2023年5月18日木曜日

香りを食べるトリュフには庶民的で意外なリチェッタがある。

トリュフの話をしたついでに、マルケのトリュフ料理を、『グリバウド・グランデ・クチーナ』シリーズのマルケ

から、1品訳してみます。
さすがにトゥルヌド・ロッシーニは食材がゴージャスすぎるので、もっと庶民感にあふれた“パターテ・エ・タルトゥーフィpatate e tartufi”なんてどうでしょう。
トリュフが豊富なマルケのアックアラーニャ地方では、どんな料理でもトリュフ風味にする、と言われていますが、これは庶民はどう使うかが分かる1品です。

下の動画はトリュフの量からしてとても庶民的ではないですが、この料理の基本はじゃがいもの輪切りをベシャメル、グラナ、削ったトリュフなどで覆ってオーブンで焼くトルティーノです。


さらにこの料理を発展させたのがパスタ・パターテ・エ・タルトゥーフォPasta patate e tartufo。基本はじゃがいものパスタ。

・じゃがいも1個を2㎝角の角切りにします。
・生のじゃがいも1個を5㎜核の小角切りにして油でソッフリットにします。
・エシャロット1個をみじん切りにします。
・鍋に油少々と潰したにんにくを熱します。刻んだラルドを加えて溶かします。
・にんにくを取り除いてじゃがいもの小角切りを加え、一緒に炒めます。
・ブリュノワーズに切ったにんじんを加えて炒めます。
・じゃがいもが柔らかくなったらマッシャーで潰します。
・鍋に水か野菜のフォンドを加えて10~15分煮ます。
・マッシュしたじゃがいもを加えて煮汁をつなぎます。
・パスタを加えて半分火を通し、取り出してソースに加えます。
・バジリコとイタリアンパセリのをみじん切りを加えて火を止め、こしようをかけて油を回しかけます。
・ガラスのジャーにパスタを入れて削ったトリュフを加え、再び油をかけて密閉します。

パスタに削ったトリュフを加えて密閉するだけなんて、こんなトリュフの使い方もあるんですね。ウンブリアで初めてトリュフを食べた時のことを思い出しました。トリュフオイルをかけた何の変哲もないスパゲッティでしたが、翌日まで、トリュフの香りが漂ってる気がしたものです。数日たっても忘れられず、結局トリュフオイルを買いました。
アックアラーニャは、トスカーナ、ウンブリア、エミリア・ロマーニャに囲まれています。
中央イタリアとくくられるこれらの地方には、牛肉という共通点もあります。
次回はこの話。


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2023年5月17日水曜日

ブリヤ・サヴァランはトリュフのことを料理のダイヤモンド、と呼んだが、イタリア人はトリュフはダイヤモンドより貴重と信じていた。

ロッシーニ風トゥルヌドがマルケ料理、と気が付いたきっかけは、ロッシーニの故郷がマルケ州のペーザロだったから。

ロッシーニが生まれ育ったペーザロの観光名所。

毎年、ロッシーニ・オペラ・フェスティバルが開催されるペーザロ、さらに、ヨーロッパの水質と設備が良いビーチに与えられるバンディエラ・ブルーの認定を獲得する常連のビーチリゾート。
ロッシーニの美食家ぶりにまつわるエピソードには、彼がこの地での暮らしを満喫していたことを証明するものばかり。
例えば6歳の時、ペーザロの教会の聖具室にあったビンサントを飲み干す事件を起こしている。

ロッシーニ風トゥルヌドは、フィレ・ミニヨンにフォアグラとトリュフを載せたフランス料理だが、ロッシーニなら、この料理がイタリアのマルケの料理ということを証明するのはトリュフの存在、と胸を張って言うはず。
ロッシーニ風トゥルヌド。

トリュフは、後期ラテン語で大地のエッセンスという意味のterrae tuferが語源。古代ローマ人はユピテル(ギリシャ神話ではゼウス)の雷から生まれたと信じていました。
ブリヤ・サヴァランはトリュフを「料理のダイヤモンド」と呼びました。
でも、イタリア人は、トリュフはダイヤモンドより貴重、と言っています。何しろ白トリュフはイタリアにしか存在しないのですから。
トリュフには黒と白があります。
最近ではトリュフを栽培する試みが進み、徐々に成果が出てきています。
でも、たとえ土壌や気候が適していても、菌糸で覆った木を植えて、最初のタルトゥーフォができるまでに6〜8年かかり、1ヘクタールあたり50kgのトリュフを収穫するのにそれから7〜8年かかり、白トリュフを作るには、さらに時間がかかるそうです。
育てるより採ったほうが早いわけですね。

タルトゥーフォ・ビアンコ・プレジャートは最高級の白トリュフ。
ピエモンテのアルバが有名な産地。

黒トリュフのタルトゥーフォ・ネロ・プレジャートは、産地の名前を取ってフランスではペリゴールと呼ばれ、イタリアではタルトゥーフォ・ディ・ノルチャとか、ディ・スポレートなどと呼ばれる。フランスでトリュフという時は、主にこのトリュフ。


黒トリュフはイタリア各地で採れる。ペーザロは黒トリュフが採れる町が周囲にいくつかあった。中でもアックアラーニャAcqualanaには国産トリュフの2/3を扱うトリュフ市場がある。
この地方で育ったロッシーニがグルメになったのは、こんな環境が影響したのかも。なので、アックアラーニャの黒トリュフを使ったトゥルヌド・ロッシーニというのが、ロッシーニが考えたこの料理により近いのかも。
そうそう、そもそも、黒と白では、適する調理方法が違う。
ビアンコ・プレジャートは生で食べるのに適していて、リゾットや目玉焼きにかける。一方ネロ・プレジャートは加熱することによって個性が引き出される。他の食材と混ぜて香りを与えることもできる。
トリュフは香りに価値がある。ところが、トリュフの香りの成分、bismetiltiometanoは、比較的簡単に安価で合成することができる。安いトリュフの場合は、香料を添加している場合もある。トリュフにセール品はない。本物なら、値段も正当な価格で売られている。
トリュフの香りの真偽は、実際に嗅いでみるとよく分かる。
トリュフを味わう最適な方法は、イタリア各地で開かれる品評会や収穫祭を訪れること。
アックアラーニャでは1年を通じて品評会が開かれている。
アックアラーニャのトリュフ市。

トリュフの香りを表現できるようになったら、本物のグルメ。例えばビアンコ・プレジャートは、にんにく、干し草、蜂蜜の香りがバランスよく繊細に感じられるんだそうです。品質が劣るものには強いアンモニア臭があります。ネロ・プレジャートの香りには強さや個性はないけれど、心地よさがあるそうです。
ソムリエの次元ですね。

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2023年5月16日火曜日

マルケ料理と言えば、オリーベ・アスコラーナが有名ですが、実は、もっと世界的に有名な料理がありました。ロッシーニ風トゥルヌドです。でも、これがマルケ料理だとはあまり認識されてない。残念。

今日は《シビッリーニ山地の豆料理》(日本語訳は、CIR3月号P.42~)から、リチェッタの解説です。
地方料理の小さな傑作、“グリバウド・グランデ・クチーナ・レジョナーレ”シリーズのマルケ州の本を

豆料理という視点で見てみると、マルケには数々の美味しそうな豆料理が、さらにはプリーモもセコンドもバリエーション豊かに色々あることに気が付きます。

マルケ料理16選。

CIRの記事の最初のリチェッタは、“ロベーヤ豆のファレッキアータFarecchiata adi roveja con salsa all'aglio e acciughe”というものでした(日本語訳はP.44)。
“ロベーヤ豆”というのは、グリーンピースの一種。草原に自生する豆です。古代から知られていましたが、全盛期にウンブリア~マルケに至るアペニン山脈全域で栽培されるようになりました。中でもその中心はシビッリーニ山地でした。他のレンズ豆やスイートピーなどの質素な豆と一緒にこの地方の農民や羊飼いにとっての大切な食糧となりました。
ロベーヤ

現在はその価値を認めるわずかな農家のみが栽培しています。
ソラマメのような味でたんぱく質が豊富で栄養価が高く、ほろ苦さがあるその粉からはファレッキアータfarecchiata、またはペザータpesataという伝統的なポレンタを作ります。アンチョビとにんにく、EVオリーブオイルのバットゥートをかけて食べます。

ウンブリア料理を紹介する動画にファレッキアータがありました。

もっとマルケらしい料理を、ということで、“スイートピーのズッパ”。マルケ産の豆を使えば完璧。スイートピーはエトルリア人も栽培していたというマルケ中に普及した歴史の古い豆。やっぱり現代ではごく一部の地域でしか栽培されていない。

・スイートピーを最低12時間水で戻す。
・鍋に油、玉ねぎの薄切り、セロリ1片、ローズマリー、タイム少々を入れてソッフリットにする。
・水で豆を覆い、トマトペースト少々を加えて約35分煮る。
・ハーブを取り除いてミキサーにかけ、鍋に戻してじゃがいも2個の小角切りを加え、15~20分煮る。じゃがいものデンプンでクリーミーなズッパになる。

チャバッロciavarroは5月1日に食べる豆と穀物のミックスのズッパ。アスコリの名物。地元でとれる豆を全部入れたみたいなズッパ。じつは残り物のズッパなんだけど・・・、とぶっちゃけてます。

・豆と穀物は別々に戻す。
・玉ねぎの薄切りをソッフリットにし、豆と穀物、熱湯、塩、こしょう、トマトペーストを加えて蓋をしてことこと2時間煮る。
・油を回しかけて熱いうちにサーブする。

動画は見つからなかったけど、チョンチョーニcioncioni、またはチェンチョーニcencioniというソラマメの粉のパスタもあります。硬質小麦粉、ソラマメ粉、卵のパスタをブロードで煮ます。
下の動画はソラマメのパスタ。

マルケ料理でもう一つ気が付いたのは、ロッシーニの存在です。
オペラの作曲家、ロッシーニはマルケ州のペーザロの出身。
マルケが誇ってやまない偉人です。

彼はグルメだったことでも有名な人で、ロッシーニにまつわる伝説と彼の名がついた料理がたくさんあります。

中でも有名なのはトゥルヌド・ロッシーニ風。
歴史はまだ浅いけど、マルケでは、この料理はどこの高級レストランでも出す立派なマルケ料理。

トゥルヌド・アッラ・ロッシーニ。

もちろんこの料理が有名なのはロッシーニのお陰だけど、マルケのトリュフも欠かせない。


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2023年5月15日月曜日

イタリアで豆の収穫量と消費量が一番多いのはマルケ。マルケとヨーロッパの農業食品システムのリーダーはマルケ工科大学。

レンズ豆からの流れで、今日は《シビッリーニ山の豆》の話。
『サーレ・エ・ペペ』誌の記事で、日本語訳は、(CIR3月号P.42~)。

毎年2月10日は世界豆の日だそうです。

豆は品種が多く、様々な土壌に適応する植物で、生物多様性の観点からも注目されている。
最近のイタリアの食シーンは、生物多様性biodiversitaという言葉を聞くことが増えました。
さて、イタリアで豆の収穫量や消費量が多いのは、何州でしょうか。
流れ的にはウンブリアと言いたいところですが、答えはマルケだそうです。
マルケ工科大学は2020年にヨーロッパの農業食品システムのリーダーに選ばれて、マメ科植物の遺伝資源の知的コレクションを行い、マメ科植物の栽培と消費拡大のプロモーションを行っているそうです。

マルケ工科大学のPV。工科大学だけあってカッコいい仕上がり。


記事の中で、マルケの豆を知るのに最適の場所、と紹介されているのは、シビッリーニ山地国立公園です。

シビッリーニ山地国立公園。

イタリアでも観光客が押し寄せない地方は、生物多様性と手つかずの自然の魅力に満ちています。
アルクアータ。デル・トロント。

モンティ・シビッリーニの農家の産物。

モンティ・シビッリーニの市場。

モンティ・シビッリーニのリストランテ・ロ・スプンティーノ。


この穏やかな地方は、2016年の大地震で被災しました。アマトリーチェやノルチャが破壊されたあの地震です。

復興は着々と進んでいます。
大地震の後に離れていた住民が戻ってきて活気づくのは世界中どこも同じ。地震から5年経って、復興が着々と進んでいます。

故郷のために何かしたい、と考えた農家が造ったのが、豆の粉入りパスタ。

パスタの故郷の国で、セリアック病やグルテン不耐性に悩む人が多いのは皮肉ですが、小麦粉と豆の粉を混ぜたパスタは、セリアック病の人も食べることができるパスタです。
店のwebpageはこちら

この地方にはとても興味深い豆や製品があるのですが、動画はあまり見つかりません。
訳したリチェッタは、かなり貴重なものかも。
シビッリーニ山の豆のリチェッタ、次回に続きます。


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2023年5月13日土曜日

コインのような形から、お金がたまる縁起物と信じられているレンズ豆。レンズ豆が国民食のエジプトでは、容赦なく裏漉ししちゃうので、コインに似てるから縁起がいいとは誰も考えていないかも。子。

(CIR)のイタリアの地方の食文化の記事、《ベルパエーゼ》では、毎月、各州の代表的食材の紹介と共に、地方を象徴する料理のリチェッタを1品取り上げています。
ウンブリアを象徴する料理として取り上げたのは、“レンズ豆のミネストラ”。

レンズ豆はウンブリアの名産品。特にカステッルッチョ・ディ・ノルチャは、6月初めの花の時期にウンブリアとマルケの間の高原がハーブとカラフルな花で埋まる光景で有名。脱穀は8月。
2014年のカステッルッチョ・ディ・ノルチャ。

出荷されるまで。

レンズ豆はそのコインのような形から、お金がたまる縁起の良い食べ物として、イタリアでは年末年始には必ず食べる。富だけでなく、鉄分やたんぱく質を豊富に含む優れた食品でもある。庶民の間では陶器の鍋でコトコト煮込むのが一般的だが、個性的な味と歯ごたえで、世界中で重宝されて、約7千年前から食べられていた。原産地は現在のシリア。地中海全域に広まり、中世には主に修道院で栽培されて、修道士たちの断食の日の質素な食事に登場する“金曜日の食べ物”で、肉に匹敵する栄養価があるとみなされていた。

レンズ豆のズッパはイタリアのすべての州にあるが、今月の(CIR)ではウンブリアのレンズ豆のミネストラを紹介している(リチェッタの日本語訳はP.29)。
色味が暗くてさすがは中世の断食の食事だと思っちゃいますが、(CIR)のリチェッタのようにトマトを加えるだけで大分明るくなります。基本はレンズ豆のミネストラと同じですが、豆にカットトマトやトマトペーストを加えて煮ます。下の動画では仕上げに粉末のターメリックを加えてますね。
トマトなし。

トマト入り。

レンズ豆はエジプトの国民食。
エジプトのレンズ豆料理。ゆでるだけでなく、さらに裏漉したり、サラダにする国も。

インドの“ダール”のベースもレンズ豆。

レンティッキエ・ロッセlenticchie rosseは別名エジプト・レンズ豆lenticche egizianeという皮なしのタイプ。ゆで時間が15分と短く、荷崩れしやすいのでクリームスープ向き。

トマトの代わりにオレンジでも美味しそう。
レンズ豆のオレンジ風味。

モロッコ風レンズ豆のサラダ。

ウンブリアの豆の生産量は、人口の急激な減少、豆の栽培に時間がかかり、機械化ができない、などの理由で減少している。
いざという時はやっぱり修道院は頼りになりそう。


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2023年5月12日金曜日

大地震から復興中のノルチャでは、ほぼすべての若者と外国人が長い髭を生やしてワークブーツを履いているんだって。トラジメノ湖畔の町ではイタリアで最初のバイソンの飼育が行われている。

イタリアのユニークな食文化を州ごとに紹介する新連載、《ベルパエーゼ》(日本語訳はP.19
~)。3月号は、フリウリ、サルデーニャ、ピエモンテ、ウンブリアです。
かなり本格的で独特な視点で地方を紹介する記事ですが、今月のウンブリアも、いきなり、更新世(氷河時代)にウンブリアにはバイソンの先祖と思われる牛が生息していた。という話からスタートです。更新世(こうしんせい)なんて言葉、初めて聞きましたが、さらにバイソンですよ。150万年前のバイソンの大腿骨がペルージャの古生物博物館に展示されているんだそうです。
当然バイソンはヨーロッパには存在しないアメリカの原住民の動物というイメージ。
ところが、この最大の野生動物がヨーロッパにいた、というのはもちろん大ニュース。たぶん、恐竜の骨が見つかったぐらいの衝撃だったんだろうなあ。

でも、これがウンブリア料理の話とどう結びつくのかと不思議に思っていたら、なんと、イタリアで最初の約50頭のバイソンの飼育がトラジメノ湖畔の町、パニカーレで始まったんだそうです。イタリアンバイソンです。うーん、すごいこと考える起業家がいるんですね。


さすがに初めてウンブリアに来た時はニュースになったらしい。

バイソンは野生状態で生えている草を自由に食べて育ちます。マイクロチップをつけていて、体重や運動量や不足した栄養の情報も分かるというハイテクな飼育ですが、飼育方法はアメリカのスー族の方法に従っているそうです。

実はウンブリアは倫理的、精神的なライフスタイルの実験場だそうです。この出来事もそれを象徴しています。

ウンブリアのノルチャにはベネディクト会のコミュニティーがあり、ほぼすべての若者と外国人が長い髭を生やしてワークブーツを履いているんだそうです。
ノルチャと言えば、2016年のアマトリチャーナを含む周辺地域が大地震で破壊された地域です。それが今では新しい修道院が建てられ、ビール造りも始めてヨーロッパやアメリカに輸出しているそうです。
教会は災害からの復興の大きな力になっているようです。さらに地元の人々も、未来や世界に目を向けて、どんどん前に進んでいるようです。


ウンブリアのキーワードはスピリチュアルとエコロジー。どちらも半端じゃなく、本気で、しかも夢を持ちながら取り組んでいる。
トスカーナとウンブリアの境界にある畑に囲まれた町、ピエーヴェは、人間のサイズの生活を求めて、多くの外国人が移り住んで、インターナショナルな小さなコミュニティーが生まれ、その結果、第2のキアンティのようになっています。

ピェーヴェ

ピアーヴェはトスカーナの影響が強いので食文化も面白そう。
次回はウンブリア料理の話。


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2023年5月11日木曜日

農民が上質の小麦粉を造り出すための小麦として誕生したセナトーレ・カッペッリ。大規模農業に適さなくて栽培量が減ったが、今は生物多様性のシンボル。

このあたりで(CIR)3月号の話に戻ります。
今日のお題はセナトーレ・カッペッリです(記事の日本語訳はP.31~)。
イタリアが世界に誇るパスタ。そしてその原料でもある硬質小麦もイタリアが世界に誇っている産物です。
イタリアの硬質小麦の中でも有名なのが、セナトーレ・カッペッリという品種です。
下の動画はトスコ・エミリア―ノ山地の標高1000mにあるセナトーレ・カッペッリの畑。
幹線道路や工業地帯から遠く離れた、自然の真っただ中で、有機栽培で造られています。

下の動画にはセナトーレ・カッペッリの生みの親、ナザレノ・ストランペッリの写真があります。遺伝子学者の彼は上質の小麦粉を造り出すための硬質小麦を選別して1915年にセナトーレ・カッペッリを造り出しました。セナトーレとは“上院議員”ということ。
(CIR)の記事によると、普通は新しい品種には作り出した人の名前をつけるものですが、上院議員で学者の彼はプーリアに所有する土地を研究のために提供した人物なんだそうです。ちょっと政治的な忖度のようなものがあったかも。

70年代までは国内でもっとも多く栽培されていた硬質小麦でしたが、その後近代的な大規模農業に適した品種が主流になり、栽培量が減少したそうです。
そして現代、この小麦は生物多様性の象徴として蘇ります。多品種と交配することなく、100%純粋な品種として、多くの他の硬質小麦の父親になります。


その特徴は、豊かで個性的、香りが持続するなど味の評価が高く、ヘルシーなこと。美味しくてヘルシーという曖昧な評価も、現代になって科学的な根拠が加わるようになります。
高度に精製していないので微量栄養や食物繊維を含みながら、すべての人に消化しやすい小麦。
近代的大規模農業に適さないと敬遠された品種が、今では生物多様性、サステナビリティ、トレーサビリティーなど、現代の農業に適応して生き残りの道を歩んでいます。
食品としての品質改良のためには環境への影響を最低限で、持続可能なものにする必要があります。肥料や殺虫剤を用いない有機栽培が必要で、水不足に耐えられるようなとても素朴な環境を保たなくてはなりません。現在はイタリア南部、バジリカータを中心に栽培されています。価値の高い小麦です。

パスタの原料として高く評価されたセナトーレ・カッペッリ。
セナトーレ・カッぺッリ小麦とアルティジャーナーレな製法が結びついたパスタ。

現代的農業の舞台として注目を浴びているのは南イタリアだけではありません。ウンブリアもそんな地方です。詳しくは次回に。


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パネットーネの誕生にまつわる話は、トーニのパンとか、ミラノの起業家精神の現れとか、面白い説が色々あるが、ポイントはパン。

前回は、(CIR)12月号の“カンディート”の記事から、カンディートが欠かせないクリスマスのドルチェ、パネットーネの紹介をしましたが、パネットーネはミラノのドルチェ。 パネットーネ その誕生の経緯には、こんな言い伝えがあります。 その一つが、ミラノを統治していたスフォルツァ家の当...