新着本の紹介です。
『100ラグー』という本です。
ラグーは、トマトソースと共にイタリアが世界に誇るソース、別名ミートソース。
著者のマリア・ベナッサーティさんはモデナの実業家の一族出身。
当然、エミリア地方のラグーこそ、正統なラグー、と信じていますが、ナポリ風ラグーや魚や野菜のラグーの存在も認めています。
マリアさんのおじいさんは国際的な石油会社の創業者。
マリアさんはアートに造詣が深く、モデナでアートギャラリーを経営していました。
スポレートの音楽フェスティバルを主催するなど、音楽の分野でも知られた人です。
セレブ一家のお嬢様は、そのコネをフルに活用して、ラグーのリチェッタを100人分集めたようです。
コネだけでなく、幅広い知識で、歴史的なラグーのリチェッタも調べ上げました。
本に載ってる一番最初のラグーは、al-Baghdadiのラグーです。
誰この人。
そして本には何と、「この人のことはよくわからないのでググりました」ですと。
さすがはセレブなお嬢様。
堂々のカミングアウトです。
私も早速ググってみましたが、なにこれ、危なそうな人が出てくるんですけど。
バリバリテロリストじゃないですか。
いやいや違いますからね。同名の他人です。
変な動画に誘導されないでね。
正解はこの人です。wikiのページはこちら。
アル=バグダデイさん。
何の罪もない、善良な、トルコ人に愛されたアラビア語の料理書(1226)の著者です。
後の世のテロリストと同名だったばかりに、立派な功績を残したのに、この先苦労するだろうなあ。
なんとこの本には、世界で初めてパスタが登場するんだそうです。
そのパスタはitriya(イトリア)。
・・・この話、聞いたことありますよ。
アラブからシチリアに伝わった初期のパスタはイトリアと呼ばれるスパゲッティーニだったという話。
これは有名ですが、そのソースはラグーだったというのは初めて知りました。
マリアさんはアル=バグダディさんのリチェッタを再現してみたそうです。
比較的簡単で美味しかったと書いていますが、唯一の問題が、松やに。
松やにといえばギリシャワインに独特の風味を加えるあれですが、これが13世紀のトルコでは大はやりしていたそうです。
最初のラグーのパスタ、怖くて動画検索ができないので、マリアさんが作った料理の写真は、とても参考になりますねー。
2品目は、マストロ・マルティーノのラグーです。
マストロ・マルティーノ、これも聞いたことありますよ。
イタリアで一番古い料理書(1460頃)を書いた人です。
詳しくは次回。
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