ロッシーニの話、今日は料理編。
若くして成功して、早々にオペラから手を引いたロッシーニですが、美食に関しては、生涯現役でした。
子供の頃からの食いしん坊。
でも、父親が仕事を失うなど、おそらく贅沢ができない幼少時代を過ごした反動だったでしょうか。
リッチになってからは、イタリア各地の銘品を次々に取り寄せたり、天才シェフ、アントナン・カレームと親交を深めるなど、美食道を徹底的に極めました。
「自分はピアニストとしては三流だが、美食家としては世界一」と言ったという話も残っています。
また、なにかと伝説の多い人で、生涯に3回泣いた、と告白した話も知られています。
その3回とは、初めて作ったオペラの初演の時、パガニーニの演奏を聴いた時、そして船遊び中に、トリュフを詰めた七面鳥を海に落としてしまった時。
こんな話もあります。
アントナン・カレームの主人、ロスチャイルド男爵がロッシーニにぶどうを贈ったことがありました。
ところがロッシーニは、「素晴らしいぶどうをありがとうございます。でも実は私、カプセルに入ったワインは苦手なんです」という手紙を男爵に書いたんですねー。
ジョークを理解した男爵は、最高のシャトー・ラフィットを樽で贈ったのだそうです。
こんな奔放で豪快な性格のロッシーニ。
引退後、パリの自宅は人気のサロンとなり、毎週土曜には、料理と音楽を楽しむために、様々な人が訪れました。
でも、社交界は派閥や噂の渦巻く世界。
実は、彼のサロンの料理は最低だったと、いう話もあるんですよー。
料理するロッシーニのカリカチュア
palazzo-olivia.it
ロッシーニと言えば、フォアグラとトリュフ。
敬愛するモーツァルトの名を出して、「トリュフはきのこのモーツァルトだ!」という名言を残していることからも分かる通り、フォアグラとトリュフが大好きでした。
彼の代表作、トゥルヌド・ロッシーニも、ヒレの中心部を切り取った厚さ2~3㎝の牛肉、フォアグラ、トリュフが主役。
トゥルヌドという名前の由来は、フランス語で「背を向ける」という意味の“tournez le dos”、が語源という説が一番有名。
パリのカフェ・ド・アングレのシェフがロッシーニのレシピでこの料理を作る時に、厨房に入ってきたロッシーニがあまりに口を出すものだから、「あっちを向いていてください!」と言ったから、という説がよく知られています。
この他に、ロッシーニが料理を仕上げる時に、招待客に背を向けて隠していたから、という説もありますよね。
でもそうすると、フォアグラもトリュフものせない、ヒレ肉の中央部分の筒切りのことを“トゥルヌド”と呼んで、フォアグラとトリュフをのせると“トゥルヌド・ロッシーニ”と呼んでいる現状は、説明がつかないような・・・。
ロッシーニとはまったく関係なく、レ・アールの市場の、中央通りから背を向けていた一角の名前、という説もあるし・・・。
まあ、トゥルヌドの話はフランス人に任せます。
こちらは、フランス人のシェフが、なにやらトゥルヌド料理を作っている動画。
この料理、ラタトゥイユを崩さないようにテーブルにのせるのは至難の業に違いない!
ロッシーニと言えば、落とし卵のロッシーニ風も有名。
これも例のごとく、フォアグラの上に落とし卵とトリュフをのせたもの。
写真を探したのですが、見つからなかった。
贅沢すぎて作る人がいない?
さて次回は、こんなロッシーニの生まれ故郷、ペーザロの話です。
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関連誌;『ラ・クチーナ・イタリアーナ』2006年8月号(クレアパッソで販売中)
“ペーザロ;ロッシーニの生まれ故郷”の日本語訳は、「総合解説」'06&'07年8月号、P.2に載っています。
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2008年9月5日金曜日
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