにあるカステルフランコ・エミリアです。
ちなみにボローニャとモデナはかつて戦争をしていました。その最中にある伝説が生まれて、モデナ出身の詩人タッソーニの代表作に描かれます。
ほとんどがフィクションの詩ですが、
ビーナスとバッカスと軍神マルスが宿屋に泊まった時、ビーナスの入浴シーンを宿屋の片目の主人が覗き見して、裸の女神の美しさに驚き、その姿を肉の詰め物入りパスタで再現しようとしてトルテッリーニが生まれた、という話は、天才詩人の妄想力のとんでもなさもあって、世界中の人に愛される物語として語り継がれるようになったのです。
この他に、モデナ軍は町の中央広場の井戸のバケツを盗み、ボローニャの返還要求に応じなかったという話も伝わっています。モデナの博物館には当時のバケツ、というものが大事に保管されているそうです。
このリアルとほら話の微妙なさじ加減が、この詩人の話のおもしろさ。
モデナ人はもこの話が大好きなようです。笑いをこらえながら再現ドラマなんか演じています。

カステルフランコ・エミリア。

町の名物、トルテッリーニ。

カステルフランコ・エミリアのトルテッリーニはボローニャのトルテッリーニより小さいのが特徴。

ボローニャのトルテッリーニ。


そもそも最初からトルテッリーニはとても小さなパスタ。何しろビーナスのオヘソを模したものですから。
私はトルテッリーニ・イン・ブロードを大きなスプーンで一度に2〜3個すくって食べる姿を見るのが好きです。その小ささがよくわかります。




2022年4月10日日曜日

イタリア地方料理の基本は残り物で造るご馳走。

エミリア・ロマーニャの話題多めの今月号ですが、リチェッタ2品めは、“バルサミコ酢入マヨネーズ”。手作りのマヨネーズにモデナの名物、バルサミコ酢を加えただけの、超シンプルなソース。なのに、モデナという強い地方色と高級品感が爆上がり。すべてはモデナ人御用達ビネガーから世界的な食材になったバルサミコ酢のおかげです。



バルサミコ酢は重いビネガーなので、他のフレーバー・ビネガーのようにサラダや白肉にかけるものではなく、ゆでたじゃがいも、鳩肉、牛肉などの赤肉にかける、と上の動画では言っています。
バルサミコ酢についてはこのくらいで、今回は、エミリア・ロマーニャのパスタの話。
パッサテッリです。リチェッタは今月の(CIR)、P.4にあります。
“ノンナ・アンチェッラのパッサテッリ”と料理名にありますが、このノンナはボッツゥーラシェフのおばあちゃんのこと。つまり、おそらくシェフはこの味を食べて育ったのですね。
“パッサテッリ”は個性的なロマーニャ地方のパスタ。イタリア地方料理の基本を網羅した本、

『1001スペチャリタ・デッラ・クチーナ・イタリアーナ』によると、ロマーニャ地方の田舎で生まれた料理で、固くなったパンと干からびたチーズ(残り物)で作る創意工夫にあふれた料理で、厩から生まれたレストラン料理、なんて呼び方もします。パッサテッリの型がない時はポテトマッシャーで代用します。定番はスープパスタ、(in brodo)ですが、最近のシェフは、ラグーをかけたり、アサリやエビのソースをかけた乾麺のパスタのような1品にするのがトレンドです。
“残り物で造るご馳走”というのは、イタリア地方料理の大切なキーワード。
主婦たちが、創意工夫をこらしてやりくりした結果生み出された料理です。



スローフードのオステリア・ディ・イタリアのガイド兼地方料理書、『イタリア・イン・クチーナ』


のパッサテッリのリチェッタは、ボローニャのオステリア・ボッテガのものです。


 
リチェッタは、パッサテッリのラグー。Passatelli al ragù。

Osteria Bottega, Bologna

材料/4人分
《パスタ》
パン粉・・120g
卵・・2~3個
パルミジャーノ・・100g
レモンの皮・・1/2個、塩
《ソース》
子牛肉・・250g
ミニトマト・・5~6個
にんじん・・2本
ズッキーニ・・小2本
にんにく・・2かけ
セージ・・2枚
セロリ・・1本
セルフィーユ・・1束
白ワイン、EVオリーブオイル、塩
《その他》
ブロード・・1.5ℓ

・トマトを4つに切って水気を切り、種を取る。
a.にんにくとセルフィーユをみじん切りにする。
・トマトを油とaで調味して冷蔵庫で3時間マリネする。
・パン粉とおろしたパルミジャーノをこねて卵、塩少々、レモンの皮のすりおろしを加える。閉まった生地になったら低温の場所で休ませる。
・肉を小角切りにする。セロリ、セージ、にんじんをみじん切りにする。
・香味野菜のみじん切りとにんにく1かけを油でソッフリットにする。
・肉を加えて炒め、塩、こしょうする。ワインをかけてアルコール分を飛ばす。
・ズッキーニを小角切りにして小さく切ったトマトと混ぜる。ラグーに加えて混ぜ、取り出す。
・生地を穴の大きな型を通してパッサテッリにし、ブロードでさっとゆでる。浮かび上がったら取り出してラグーのフライパンに加え、よく混ぜる。

2022年4月9日土曜日

地方料理の集合体のイタリア料理は、東西南北の食材とリチェッタを組み合わせて、まったく新しい味を作り出すのが醍醐味。by マッシモ・ボットゥーラ。

マッシモ・ボットゥーラシェフの本、『パルミジャーノ』

は、祖国イタリアと故郷モデナが誇る食材、パルミジャーノのリチェッタから、グランシェフがこの食材をどう使いこなしているかを知ることができます。

熟成期間の違う4種のパルミジャーノを硬さの違う4つの料理に。

20か月熟成はスプーマ、24か月熟成はスフレ、30か月熟成はサルサ、36か月熟成はブロード・・・。本にはもっと様々なバリエーションのリチェッタが載っています。

例えば、定番の薄焼き


のアレンジは、“パルミジャーノとトリュフのプリングルス”
ポテチの豪華版です。
細かくおろした18か月熟成のパルミジャーノ、薄くスライスした黒トリュフ、チンタ・セネーゼのラルドの細切りを混ぜてシートの上に乗せた6㎝のセルクルに入れ、パルミジャーノ、ラルド、バターをのせてこんがりきつね色に焼き、波形の網に乗せて冷ます。

スプーマは、エミリア地方の霧にかけてヴァル・パダーナの霧、という名前

パルミジャーノのスプーマ。
下の動画ではパルミジャーノのホエイに板ゼラチンを加えてサイフォンで泡にしています。

本では、ハムの骨のブロードを泡にしてパルミジャーノのジェラートにのせています。

モデナ風チーズケーキというのもありました。
モッツァレッラ・イン・カロッツァのパルミジャーノ版、“トゾーネ・イン・カロッツァ”は、チェターラのアンチョビ入り。
トゾーネというのは出来立ての若いパルミジャーノのこと。

料理の説明をする時、とても楽しそうですね。地方料理が集まってできているイタリア料理の楽しさは、東西南北、各地方の料理をミックスして素晴らしい料理を生み出すことだ、と言っています。トゾーネ・イン・カロッツァはモデナとナポリのミックス。パスタ・フィラータの南伊の名物チーズ、モッツァレラではなく、パスタ・グラナの北伊の名物チーズ、パルミジャーノ。
なんでも長い期間熟成させてゆっくり造り出すのがエミリア・ロマーニャ。一方、南のチーズは新鮮さが命。この正反対の環境をどう克服するのか。彼が選んだのは、トゾーネという出来立てのパルミジャーノを使うこと。

パルミジャーノのトゾーネ。




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2022年4月8日金曜日

パルミジャーノのクリーム、フォンティーナのフォンドゥータ、モッツァレラのサルサ

さて、あらためて、パルミジャーノのクリームです。
イタリア料理に欠かせない、イタリアのもっとも有名なチーズ、パルミジャーノのクリームは、イタリア料理の基本のリチェッタの一つ。
パルミジャーノのクリームCrema al parmigiano。
クロスティーニにのせたり、パスタのソースにします。
リチェッタは各種ありますが、(CIR)7月号のリチェッタはP.2。
本のリチェッタは小麦粉とバターを使わない、つまりルーを加えないクリームです。
生クリームと30か月熟成のパルミジャーノをホイッバーで混ぜてベシャメルのような濃度にします。
チーズを溶かしたソースと言えば、フォンドゥータ。
上の動画のようにパルミジャーノのフォンドゥータもありますが、フォンドゥータにする一般的なチーズはフォンティーナ。スイスやフランスとの国境に近い地方、バッレダオスタやピエモンテ地方の料理です。
パルミジャーノ、フォンティーナ、これにモッツァレラが加われば、イタリアが世界に誇る3大チーズになります。

フォンティーナfontina
このチーズも全然機械化されていない、アルティジャナーレなチーズですね。
フォンティーナの熟成期間は2~6か月なのに対して、パルミジャーノは18~36か月ととても長い。
モッツァレラは南イタリアで飼育されている水牛のミルクのパスタ・フィラータのチーズ。
フレッシュさが命で、作ってから2日以内に食べる。

モッツァレッラのソースのリチェッタを探してみたら、ピエトロ・パリージシェフの動画がありました。

モッツァレラ・ディ・ブファラのサルサSalsa di mozzarella di bufala 


パリージ・シェフは自らをクオーコ・コンタディーノと呼び、ベスビオ山のふもとで農家に交じって暮らしながらアルタ・クチーナを作るカンパーニアの優秀なシェフ。

『ピエトロ・パリージ/クオーコ・コンタディーノ』



パルミジャーノ、フォンティーナ、モッッァレラをパスタソースにしようとすると、それぞれに最適な方法があります。
上の動画では、余ったモッツァレラの農家の昔ながらの保存方法を紹介しています。
・モッツァレラを小さく切って煮沸殺菌したガラスの密閉瓶に入れ、24時間冷蔵庫に入れ乾かす。モッツァレラ1㎏につき、牛乳1.1㎏、塩9g、コーンスターチ10gを加えて瓶の口まで満たし、蓋をして50分煮沸殺菌する。これをミキサーにかけて濃いクリームにする。ガラスの密閉瓶に口まで入れて蓋をし、伏せて鍋に入れ、30分煮沸殺菌する。布に取って乾かし、冷蔵庫で長くて3か月保存できる。サルサを使う時は、湯煎、オーブン、レンジなどで温めて使う。パスタソースに最適。



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2022年4月7日木曜日

パルミジャーノは大量生産の機械化されたチーズかと思ったら、いまだに昔ながらの手作業の、職人が造るアルティジャナーレなチーズでした。

今月の(CIR)のリチェッタ、1品目は“パルミジャーノのクリーム”です。
(CIR)の見方を軽く説明すると、各料理名の上には、『クチーナ・イタリアーナ』のこの料理の分類(Antipasti)と、このリチェッタの記事(L'ABC)があります。
(L'ABC)とは、基本のリチェッタ、という意味で、雑誌の記事は、初心者向けの詳細な解説付きです。
ちなみに7月号では、“トマトのグラティナーティ”もABCのリチェッタです。
パルミジャーノのクリームですが、『クチーナ・イタリアーナ』7月号の主役はマッシモ・ボットゥーラシェフ。そして彼が情熱注いでいるのが故郷モデナの食文化の普及。
モデナの世界的産物の一つが、パルミジャーノです。
パルミジャーノはモデナが誇る産物であるだけでなく、イタリア料理の基本の食材でもあります。
もちろんシェフの料理にも欠かせない食材で、シェフがその使い方を熟知している食材です。
本では、パルミジャーノをcroccante“焼き”、cremoso“クリーム”、etereo“泡”の各状態で使うリチェッタや、熟成状態の違いによる使い分けのリチェッタなどを載せています。

パルミジャーノの基礎となる4種の違いを説明するボットゥーラシェフ。

イタリア料理の基本中の基本は、パルミジャーノからスタートです。


生産サイクルの視点から見ると、そもそもパルミジャーノ作りは牧草作りから始まる。

牛乳が廃棄されるかもなんて話を聞くと、パルミジャーノみたいなチーズ造ればいいのに、と思うけど、そう簡単にはいかないんだろうなあ。

パルミジャーノの歴史。
パダナ平野の修道院で、大勢の巡礼者に提供するために、当時の最新の技術で、大型で日持ちするチーズを造ったのがはじめ。
1349年に生産者組合が誕生し、14世紀のボッカチオの『デカメロン』にも登場する、というのが生産者の自慢。1389年にはピサの商人によって、アフリカ、スペイン、フランスに輸出される人気のチーズになっている。
パルミジャーノと他のチーズの違いは、他のチーズの製造過程が時を経て機械化されていったにもかかわらず、パルミジャーノは昔ながらのカードを布を使って取り出すという人手によるアルティジャナーレな製法を保っている点。
あの布を使ってチーズを取り出す製法は、確かに、考えてみればかなりレトロな製法。あの様子が有名なのは絵になるからだけじゃなくて、パルミジャーノのアルティジャナーレな製法を象徴していたんですね。

パルミジャーノの製法。

有名なチーズだから完全機械化で大量生産されているんだろうと思ったけど、今だに昔ながらの手作業で造られているアルティジャナーレなチーズなのでした。
まあ、いつもスーパーで買う安い“パルメザン”は、まさに量産型のチーズなのでしょうが。

2022年4月6日水曜日

天才シェフを生んだ街、モデナ

今日から、今月の(CIR/クチーナ・イタリアーナ・レジョナーレ)の解説です。
今月は、マッシモ・ボットゥーラシェフの特集なので、記事もシェフに関するものが多くなっています。
世界で一番有名なイタリア料理のシェフなので、特に新しく語ることもなさそうですが、イタリアの料理雑誌にしかできないような、プライベートにも踏み込んだ濃厚な特集記事になっています。

シェフはモデナの出身で、地元の食文化を広めることに強い情熱を注いでいます。
モデナの世界的名産物でシェフがとりわけ力を入れているのがパルミジャーノ・レッジャーノです。
ボットゥーラシェフのモデナ愛は有名。モデナのことをファーストカーとフローフードの街と呼んでいます。

店はモデナのオステリア・フランチェスカーナ。

天才シェフを生んだモデナの食は・・・
モデナのフードツアー

ニョッコ・フリットはカプチーノに浸して朝食に食べるのか。
このブログの最初は、確かモデナの話だったような・・・。モデナの紹介は、何度やっても楽しいですね~。


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2022年4月4日月曜日

(CIR/クチーナ・イタリアーナ・レジョナーレ)2020年7月号。

今月号の『クチーナ・イタリアーナ』は、かなり思い切った特集です。
イタリアが世界に誇るカリスマ、マッシモ・ボットゥーラシェフの特集です。
雑誌も思い切ってますが、シェフもこまでやるか、と思うほど、家族などプライベートなことを出し切っています。
そうとう思い切ったはずですよ、これは。

ボットゥーラシェフはモデナ出身。ファーストカーとスローフードの街、というのがシェフのお気に入りのたとえのよう。
モデナ・マン、マッシモ・ボットゥーラシェフ。
故郷と料理と家族に対する情熱は、引くほど深い。

そんなことをこの1冊で知ることができました。
それでは明日から、じっくり解説していきます。
ボットゥーラシェフの本、『マッシモ・ボットゥーラ・パルミジャーノ』

オステリア・フランチェスカーナのソムリエの本、『サーラ・エ・カンティーナ』

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サーモンのベルガモットマリネ入りのミカンのリゾット。柑橘果実の活かし方をよく知っているのが南イタリア。

みかんのリゾットの話。まずは米の“ヴィアローネ・ナノ”について見てきましたが、次はみかんです。 みかんは今回はbergamottoと指定されています。 ベルガモットはミカン属の柑橘類。柑橘類を使うリゾットは各種ありますが、ミカンのリゾットは見たことなかったです。それにちょっと食べ...