新入荷の本、グイド・トンマージの『クチーナ・ディ・ナポリ』は、
リチェッタの前後の短い解説が面白い。
例えば、ヘアバンドにサングラスのナポリ風?謎ファッションのおじさんが掲げ持っているズッキーニのパスタ(P.49)が気になったので、リチェッタを見てみました(P.46)。
料理名は“ジェッピのネラノ風ヴェルミチェッリ”です。
前書きの解説には、
「南部の男は料理を作る時は一連の儀式をまじめに守る」
とあります。
このリチェッタを提供したジェッピことジュゼッペも、ネラノ風パスタのマエストロで、子供の頃からこの料理を食べているそうです。
ジュゼッペGiuseppeのニックネームがジェッピGeppyなのか!
後書きの解説には、この料理は1950年代初めに有名だったシリニャーノのプリンチペ、プペット・カラヴィータのために考え出された・・・。
とあります。
???ですよね。
プリンチペ?直訳すれば王子?
何やら、この王子がある晩ネラノにヨットでやってきた。
ネラノというのはアマルフィとカプリ島の間にあるビーチで知られる村。
ところがその時、王子が訪れたリストランテ・マリア・グラツィアには、畑のズッキーニとカチョカヴァッロなどのチーズの残りしかなかった。
そこでこれらを使って作り出し、今や世界中に広まったのがこのパスタ、だそうです。
まずはシリニャーノのプリンチペ。
プリンチペというのは王子という意味もありますが、公爵や伯爵のようなイタリアの爵位の一つ。
サンタンドレア・ディ・シリニャーノの観光局のこちらのページによると、シリニャーノのプリンチペという名称を受け継いできた貴族の最後の血筋が、ナポリの最後の貴族と言われているプペット・カラヴィータさん。
この人です。
純粋なナポリを象徴する人でした。
イタリアの王政は1946年に国民投票で廃止されているので、1950年代に活躍したというのは、没落貴族の遊び人だったという意味にもなりますねえ。
実際テレビによく出たり、自叙伝が売れたり、自動車レースに何度も勝って、知名度は高かったようです。
20世紀の一番有名なナポリ人と言う人もいます。
シリニャーノはナポリの東にある海のない町で、決して豊かではなく20世紀にはこの町から大量の移民がアメリカ、特にサンフランシスコ、フランス、スイス、ドイツに渡ったそうです。
シリニャーノとパラッツォ・カラヴィータ
ナポリ近郊の村で領主様ということは、村の社交の主役で文化の中心で村の誇りだったのですね。
戦後の厳しい時代に派手に遊ぶお殿様は、輝いて見えたかも。
彼が所望して、ありあわせのもので作ったパスタ(ネラノ風スパゲッティ)をジェッピのリチェッタでどうぞ。
ネラノ風パスタ、ジェッピ風Vermicelli alla nerano di Geppy
材料/4人分
ヴェルミチェッリ・・400g
ズッキーニ(サン・パスクアーレ種)・・1.5kg
おろしたパルミジャーノ・・100g
おろしたプロヴォローネ・・50g
バター・・50g
揚げ油用EVオリーブオイル
フレッシュのバジリコ
粗挽き黒こしょう
・ズッキーニを薄い輪切りにして揚げる。
・冷めたらちぎったバジリコ数枚とバターを加える。
・パスタをアルデンテゆでる。
・パスタのゆで汁少々をズッキーニにかける。
・パスタの水気を切る。鍋にズッキーニ、パスタ、ズッキーニの順で入れてマンテカーレする。
・混ぜたチーズとパスタのゆで汁をかける。
・仕上げに挽きたてのしょうとバジリコを散らしてサーブする。
スパゲッティ・アッラ・ネラノ
ヘアバンドにサングラスのジェッピが印象的で読み始めたリチェッタでしたが、思いがけず面白い話でした。
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