イタリア料理ほんやく三昧

2018年6月22日金曜日

ポルタフォーリオことヴァルドスターナ

今日は「ヴァルドスターナ」の話です。
ヴァルドスターナとは、“ヴァッレ・ダオスタの”という意味の言葉ですが、
イタリアの北西の隅にあるイタリアで一番小さな州の話ではなく、
ヴァッレ・ダオスタの代表的なセコンド・ピアットの話です。
この料理は北の料理の中では珍しく、イタリアの国民的肉料理として国中に広まっています。
ただし、ポルタフォーリオという別名がつけられています。

正式名は、コストレッテ・アッラ・ヴァルドスターナ。

こんな料理
 ↓



コトレッタ・ミラネーゼにそっくりですが、中にヴァッレ・ダオスタ名物のフォンティーナとハムのスライスをはさみます。
ミラネーゼより、ある意味豪華。

総合解説」ではハムもヴァッレ・ダオスタ産を使っています。
炭火で焼くSaint-Oyenのプロシュットというのが美味しいそうです。

ヴァッレ・ダオスタは公用語がイタリア語とフランス語なので、町の名前がフランス語風だと、読めない。
セント・オイエンでしょうか。

まあ、ヴァッレダオスタのハムが手に入らなけくても、ポルタフォーリオという名前にすれば、すべて解決です。


家庭料理の秀作『マンマ・ミーア』↑には、ヴァルドスターナのバリエーションが載っています。
それによると、コストレッタは骨付きを使います。
肉に厚みがあるのでハムとチーズはこの順で、はさまずに、肉にのせます。
肉もチーズも、かなり厚めです。
チーズが溶け出したらオーブンに移して焼き上げます。
この方法だと、肉がぶ厚いまま焼き上がり、生ハムの縁がこんがり焦げて、その中にトロトロのチーズが黄色く輝いている、という、とてもボリューミーで美味しそうな姿です。
山小屋で働いている息子たちの大好物、みたいな料理です。

セント・オイエンのカーニバル
 ↓






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“ヴァルドスターナのバリエーション”の日本語訳は、「総合解説」2016年2月号に載っています。
マンマ・ミーア
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2018年6月20日水曜日

ピッツァ・アルタとピッツァ・バッサ

新入荷のスローフードのピッツァの本、『ピッツァ/グランデ・トラディツィオーネ・イタリアーナ』の解説その2です。


今ではピッツァの本場はナポリという説が世界中に広まりましたが、地元愛が強いイタリアでは、地方ごとに広まったピッツァのスタイルが違いました。
例えばフィレンツェ、そしてトスカーナでは、カリッと焼き上げた、縁が平らなpizza bassa が広まりました。
よく火が通ったものが好まれたのです。
ナポリのピッツァの、柔らかくて溶けるような生地に慣れていないトスカーナ人には、生焼け状態と取られて、人気がでなかったのです。
なので、フィレンツェのピッツァ・ナポレターナの中には縁の厚さが出る程度の薄くてカリッとしたピッツァを焼いて、ピッツァ・ナポレターナには生地が2倍必要だからと2倍の値段をつける店もありました。
それでも、フィレンツェでピッツェリアを開くナポリのピッツァイオーロはいました。
カンパーニア生まれ、キアンティ育ちでフィレンツェでピッツェリアを開いたジョヴァンニ・サンタルピア氏は、
「私がフィレンツェに来た時、まだフィレンツェにはナポリピッツァのファンはいませんでした。
 みんなpizza altaは重いと信じていて、麺棒で伸ばしたピッツァのほうがナポリのピッツァより重いことを知りませんでした。
私のピッツァは時間をかけて発酵させて、ナポリのアルティジャナーレの伝統通り、手で伸ばします。
でも、焼き時間を変えてみました。
若干長めにして柔らかいけれどカリッと焼き上げて地元の好みに合わせたのです」

ジョヴァンニは、キアンティで店を始めた当初は、liebito di birra(生イースト)を使っていましたが、すぐにlievito madre(天然酵母)に変えました。
そしてそれ以来、ずっと使っています。
さらに、ヴィギッツォロ・デステのピッツァ大学(webページはこちら)に通って、まったく新しいピッツァ作りに挑戦します。

そして2010年に、フィレンツェの中心部にラ・ディヴィーナ・ピッツァを開き、フィレンツェの人々の、質のよいストリートフードとしてのカットピッツァを食べたいという要求に答えていきます。

本ではさらに、ナポリピッツァが世界中に広まった21世紀の、フィレンツェ生まれのピッツァィオーロのエピソードと続きます。
本にはリチェッタも載っていますが、きょうはここまで。

小さくて居心地の良いグラツィアーノの店は、彼のオリジナリティーに満ちています。
ディヴィーナ・ピッツァ
 ↓


ナポリ・ピッツァがイタリア中に広まった背景には、興味深いエピソードが満載でした。


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ピッツァ/グランデ・トラディツィオーネ・イタリアーナ
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2018年6月18日月曜日

鴨のラグーのパッパルデッレ

今月の「総合解説」のパスタの記事は、“トスカーナ風パスタソース”です。
監修は、イタリア料理アカデミー会長で、フィレンツェ料理の専門家、料理書の著作もたくさんあるパオロ・ペトローニ氏。

イタリア料理アカデミーは、こんな団体。
 ↓


彼の本は、クレアパッソでも販売しています。

豪華で詳細なトスカーナ料理の本の集大成。
ペトローニ氏の代表作。

イル・グランデ・リーブロ・デッラ・ヴェーラ・クチーナ・トスカーナ



上記の本のコンパクト版『リチェッテ・デッラ・クチーナ・トスカーナ


パスタも大好きなペトローニ氏のパスタの本。
スパゲッティ・アモーレ・ミオ


本格的なものから手軽なものまで多数あります。
権威ある団体の会長を務めるだけあって、学者肌のまじめな人物。
フィレンツェ生まれで母親はフィレンツェ、父親はルッカの人。

そんな彼が監修したトスカーナ風パスタの記事は、トスカーナは肉食系の食文化だ、という話から始まります。
ビステッカ・アッラ・フィオレンティーナが有名ですが、トスカーナの肉料理は狩猟肉や家禽類。
そしてトスカーナ風パスタとは、手打ちパスタと家禽のソース。
代表的なのは鴨のラグーのパッパルデッレです。

1001スペチャリタ・デッラ・クチーナ・イタリアーナ

によるとアレッツォの伝統料理だそうです。

ラグーは、エミリア地方のラグー、別名ミートソースとは違って、挽肉ではなくブラーチョラと呼ばれる肉の切り身から作ります。
さらにパスタにかける量は少なめ。

今月訳したリチェッタは、
■鴨のラグーのパッパルデッレ
■ペンネ・アル・コッチョ (ポルチーニ、グリーンピース、リガティーノ、黒トリュフ)
■農民のマッケローニ(マッケローニは幅広のパッパルデッレのこと)
■子羊とアーティチョークのパッパルデッレ

ペンネに使っているリガティーノとはトスカーナ版パンチェッタ。

リガティーノの天日焼き
 ↓


この話、もっと早く知りたかった。
トスカーナに行って、鴨のラグーのパッパルデッレを食べなかったなんて、残念すぎる。




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トスカーナ風パスタソースの生地の日本語訳は「総合解説」2016年2月号に載っています。
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2018年6月16日土曜日

南イタリア産の唯一のりんご

「総合解説」2月号発売しました。

まずは今月の食材。

今月は、ラ・メランヌルカです。
いったい何でしょう。
ヒントは、果物です。
産地はカンパーニア。

別名メーラ・アンヌルカ・カンパーナ(Melannurca Campana)というカンパーニアIGPのりんごです。

りんごというと北国のイメージがありますが、カンパーニアには少なくとも2000年以上前からあった品種で、西暦79年にポンペイと一緒に噴火で廃墟になった街、エルコラーノの遺跡にも描かれているそうです。
下の動画にもその壁画がちらっと登場しています。
家庭の壁画には身近な果物が描かれたので、このりんごもかなり普及していたと考えられます。 



一般的なりんごより小型で、ヘタも短くて柔らかい品種。
 収穫後に皮が赤くなるように(80~90%)、水はけを良くするための切り屑や松の葉の上に広げて熟成させます。



手作業で摘み取り、1個ずつ手作業で裏返すという、手間のかかる作業で熟成させます。

カンパーニアの沿岸部一帯に広まった、地中海に愛されたりんごです。
イタリアで最も人気のある品種とか、通好みという人もいて、別名りんごの女王様。

ミルクの次に人間が口にするのはりんご、というわけで、その優れた栄養価も注目されています。

イタリアの代表的りんごの産地の一つ、アルト・アディジェ。
カンパーニアとは全く違う環境です。




北の山のりんご比べると、カンパーニアのアンヌルカは、かなり特殊な環境で栽培されているのですね。

アンヌルカの収穫量は、イタリア全体のりんごの5%。
でも、その割には料理書に登場する機会はかなり多いです。

アンヌルカのオーブン焼き。アマレット詰め。



ラ・グランデ・クチーナ・レジョナーレ・イタリアーナ”シリーズの『カンパーニア』には、


「アンヌルカとトマトはカンパーニアのシンボル」と紹介されています。

1001スペチャリタ・デッラ・クチーナ・イタリアーナ』には、



「イタリア南部で栽培されている唯一のりんごで、
カンパーニアの5つの県すべてで栽培されている。
もっとも伝統的な産地はヴェスヴィオ山のふもと。
長期間保存できるのでカンパーニア土産としてもお勧め」
と書かれています。


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“メーラ・アンヌルカ”の説明は「総合解説」2016年2月号に載っています。
新着書籍
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2018年6月13日水曜日

注目のジェラートの本

新着書籍のご案内です。

ジェラーティ』。



レッジョ・エミリアの人気のジェラテリーア、クレメリア・カポリネアのジェラートです。
ガンベロ・ロッソが初めて発表したジェラテリーアの格付け本では、37000軒あるイタリアのジェラテリーアの中からガイドに載る300軒に選ばれ、最高のトレ・コーニを獲得しました。
イタリアのグルメ情報サイト、Dissaporeでは2016年度の最優秀ジェラテリーア・イタリアーネ。
店主のシモーネ・デ・フェオ氏は今、注目のジェラート・マエストロです。




彼のジェラートに惚れ込んだ編集者が、家庭でも彼のジェラートの味を再現したい、という一心で作り上げた情熱あふれる美しい本です。

最初に、ジェラートの歴史を簡単に説明していますが、その中で、ジェラートはパスタやピッツァと同じ道を歩みつつある、と語っています。
世界中で愛されたがゆえに、本物のイタリアのジェラートが、姿を消しつつある、というのです。
ジェラートの歴史は、9~11世紀にシチリアがアラブに支配された時代に伝わった水と砂糖がベースの氷、ソルベットから始まります。
ルネサンスの時代には、フィレンツェのカテリーナ・デ・メディチの宮廷で大流行します。
彼女が後のフランス王と結婚した時、料理人とパスティッチェーレとジェラタイオをパリにつれていったと言い伝えられています。
16世後半のトスカーナ大公の宮廷では、エンジニアで建築家のベルナルド・ブオンタレンティによって牛乳、蜂蜜、卵をマンテカーレする機械が発明されて、最初の冷えたクレーマが誕生します。
イタリアのジェラートの父は、シチリアのパスティッチェーレで、1686年にパリでカフェ・プロコプを開いて氷水とジェラートで大成功したプロコピオ・デイ・コルテッリという人物だと言われています。




シモーネ・デ・フェオ氏のジェラートは、本の一番最初のリチェッタ、フィオルディラッテのジェラートが基本になっています。
基本の材料は、砂糖、増粘安定剤、油脂ですが、増粘剤にはカッルーベの粉(キャロブパウダー)を使います。
フィオルディラッテのジェラートは油脂が牛乳。
これにレモンの皮、バジリコ、シナモン、バニラとオレンジ、スターアニスとミントなど加えるものによってバリエーションは無数にできます。

他に、バリエーションは、ストラッチャテッラ、パンナ・コッタ、マスカルポーネ+いちじく、リコッタ+蜂蜜+ローズマリー、マスカルポーネ+レモン+松の実、マスカルポーネ+ケッパー+コーヒー、ヨーグルト+エキストラバージンオリーブオイル+タイムなど、本物のイタリアのジェラートを追求して、いちばん大切なのは味だと言い切るデ・フェオ氏ならではのラインナップ。
どんな味なのか、気になるものばかりです。



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新着書籍
ジェラーティ
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2018年6月11日月曜日

ウェリントン・ブーツとビーフ・ウェリントン

今日はワインの話題。
今月のテーマは「ヒレ肉に合うワイン」。
リチェッタの「ヒレ肉」の記事と連動しています。

記事の最初の料理は“フィレットのウェリントン”
 ↓


ビーフ・ウェリントンという名前で知られるイギリス料理。
初代ウェリントン侯爵、アーサー・ウェルズリーにちなんだ料理。
彼はワーテルローの戦いでナポレオンに勝つなど数々の軍功を上げている将軍で国民的ヒーローです。
このヒレ肉をパイで包んだこの料理が、彼のトレードマークのブーツに似ていたからこう呼ばれるようになったそうです。
彼のブーツはウェリントン・ブーツと呼ばれています。
 ↓


名前カッコいいけど、これはいわゆるゴム長です。

キャストが豪華なBBCのシトコム、ブラックダダーの一場面。
主役のローワン・アトキンソンとドクター・ハウスのヒュー・ローリーが超面白いけど、赤いジャケットでロングブーツの人がウェリントン侯爵です。



いけない、また横道に・・・。
ワインの話でした。

ヒレ肉は水分が多いデリケートな肉なので、白やロゼも合うんですね。
下処理
 ↓


ソムリエのお勧めの1つは、フリウラーノ。
ドライでほろ苦さのある個性的な白を組み合わせたそうです。
他にはアルバーナやヴェルディッキオなど。

フリウラーノは元々はトカイと呼ばれていましたが、ハンガリーのトカイと区別するためにトカイ・フリウラーノとなり、結局フリウラーノとなりました。

お勧めのフリウラーノはレナード・ケベル。
フリウラーノはこんなワイン。
 ↓



レナート・ケベルのぶどう畑
 ↓



鉄の侯爵と呼ばれたイギリスのヒーロー、アーサー・ウェルズリー侯爵のゴム長を思い浮かべながらヒレ肉のパイ包みを食べてみたくなりました。


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“柔らかいヒレ肉に合うワイン”の記事と“ヒレ肉”のリチェッタの日本語訳は、「総合解説」2016年1月号に載っています。
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2018年6月8日金曜日

最上階のゴージャスレストラン

今日は「総合解説」から注目店の紹介。
テーマは、星付きシェフたち、ですが、
この星というのはミシュランの星だけでなく、文字通り、空の星のこと。
つまり、星に近い、高層階にあるレストラン、ということ。

まずはミラノのリストランテ・ウニコ。
wjcタワーの最上階にあり、360度窓。
フェリーチェ・ロ・バッソシェフはプーリア生まれで以前はドロミテのレストランにいたという、海と山、どちらもOKという人。



彼はウニコの成功でステップアップしたようで、ウニコをやめてミラノのガッレリーアに、自らの名前を冠した店、“フェリックス・ロ・バッソ”を出しました。
こちらも眺めの良い店だそうです。



まさに今、のりにのってるシェフですね。
次は東洋かアメリカに出店したいそうですよ。

次はナポリのモダンなホテル・ロメオのルーフトップの店。
夜景が素晴らしい。
こんなゴージャスなホテルがあるなんて、ナポリはすごい勢いで変わってるなあ。



サルヴァトーレ・ビアンコシェフはマルケージ・チルドレン。
「総合解説」でリチェッタを紹介しているカンデーレは、かつお節をトッピングしています。
他に、「総合解説」によると韓国のクルトマトや中国で人気のアフィラ・クレスというスプラウトなど、世界中の食材を使いこなしています。




最後はローマの高級ホテル・パラッツォ・マンフレーディの最上階の店、リスランテ・アロマ。
コロッセオに面していて、部屋やレストランからコロッセオが眺められると言う超立地。
ルレ・エ・シャトーグループのホテルです。



こ、これはすごい。
私のお上りさんごころが激しく揺さぶられています。
ローマとナポリのホテルは、この夜景を眺めながら食事をしに、今すぐ行きたくなりましたよー。

ジュゼッペ・ディ・イオリオシェフ。







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“星つきシェフたち”の記事とリチェッタの日本語訳は、「総合解説」2016年1月号に載っています。
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