2025年12月11日木曜日

ブッラータのハートはストラッチャテッラ。

(CIR7月号)から、プーリアのグルメガイドの記事の解説です。日本語訳と写真はP.16。
まずはアンドリアのブッラータの話。
プーリアのヒーロー、フェルデリコ2世に愛された町、アンドリアからスタートです。
プーリアの名物チーズ、ブッラータが生まれた町です。
作り立てが一番美味しいフレッシュチーズは、やっぱり産地で味わわなくては、と思っていたので、この町の有名チーズ製造所の情報を仕入れて、とにかくまず訪れたのです。でも、よく考えれば、ブッラータはモッツァレラの一種ぐらいに考えていて、正直言って、どうやって作られるのかも知らなかったのでした。
有名チーズ店に行くより、まずブッラータの基礎情報を知っとくべきでした。
ブッラータはモッツァレラと同じ、パスタ・フィラータに分類されるチ―ズですが、パスタ・フィラータの袋の中に生クリームとバターの風味を持つ柔らかいストラッチャテッラが詰まったとてもリッチなチーズ。19世紀初めにモッツァレラの切れ端の有効利用方法として考えた出されたチーズです。
プーリアの高地ムルジャ地方に異常な降雪があって道路が封鎖された時、パドヴァ平野の農場の、すでにマンテケというバターを詰めたパスタ・フィラータの熟成チーズメーカー、ロレンツォ・ビアンキ―ノが、モッツァレラをストラッチャテッラの袋として使い、アスフォルデや地元の植物の葉で包んで独特の辛味を加えたモッツァレラに似たチーズを考え出しました。ビアンキ―ノ農場で切れ端と生クリームを混ぜてパスタ・フィラータのチーズに詰めてブッラータが誕生したのは偶然でしたが、すぐに大ヒットして世界中に知られるようになります。
主な原材料の一部はムルジェ地方の牧草を食べた牛のミルクで、独特の香りが特徴。ただ、
地元産の牛乳だけでは需要に追い付かないために、他の産地のものも使っています。
ミルクを固めた生地を湯の中で引っ張り(フィラータ)、袋型にする。または小さくほぐして生クリームと混ぜて詰め物にする。そして手でつまんで閉じ、サラモイア(塩水)に浸す。これをアスフォデルの葉などで包んで出来上がり。
丸くて乳白色のブッラータは、外側は柔らかくて弾力がある。切るとクリーミーで濃厚な詰め物が流れ出てくる。香りはデリケートで生クリームやバターのよう。味は甘い。食べると2種類の歯ごたえがミルクの味と溶け合う。しかし、ブッラータは長持ちしない。作ってから24時間以内に食べるチ―ズだ。この時間が過ぎると酸味が出てくる。一番美味しい味わい方は室温で味付けせずに食べる。
地元でも有名でニューヨークやシンガポールに顧客がいる世界的にも知られるチーズ製造店に行く前に、最低限これくらいは知っておきたかった・・・。
このブッラータ誕生の話に登場するポイントの言葉は、ストラッチャテッラとムルジェ。

ブッラータ造り。

ブッラータとモッツァレラとストラッチゃテッラ。

ムルジェ地方。

ちなみに、モッツァレラのフィラトゥーラの作業はアヴェルサとカプアの間の修道院の修道士が考え出したと言われています。職人が親指と人差し指で1個ずつ球形にモッツァ―レする(切り離す)という動作からこの名前がつきました。
ブッラータの管理組合のマークにはチーズを作る2つの手が描かれていて、モッツァレラのパッケージの管理組合のマークは、水牛の頭と緑の平野とその上から照らす太陽がデザインされています。
なんだか基本情報もたっぷり仕入れて、準備万端整えて期待に満ちてアンドリアの超優秀な職人たちがいる有名店に行き、いよいよ私が注文をする番になりました。ブッラータ1つと言えばいいんだから、楽勝です。と思ってました。ショーケースにブッラータがないのはちょっと気になりましたが、店の奥から取り出してくるんだろう、くらいに考えてました。そして私は、超無愛想な南イタリアのチーズ職人との初めての出会いに果敢に突入していきました。ブッラータ1つと言った私に、おっかないまでに無愛想な職人が返した言葉は、何g?でした。へ?なんですと?ブッラータ買いに行って重さを聞かれるとは、想定外です。言葉を失った私の戸惑った表情に、無愛想な職人も、ずらっと並んだ好奇心に満ちた地元民の常連客たちも、次に私が発する言葉を待ち受けています。詰んだ~。重さを聞かれるなんて想像もしてなかったので、心の準備が間に合いません。そこで助け舟を出してくれたのは、あの、超おっかない職人でした。何人分?と聞いてくれたのです。さ、三人です。その時は、友人2人と計3人でプーリアを巡っていたのでした。私の答えを聞くと、職人はさっさと店の奥へ消えていきました。私はどうやらブッラータの注文を無事成し遂げたようです。
これは、ブッラータはモッツァレラの袋にストラッチャテッラを詰めたチーズという基本を把握していれば、すぐに想像できそうなことです。チーズ専門店のショーケースにブッラータが並んでいないという疑問も解決です。店の奥でモッツァレラの袋に希望の量のストラッチャテッラを詰めているのです。すべての疑問が解決しました。職人は、ブッラータが入った袋を持って出てきました。料金を支払って、ブッラータを受け取って、さあ解決です。と思ったら、ブッラータの袋を持ったまま、職人がにこりともせずに、こう言いました。冷蔵帰庫に入れたらだめですよ。へ?正直言って、これからアンドリアを観光するので、ホテルに戻ったら、まず最初にブッラータを冷蔵庫に入れようと思っていました。ところが、私がまた固まっていると、職人の言った言葉が分からなかったと思った地元のおじちゃんやおばちゃんたちが全員口々に、冷蔵庫に入れちゃダメ、と私に言い聞かせるのです。ここで冷蔵庫に入れますなんて答えたら、ブッラータを渡してくれないと思った私は、何のことやらさっぱり分からないまま、入れませんと答えました。するとようやく職人は私にブッラータを渡してくれました。もちろんその日は1日中ブッラータの入った袋を持って、カステル・デル・モンテなどアンドリアをあれこれ巡りました。
ホテルに戻って、ブッラータの袋を開けてみると、3人分のストラッチャテッラが詰められている超小さいブッラータが1個入っていました。チーズを切り分けると、中からとろーっとしたいい具合に溶けかけたストラッチャテッラが流れ出てきました。一口食べてみると、こ、こんなバターみたいなチーズ、生まれて始めて食べた。なにこれ超美味しい。それ以来、ブッラータは冷蔵庫に入れない、という鉄の掟が刻み込まれました。

アンドリアでブッラータを買った店。ただし10年以上昔の話。店の情報を仕入たのはクチーナ・イタリアーナ誌2013年3月号。

プーリアが大好きになった貴重な体験でした。
プーリアの旅の面白い話、まだあります。

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スッド・グランデ・クチーナ(南伊・山・海)』

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2025年12月10日水曜日

アンドリアでブッラータを買う。

(CIR7月号)から、プーリアのグルメ旅の話をしています。まずは、プーリアに行くなら事前に知っておきたい基本情報。それはフェデリコ2世のこと。日本人で彼のことを知っていたら、かなりの歴史オタク。またはプーリア人です。彼のことを知らないと、プーリアに行って誰?それ?てことになって結局、もやもやをかかえてプーリアを巡るとこになります。世界遺産のカステル・デル・モンテを作った王様、てことぐらいしか知らなかったのですが、初日から行った場所が全部彼所縁の場所ばかり。起業家としても才能があり、学問と芸術を愛し、十字軍ではエルサレム王として戴冠するという、歴代皇帝とは違いイタリアを本拠地とする超進歩的なローマ皇帝。
彼の生涯を解説する動画もたくさんあります。

とにかくプーリアに行くなら、フェデリコ2世のことはちょっとは知っておいたほうがいいです。で、(CIR)のプーリアのグルメガイドの記事には皇帝に忠実だった街、とアンドリアのことを紹介しています。
アンドリアはブッラータの産地。
モッツァレラを味わいにカンパーニアやナポリに行ったことのある人なら、フレッシュチーズのブッラータも本場で味わってみたいはず。
アンドリアのブッラータ。
私が初めてアンドリアに行った時は、ブッラータとはどうやって作るチーズなのか、何も知らずに行きました。名前からしてバター味のあるモッツァレラだろうというイメージ。ただ、仕事柄、グランシェフたちが仕入れるすごくおいしいブッラータを作るチーズ専門店がアンドリアという町にある、と知り、その店に直行したのです。いや、正直言って、ブッラータの作り方ぐらい知っとけばよかったなあ、と今なら思います。そうすれば地元民でぎゅうぎゅうのあの人気店の中で、あんなに恥ずかしい思いはしなかったでしょう。
とにかく、モッツァレラとブッラータの違いも知らなかった私は、ブッラータの注文は、モッツァレラを注文するみたいにすればいいじゃん、と、気軽に、ちょっとぼーっとして店のショーケースを眺めていました。ん?すぐに気が付きました。ブッラータがないじゃん。ブッラータ1個ください、とつたないイタリア語で言えば注文完了だと思っていた私は、その時、初めて、これはちょっと違うかも・・と気が付きました。しかもその店は、グランシェフ御用達の素晴らしいチーズを作る店。店員というよりベテランの職人風のおじさんが対応してくれるようです。店内に観光客と思しき人は一人もいなくて、すべてバリバリ地元の南イタリアのおばちゃん、おじちゃんたち。私が注文する番がきて、彼らはみんな、好奇心に満ちた目で、このアジアの女の子が何を注文するのか注目していました。ミラノやローマの世界中から来たお上りさんの観光客相手の店しか知らない私は、気づいた途端に身がすくんで、ひえ~、怖い~。
アンドリアのブッラータ。

ナポリのモツァレラ。

モッツァレラとブッラータの違いぐらいは知っておけばよかった・・・。
アンドリアに行く前に、というかアンドリアの有名チーズ屋に行く前に知っておきたいこと。続きは次回。
果たしてブッラータの注文できるのでしょうか。

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2025年12月9日火曜日

プーリアの旅

(CIR7月号)のなんだか可愛い名前のピエモンテ料理、うさぎのトンノの次は、プーリア料理の話です。イタリアの地方料理は北と南を行ったり来たりしますが、北のピエモンテも南のプーリアも、イタリア料理の大切な地方。
“プーリアのパン、ワイン、魚を巡る旅”の記事の日本語訳と写真はP.16。
私の南イタリアとの出会いは、まずカンパーニアのナポリ、カプリ、アマルフィと、ゴージャスで世界的なバカンス地から入りました。世界中の観光客にもまれるお上りさん丸出しのルートですが、初めて足を踏み入れた南イタリアは、それでもかなり北とは別世界で、ディープな体験でした。シチリアを経由してさらにディープな世界に浸り、その面白さにかなり慣れてきたころ、いよいよプーリアに足を踏み入れます。最大の目的は、おいしいと評判の店のブッラータを食べることでした。でも、着いて24時間経った頃には、ここはシチリアよりもっとディープな地だということに気が付きました。ミラノやローマに慣れていた身には、刺激強すぎて、人間が熱すぎて、毎日ぐったりで、でも料理はすんごく美味しくて、オリーブオイルが合ったのかお肌が艶々になって、ロゼワインばかり飲みだして、もうかなりはまってしまいました。という訳で、プーリアにはいい思い出しかないのでした。
記事に出てくるプーリアの大聖堂の女王と呼ばれるプーリアのロマネスク建築の代表、トラ―ニのバジリカータ・デッラ・べアータ・マリア・ヴェルジネ・アッスンタ教会の市民の行列。
この光景は、北とはかなり雰囲気が違う、超南イタリア。

世界遺産でもあるカステル・デル・モンテもプーリアの旅の目的地の一つ。ブッラータの産地として有名な街、アンドリアに近い。
この城は、プーリアの名君、フェデリコ2世の偉業の1つ。彼はローマ皇帝でとても知的な人物。文化や芸術の普及に力を注ぎ、教会権力に対抗し、カリスマ性の高い人でした。

プーリアの産物とフェデリコ2世はプーリアの宝。

オレッキエッテやブッラータのことは知ってましたが、フェデリコ2世のことは、何も知らないでプーリアに足を踏み入れてしまいました。ところが、観光地はどこに行ってもフェデリコ2世由来のものばかり。彼のことを知らないと、謎だらけでプーリアが何も分からない、という訳で、プーリアに行く前にフェデリコ2世のことはちょっとは知っておいた方がいいでしょう。

フェデリコ2世が愛した街、アンドリア。

思ったより大きな街、アンドリア。
国立公園にもなっているアルタ・ムルジャ地方の旅。
ムルゲ地方は石灰岩層の上にある台地。


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2025年12月7日日曜日

ピエモンテのマグロ。

今日の(CIR)の料理は、“うさぎのトンノとジャルディニエーラ”です。リチェッタの日本語訳と写真はP.12。
さて、例によって、これはどの地方の料理でしょうか。今回は分かりやすいですね。
まずは“うさぎのトンノ”。これはある地方のとても有名な料理です。海に面してないのにトンノ(マグロtonno)という名前をよりによってうさぎ(コニッリオconiglio)と組み合わせるというセンス。しかもその州の名前は山の麓、という意味なんです。強烈な海愛が感じられるこの料理。その地方は、ピエモンテです。州の名前に山(モンテ)がついてるんですが、その山は、もちろんアルプス。アルプスの麓なのに、その名物料理がやたらマグロに絡んでるんです。例えば有名なのはヴィテッロ・トンナート。
ピエモンテ

ヴィテッロ・トンナート

この料理のポイントはサルサ・トンナータsalsa tonnata。
この人はサルサ・トンナータには千種類あるんやで、って言ってます www。この言い方。イタリア人シェフからよく聞くけど、ちょっと控えめww。

香味野菜と一緒にゆでた子牛肉をスライスしてこのソースをかけるとヴィテッロ・トンナートになりますが、今日の料理はうさぎのトンノ。香味野菜やスパイスと一緒にゆでたうさぎ肉の料理ですが、サルサトンナータは登場しません。
この料理は、ガンベロ・ロッソの生みの親、ステファノ・ボニッリのイタリア地方料理の入門書“ティピコ・イタリアーノ

”によると、北西イタリアの代表的料理の一つ。この本によると、昔のうさぎ料理は野ウサギのことで、飼育されるようになったうさぎは比較的歴史の浅いもの。最初のうさぎ肉専門店は1874年にピエモンテのトリノにできたんだとか。やがて乱獲によって姿を消します。うさぎのトンノに使ううさぎは、グリージョ・ディ・カルマニョーラgrigio di carmagnolaというピエモンテの品種。うさぎのトンノは、昔はピエモンテのトラットリアには欠かせない料理でした。ピエモンテに野ウサギはいなくなったけど、この料理は無くさないで受け継いでいってほしい、とボニッリは書いています。
グリージョ・ディ・カルマニョ―ラと野ウサギ。

さて、そろそろ答え合わせをすると、うさぎのトンノという名前の由来は、モンフェッラートやヴァル・タナ―ロ地方のこの料理が、マグロのオイル漬けによく似ていたから、こう呼ばれるようになりました。ゆでたうさぎを瓶詰めにしてオイル漬けにする料理なのです。貧しい庶民の料理で、うさぎが手に入らない時は鶏肉で作りました。

ランゲとモンフェッラート。モンフェッラートはトリュフとわいんで有名。ポー河とターナロ河に挟まれた地域。

ピエモンテ料理のトラットリア、ピオーラ。

トンノ・ディ・コニッリオ。



ピエモンテの主婦が偶然造り出したと言ってますが、今やグランシェフのアルタクチーナとして扱われます。
ピエモンテでマグロ食べたことある人は、日本人でうさぎ肉食べたことある人ぐらい珍しかったんだろーなー。

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2025年12月6日土曜日

ナポリのペペローニ。

(CIR7月号)の料理は夏のビュッフェ料理。
今日はペペローニ・アンモッリカーティ。リチェッタの日本語訳と写真はP.10。
さーて、この料理はいったいどこの地方の料理でしょうか。
料理名からヒントを探ってみます。
まずはペペローニpeperoni。この言葉は、昔はピーマンと訳してましたが、今はパプリカが出回るようになったので、パプリカと訳してます。で、不思議なのが、ピーマンとパプリカは何が違うのですか?これ、謎なんです。ピーマンが熟して肉厚で大きくなるとパプリカ、て漠然と思ってました。学名も一緒だそうです。イタリア語ではピーマンはpeperoni。パプリカはpaprika。
で、今日の料理はペペローニ料理。でも、写真で見る限りでは、これはパプリカ。実は、南イタリアはペペローニが大好きで、中でもピーマン好きでよく知られているがカンパーニア、特にナポリです。でも、ナポリ人が大好きのペペローニは、ペペロンチーニpeperoncini。ナポリでは幸運のお守りとして愛されています。ピーマン、パプリカ論争にペペロンチーニ(唐辛子)まで加わると、しかも、唐辛子には辛いものと辛くない唐辛子があって、ややこしい。
コルノ・ポルタフォルトゥーナ。corno portafortuna。

ナポリの辛くない唐辛子、フリッジテッリfrigggitelli。

次はアンモッリカーティ。パンのクラムのことです。つまり、パプリカにクラムを詰めた料理、または細く切ったパプリカをクラムと一緒に炒めた料理。
ペペローニ・アンモッリカーティ。
古くなったパンを使いきる節約料理。アンモッリカートとはパンくずと一緒に食べる、という意味だそうです。

大きくて肉厚なパプリカは詰め物をするのにビッタリ。詰め物料理はペペローニ・インボッティ―ティpeperoni imbottiti。ナポリ料理です。詰め物料理の種類は80奥種類あるんやで、と言ってますが、なんだかどんどん大きな数字になってます。この動画のリチェッタはもっとも定番のリチェッタだそうです。
インボッティ―ティもアンモッリカーティも使うのはパンのクラム、オリーブ、アンチョビー、トマトなど。
基本中の基本、ペペローニのソテーは、ペペローニ・イン・パデッラpeperoni in padella。さすがにパンのクラムは入らないけど玉ねぎのソッフリットがベース。

ナポリ料理のペペローニのグラタンpeperoni al gratin。


2025年12月5日金曜日

メカジキのエンパナーダ・アッラ・ギオッタ。

今日の(CIR7月号)の料理は、昨日に続き、魚料理です。今月の料理のテーマは夏のビュッフェ料理。そして料理は“メカジキのエンパナーダ・アッラ・ギオッタ”。(CIR)の日本語のリチェッタと写真はP.9。
まずメカジキ料理という点から、これはシチリア料理だと推測できます。メカジキはシチリアではとても人気の魚。メカジキ漁の伝統がある街や、伝統的な独特なメカジキ漁もあります。もちろん、その街の名物メカジキ料理もあります。アッラ・ギオッタやアッギオッタというのもメカジキ料理の人気の調理方法。

メッシーナ海峡

メッシーナ海峡のメカジキ漁。

メカジキ。

地中海と大西洋のメカジキの違い。

でも、シチリア料理という説がちょっと揺らぐのが、エンパナーダという名前。エンパナーダというのは、スペイン語やポルトガル語で、アラブやスペインが起源のパン生地で包んでオーブンで焼いた料理のこと。スペイン語のempanadillaはイタリア語になると、i'mpanatiとなります。
(CIR)のリチェッタではパスタ・フロッラで包んだ、直径24㎝、高さ7㎝の型を使った大型の料理です。

エンパナーダはスペインやポルトガルの勢力が及んだ世界各地で作られています。

アッラ・ギオッタやアッギオッタは大食漢風、という意味。トマトソース、ケッパー、オリーブ入りのギオッタソースで煮た料理もこう呼びます。

パスタのソースにもなるソース。パッケリのアッラ・ギオッタ。

タコの次はメカジキでした。どちらもシチリアで食べたい魚。

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2025年12月4日木曜日

南と北の料理の融合、ポルポ・トンナート。

今日の(CIRの)料理は、“ポルポ・トンナート”です。日本語のリチェッタと写真はP.8。
もちろん、元ネタはヴィテッロ・トンナート。

イタリア料理の有名な1品で、ピエモンテの代表的な料理でもあります。ピエモンテはサヴォイア家の本拠地だけあって、フランス料理の影響を受けている宮廷料理。
ピエモンテと言えば、子牛肉大好き州。だから子牛肉が主役の料理、ヴィテッロ・トンナートはとてもピエモンテらしい料理。ただし、ヴィテッロ・トンナートのトンナートの部分は、ちょっと例外。つまり、子牛肉の薄切りをマヨネーズ、ツナ、ケッパーがベースのソースで覆うのがヴィテッロ・トンナート、またはピエモンテ風に言うなら、ヴィテル・トンネvitel tonné。ちなみにピエモンテは海なし州。ポルポ・トンナートは、ツナのソースをかけたタコの料理。地元で手に入りやすい食材を使うイタリアの地方料理の原則を大きく外れたエキゾチックな1品。
おそらく、この料理の発想は、タコのカルパッチョから生まれたと思われます。

タコのカルパッチョ。初めてこの料理を見たのはシチリアでした。その幾何学模様な美しさは軽くショックで、すっかりお気に入りの1品になりました。見た目の美しさにこだわるイタリアならではの料理。タコを固めてから薄く切るこの料理は、ゆでたタコをプラスチックのボトルに詰める、という独特の方法と共に広まっていきます。タコにかけるソースは、シトロネットが一般的。

タコのゆで方もイタリアは独特。頭を持ってお湯に3回浸して足をカールさせます。昔はコルクを入れるという謎習慣もありましたが、今はあれには意味がないとされています。

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2025年12月3日水曜日

メッツィ・パッケリを調べていたら、ナポリ人の筋付きパスタ、パスタ・リガーテの好みが分かった。

今日の(CIR)の料理は、やや上級編のパスタ。
“フリッジテッリのペースト、ブッラータ、ペペローニ・クルスキのパスタ・ティエビダ”です。
リチェッタの日本語訳と写真は、(CIR)P.5。
パスタは、カンパーニアのメッツィ・パッケリです。上級なところはソースに使われている食材。
地中海風メッツィ・パッケリ。
メッツィ・パッケリは半分のパッケリということ。下の動画のリチェッタはパッケリのナポリ風。

パッケリは詰め物をして揚げたり、立ててオーブン焼きにしたり、

筋付きのリガーティタイプも。

ところで、スローフードのスクオラ・ディ・クチーナシリーズの『パスタ・エ・スーゴ』
によると、
パッケリは乾麺の大型ショートパスタ。このタイプのパスタは、ソースに合わせて考え出されました。ソースは、そもそも地元の手軽に入る食材を使うのが鉄則。このパスタならナポリ風ラグーが合います。パスタの窪みや穴にソースが絡みやすくするために、トマトを使うのも特徴。ナポリのこだわりなのか、ナポリでは筋付きパスタより筋がないパスタ・リッシが人気で、筋付きはオーブン焼きのみに使います。パッケリは濃くて味の濃いソースに合わせます。

まずフリッジテッリはカンパーニアの辛くない唐辛子。ブッラータはプーリアのチーズ、ペペローニ・クルスキはバジリカータの天日干しした大型の唐辛子。

フリッジテッリ。

ペペローニ・クルスキ。


南イタリアならではの極上の食材を使ったパスタなのでした。

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週末はクレアパッソのお薦め本の紹介。
スッド・グランデ・クチーナ(南伊・山・海)』

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ブッラータのハートはストラッチャテッラ。

(CIR7月号)から、プーリアのグルメガイドの記事の解説です。日本語訳と写真はP.16。 まずはアンドリアのブッラータの話。 プーリアのヒーロー、フェルデリコ2世に愛された町、アンドリアからスタートです。 プーリアの名物チーズ、ブッラータが生まれた町です。 作り立てが一番美味しい...