2025年12月26日金曜日

クリスマスのビスコッティ。クリスマスツリーよりプレゼーピオ。

クリスマスの時期になると、なぜかクッキー食べたくなります。
サンタさんにクッキーを用意しておくという欧米の習慣は、イタリア料理界隈ではあまり聞いたことないけど、クッキーをクリスマスツリーのオーナメントにする、という記事は時々見かけます。

クリスマスのビスコッティ


ただ、イタリアではクリスマスツリーもマイナー。どちらかというと、ツリーよりプレゼーピオです。特にナポリのプレゼーピオは有名。

ナポリのプレゼーピオ。


キリスト生誕のシーンを人形で再現するこの習慣。ちょっとリアルすぎて不気味なこともありますが、私のプレゼーピオとの出会いは、ナポリじゃなくカリフォルニアでした。アメリカのクリスマスを見てみたいと思ってサンタ・モニカに行ってみたところ、大きなモールのような場所に、等身大のプレゼーピオがたくさん飾られていました。ナポリのような古い下町じゃなく、カリフォルニアの青い海とぴかぴかのショッピングモールを背景に繰り広げられるキリスト生誕の物語は、クリスマスはキリスト教のものだと強く感じさせて、イタリア移民の存在も実感しました。

ブルックリンのイタリア人。

コーヒーや紅茶、ヴィンサントと一緒に味わうビスコッティは、イタリアの生活にも普及していて、イタリア各地に伝統的なものがあります。

マルゲリ―ティ・ディ・ストレーザ。

バーチ・ディ・アラッシオ。

パパッシーニ・サルディ。


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2025年12月25日木曜日

ヴェローナのパンド―ロ、ミラノのパネットーネ、シエナのパンフォルテなど、クリスマスの伝統のドルチェ、そのルーツは豊作祈願のパン。

クリスマスの今日のお題は、クリスマスのドルチェなんてどうでしょう。
イタリアのクリスマスの主役はパネットーネやパンド―ロ。昔は、クリスマスのドルチェはどれも、小麦粉と手に入る中で上等のもの。蜂蜜、ドライフルーツ、レーズンがベースの特別なパンのようなものだった。地元の名物食材と外国の食材を使った特別なパン。
例えば最初はオリエントから伝わった貴重なスパイス。次はコルテスが新大陸から伝えたミステリアスなカカオなど。
パネットーネはイタリアのクリスマスのドルチェとして広く知られるようになりましたが、その誕生の話は、様々ありすぎてどれが本当なのか判断できないほど。
今日はパネットーネのライバル、バンド―ロの話なんてどうでしょう。
卵、バター、砂糖のリッチな生地をこねて、長時間発酵させる作業を繰り返すバンド―ロは素人には手を出しにくいドルチェ。その誕生はヴェローナの街と結びついています。ルーツはヴェローナの伝統的なドルチェ、ナダリン。またはヴェネチアの裕福な階級の食卓に上っていたパン・デ・オーロという説もあります。

ヴェローナのアルティジャナーレのバンド―ロ。

パウリのバンド―ロのターゲットは、明確に子供。

バウリの大人向けのPV。

 目をつぶっていても発酵と焼成の過程で漂う香りをかげばすぐに分かるクリスマスのドルチェ、パネットーネとバンド―ロ。パネットーネはミラノ、バンド―ロはヴェローナで生まれましたが、今ではイタリア中に広まっています。
 パネットーネを生み出したのはアンジェロ・モッタとジーノ・アレマーニャというライバルの二人。
 子供に人気があり、角が8つある星形が特徴で、シンプルでリッチなバンド―ロは、ルネサンス時代ヴェネチアと富を競い合った街、ヴェローナの家庭で作られていたふんわりとした軽いドルチェ、ナダリンが原型。公式にはドメニコ・メディガッティがバンド―ロの形を考え出した1884年に誕生したことになっています。その後、パウリなどが大量生産を始めて広まっていきます。
バンド―ロの成功の理由は天然酵母。ゆっくりと大きく発酵させることによって、長期間保存可能で、軽く、香りのよいドルチェになる。似たタイプのドルチェは、主に北イタリアの各地にある。そのルーツはキリスト教の誕生とともに作られてきたパン。古くから、クリススマスのミサには豊作を祈願して、蜂蜜とフルーツ入りのパンを焼く伝統がありました。深夜にミサから戻ったら、そのパンを最年長者が切り分けて家族にふるまいました。

なんとここにきて、クリスマスはキリスト教の祝日だったことを、にわかキリスト教徒にがつんと突き付けてきましたねー。ひょっとしたら、クリスマスケーキのルーツは、豊作祈願のパンとも考えられる説登場。
ここで登場するのが、フェラーラ生まれの中世のクリスマスのドルチェ、パンペパートです。

フェラーラのパンペパート。

どう見ても発酵させたふわふわのドルチェとは別物。15世紀の修道院で生まれたとされるドルチェです。フェラーラの黄金時代に生まれたドルチェですが、17世紀以降、イタリアに広まり出したカカオが秘密の食材として加えられています。カカオが生み出す洗練さが、裕福な人たちのドルチェとして認められたのでした。
クリスマスのドルチェがチョコレートで覆われるようになったのには、ミラノのパティシエでフェラーラに来る前はスイスのショコラティエだったグイド・ゲッツィのおかげ。
ミラノという名前はチラホラ登場しますが、修道院や教皇、ルネサンスという言葉も登場する世界中の影響を受けているドルチェなんです。しかも1908年のパリ博覧会やロンドン、ブリュッセル、トリノで開かれた博覧会にも出されて名誉賞まで受賞しています。

万博で名誉賞を受賞したオッドーネ・ディ・カ―ロのバンド―ロ。

シエナのパンフォルテ。


豊穣を願ったパンの進化版。


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2025年12月24日水曜日

クリスマスの主役、モロッツォのカッポーネ。

さて、クリスマスの去勢鶏、カッポーネの話です。
カッポーネは、肉が締まっていて美味しく、他の鳥類とは味の深さが違うんだそうです。
伝統的にはクリスマスのご馳走で、特にブロードが美味しいんだって。このブロードでトルテッリーニなどのパスタをゆでると絶品なんだって。ボッリートにすると口の中で溶けるほど柔らかく、ローストはゴージャスだそうです。

カッポーネのブロード。

カッポーネのボッリートとロースト。

カッポーネのブロードのトルテッリーニ。

最上質の肉にするためには、特別の飼料や飼育方法を用い、天然の植物性飼料で育てる。クーネオから15㎞ほどのモロッツォでは、スローフードの指定食材でもある“ビオンダ・ピエモンテーゼ”と呼ばれる国産鶏を飼育している。モロッツォではクリスマス前の月曜日にカッポーネの大きな品評会が開かれる。それに合わせて最高の上程になるように飼育される。復活祭の時期に産み付けられた卵が孵化して生まれた雄鶏を選別して、生後二日で性別を判断し、20日後、局所麻酔を施して痛みを与えない方法で去勢される。鶏舎はオープンエアで動き回れる十分な広さがあり、餌は穀物のみ。抗生物質も投与しない。虫も昆虫も地元で手に入るものだけ。放し飼いで自然に太らせて12月には成熟する。地元の経済を支える貴重な産物だ。

カッポーネ・ディ・モロッツォ。

2025年のモロッツォの鶏の優勝カップル。

 ただコストがかかる鶏の飼育は生産性が低く、産業化が進む時代に合わず、田舎の伝統は消えつつある。
昔からこの地方の農家では、クリスマスに去勢鶏を売ってプレゼントや子供のための新しい洋服を買った。

最後にもう一つ、さんざん鶏の話をしといてなんですが、クリスマスはキリスト教の祝日。そしてキリスト教ではクリスマスイブは、肉を断ち、野菜と魚を食べる“マーグロ”な日、なんですねー。だから、イブのチェーナ、イタリア語では cena della vigiliaの主役は魚なんでした。マーグロの日の魚の代表はバッカラ。

イブのバッカラのフリッテッレ。

ローマのクリスマスイブのメニュー。

ナポリのイブ。

イブのチェーナ。

イブの翌日は、本番、クリスマスのディナー。普段離れ離れになっている家族が集まる特別な日。この日だけは、チェーナcenaじゃなくて、チェノーネcenoneと呼びます。前日のメニューとは別に、お母さんは、とびきりゴージャスな食材を使って、家族の伝統も受け継いだ大作を作ります。まじリスペクト。

バーリのクリスマスのチェノーネ。

クリスマスの食材の代表は、キャビア、牡蠣、フォアグラなど。

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2025年12月23日火曜日

イタリアでクリスマスのチキンと言えば、去勢鶏。正統派は七面鳥。

クリスマスが近づくと、チキン界隈が賑わいだすのが日本。イタリアや世界ではクリスマスの正統派のチェーナの主役は七面鳥です。正確に言うと、七面鳥と鶏です。ただし、イタリアの場合、鶏と言っても普通の鶏じゃありません。去勢鶏、カッポーネです。カッポーネはイタリアのクリスマスを象徴する食材ですが、そうなるまでには長い歴史がありました。いったいどんなものなんでしょうねー。

詰め物入り七面鳥のオーブン焼き。

クリスマスの七面鳥のロースト。

七面鳥の飼育。

クリスマスのカッポーネ。

去勢鶏という意味のイタリア語、カッポーネcapponeはギリシャ語で「切る」という意味の“koptein”が語源。ストレートすぎてちょっと怖い。

 鶏の先祖は、ジャングルに棲む赤い鳥でした。インドで家畜化されましたが、当初は卵が目的で雄鶏は食用ではありませんでした。ギリシャに最初に伝わった雄鶏も闘鶏用。ローマでは鶏を敬って異教の儀式に用い、やがて上流階級の料理に使うようになります。

 紀元前161年に、ローマでは町が汚れるから路上で雄鶏を飼ってはいけない、という法律ができました。そこで市民は裏をかいて、雌鶏を飼うようになります。雄鶏は雄同士で喧嘩をするので大量に飼うのは大変ですが、去勢をすればおとなしくなります。鶏の去勢はギリシャでは紀元前7世紀にはすでに行われていました。アリストテレスによると、当時の鶏の去勢はひなの精巣に焼き鏝を当てて行うもので、さらに蹴爪、とさか、睾丸も取り除きました。
 去勢された鶏は大きく育ち、生後8か月で約7㎏になります。肉は白くてとても柔らか。去勢鶏と卵を産まなくなった雌鶏は、中世、特にルネサンス時代の宴会の花形でした。小麦で飾った去勢鶏は永遠の命の象徴とされ、金箔で覆うこともありました。一方雄鶏はブロードや詰め物になって活躍しました。
 ところがここで登場するのが七面鳥です。中央アメリカ原産の七面鳥は、1520年にコルテスのメキシコ宮廷にいた神父たちがヨーロッパに持ち込みます。王族の間でもたちまち人気が出て、フランスでは1570年にシャルル9世飼育場を増やすように命令し、その30年後にはフランソワ4世がマリア・デ・メディチとの結婚披露宴で七面鳥を出すように要望しています。
ここで話はちょっと変わって若鶏のこと。
若鶏は最低90日齢、約4週間のオスの鶏。その歴史はとても古く、5千年もの間、食料としてよりシンボルとしての役割を担ってきました。インドの平野ではこの誇り高い鶏は闘鶏用として広まり、バビロニア、エジプト、ギリシャ、ローマでは儀式の主役になりました。横道にそれましたが、若鶏にも面白い歴史がありました。詳細は次回。

雄鶏の飼育。

カッポーネ。ピエモンテのクリスマスの伝統食材。

雄鶏と雌鶏という言葉をこんなにたくさん書いたのは初めて。書き間違えると意味が違っちゃうので気を使いました。

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2025年12月22日月曜日

貴族のワインから中産階級のワインとなっていったボルドーワイン。その人気は世界中に広まり、20世紀後半には新ボルドーが誕生する。

20年前のガンベロ・ロッソの2007年3月号の記事,『ワインと階級』を読み直しています。毎年ワインの格付け本を発売しているだけあって、ガンベロ・ロッソのワインの記事はガチで面白いです。

 記事によると、最初のワインは農民のワインでした。元祖と見なされているのはブルゴーニュ地方のワイン。すぐ後に、貴族のワインも生まれる。貴族は自分たちで味わうためにワインを造った。最高のものは自分たちのために取っておいた。農民は良いものを売って残り物を飲んだ。その代表的な存在が、18世紀のボルドー。ボルドーワインは、イギリスの中産階級という新しい市場を獲得する。

 ボルドーは貴族のワインから中産階級のワインになった。貴族の立場からすれば、中産階級にワインを提供するのには抵抗がある。しかし、時代は変わっていく。それと共にワインも変化する。流行が生まれ、批評家が登場し、試飲の技術が定義され、ワインを分類するシステムが作られた。これらはすべて、イギリスの中産階級がボルドーワインを飲むために考え出したことだった。この状況は、世界のワイン生産者にインスピレーションを与え、ボルドーワインをベースにした中産階級のワインは徐々に広まっていった。

ボルドーのワインを有名にしたものは?

 そして20世紀後半には、新ボルドーが誕生する。カリフォルニアワインやイタリアのスーパータスカンがそうだ。それまで農民のワインや貴族のワインは地元だけで消費されていた。ところがこの中産階級のワインの登場によって、高級ワインの消費範囲が一気に拡大した。

スーパータスカン。

 中産階級のワインには、土地や伝統との強い結びつきはない。イタリアではティニャネッロ、ガヤ、ビオンディ・サンティ、ベルタ―二、サンドロ―ネ、カベルネ・ソーヴィ二オンを使ったスーパータスカンなどがこのタイプに属する。農民のワインの造り手が、中産階級のワイン造りを始めると必ず議論が巻き起こる。その一方で、批評家たちは完璧にボルドー贔屓だ。それは彼らの判断基準が新ボルドーのワイン理論をベースにしていることからと考えることもできる。

テロワールとは。


 ワインが次に迎えたのは工場生産の時代だ。ここに至って、伝統と土地との結びつきは完全に消える。世界中の少しでも多くの消費者に販売するのがこのワインの目的だ。基本的には、工場生産のワインは、オーストラリアやチリと言った新世界や、アメリカのカリフォルニアで生まれた。ギャロワイナリーは年間10億本のワインを生産しているが、これはアメリカのワイン総生産量の25%に相当する。イエローテールシリーズで知られるオーストラリアのカセラ・ワインズは、2001年創業だが、わずか数年で年間2億3千万本を製造するまでになった。

ギャッロ・ワイナリー。語るのはビジネスの話。

オールド世界と新世界ワインの違いは。

カリフォルニアワインの歴史。

 小さな作り手にとって巨大企業は脅威だが、イタリアでは小規模生産者の協同組合が大企業のベースラインを担当するという協調路線が機能している。世界市場で販売されるノヴェッロやスプマンテはこのケースが多い。代表的な企業は、ドゥーカ・ディ・サラパルータ、サンタ・マルゲリータ、アンティノーリなど。

ノヴェロワイン。

シチリアのドゥーカ・ディ・サラパルータ。

サンタ・マルゲリータのワイン。

トスカーナのアンティノーリ。

今までワインを飲む時に階級のことなんて考えたことなかったけど、気が付けば旧世界のワインにどっぷり浸ってるじゃん。貴族のワインは憧れるけど、触れる機会がない。私、どうしようもなく庶民。

今日の話は(CIR2023年7月号)の記事、“プーリアのグルメガイド”のビジュアル解説が元です。記事の日本語訳と写真はP.16~。
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2025年12月20日土曜日

イタリアワインの歴史を“ワインと階級”をキーワードで読み解く。農民のワイン、貴族のワイン、中産階級のワインはその誕生の背景からして全然違う。

(CIR/クチーナ・イタリアーナ・レジョナーレ)は、昔は「統合解説」という名前でした。多くのイタリア料理雑誌を訳していたので、こんな変な名前になってしまいましたが、長い年月を経て、取り扱い雑誌が変わるなどの変化もあり、結局、イタリアの地方料理に特化しした内容にすると決めて、名前も(CIR)に変えました。そして偶然見つけた2007年3月号の『ガンベロ・ロッソ』の記事、“ワインと階級”。『ガンベロ・ロッソ』はイタリアワインの格付け本を出すなど、イタリアの料理雑誌の中でも、飲食業界の情報がとても詳しい雑誌です。記事の内容もとても専門的で、料理よりワインに中心を置いていました。今回は、その記事の一つを紹介しています。
ガンベロ・ロッソのイタリアワインの格付け本、『ヴィ―ニ・ディタリア』のトレ・ビッキエーリの発表会。

“ワインと階級”というその記事は、イタリアワインの歴史にも触れた興味深い内容でした。イタリア目線で語っていますが、ヨーロッパワインの入門の知識も詰まってました。ここでざっと紹介します。

まず、最初のワインは農民のワインだった。畑を持つ農民は皆、地元のぶどうを育ててワインを造っていました。ルーツはフランスのブルゴーニュ地方。それがやがてイタリアやドイツへと広まっていきます。

ブルゴーニュ。

農民のワインのすぐ後に、貴族のワインも生まれた。農民と違って、貴族は自分たちで味わうためにワインを造った。売るのは必要な時だけで、しかも、しばしば最高のものは自分たちのために取っておいた。良いものを売って残り物を飲んだ農民とは正反対だ。しかし、彼らのワインも土地と強く結びついていた。自分たちの土地のぶどうを使い、最初は地元の品種を栽培していた。

最初の革命は、農民が畑を持つようになって起こりる。農民のワインは土地と強く結びつき、伝統的なぶどう品種と醸造技術を用いているのが特徴。ぶどうの出来は気候に左右され、農民の立場はもろく、リスクも大きかった。ワインの値段は流通業者によって決められた。1960年代まで、イタリアのほぼすべてのワインはこのようなワインだった。

 そこに徐々に変化が訪れる。中でもランゲのバローロ地区では、1900年代初めから、優れた作り手たち登場した。マッシャレッリ、ピーラ、コンテルノ、リナルディといったカンティーナが農民たちのエリートだった。さらにアメリが人がバローロボーイズと呼んだ新しい造り手たちが、地元の流通業者の手を離れて、自由な道を模索し始めた。エリオ・アルターレ、ドメニコ・クレリコ、レナート・チッリア―ティ、ロベルト・ヴォエルツィオといった人たちだ。ランゲ地方以外では、ヴァレンティーニ、クラヴネル、クインタレッリ、エウジェニオ・ロ―ジなどの造り手がいる。

ランゲ地方のバローロの村々。


バローロのベースのワイン、ネッビオーロ。



 ワインの流通業者が大きな力を持っていたんですね。考えたことなかったけど、商品を遠くに運ぶために、最適の容器が考え出され、瓶詰め業者が誕生し、鉄道が敷かれと、地方の産業も地方自体も発展していったのでしょう。
 そんな農民のワインに対して、自分で飲むために創る貴族のワインは、まったく別の社会を構築していきます。

ボルドーは貴族のワインから中産階級のワインになった。貴族の立場からすれば、中産階級にワインを提供するのには抵抗があることだった。しかし、時代は変わっていく。それと共にワインも変化する。

 ヨーロッパの地中海諸国には必ず貴族のワインが存在する。イタリアはシチリアやトスカーナ、スペインはリオハ。そしてその代表的な存在が、18世紀のボルドーだ。
農民のワインの元祖、ブルゴーニュのワインとは、成り立ちからして違うワイン。
ボルドーワインはその後、イギリスの中産階級という新しい市場を獲得する。

ボルドー。





映画『世界一美しいボルドーの秘密』予告編。



中産階級のワインの登場だ。
中産階級(ブルジョワジー)という言葉にはあまり良いイメージがない。この階級は、スノッブと形容されることが多いが、スノッブとは、実は「ノーブル(高貴)さがない」という意味だ。つまり貴族ではないのに貴族のように振舞うことを意味する。中産階級のワインとは、中産階級が造るワインではなく、中産階級のためのワインのことで、造り手は農民や貴族だった。

 最初のワイン、農民のワインは日々の糧を得るためのもの。すぐ後に生まれた貴族のワインは、自分たちで味わうためのもの。農民は良いものを売って残り物を飲んだ。
そして中産階級のワインは、なんと中産階級が造るワインではなく、中産階級のためのワインのこと。生産者と消費者の関係まで変わっていく。

 現在でも貴族のワインは存在する。イタリアではサッシカイア、ダルチェオ、サン・レオナルド、タスカ・ダルメリータ、テヌータ・ディ・カッペッツァ―ナなどがこれにあたる。これらのワインはカベルネ・ソーヴィ二オンを使うなどボルドーの影響が強く感じられる。“インターナショナルな品種”と呼ばれるぶどの分類は、こういった貴族のワインから誕生した。

ワインと階級の話、次回に続きます。
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2025年12月19日金曜日

農民のワインの歴史、そのルーツはブルゴーニュ。

プーリアのロゼワインを調べていて、ワインの流行の変化には社会の大きな変化が強く関わっていることを知りました。ロゼワインが流行した背景には、プーリアのぶどう農家の主流だったブレンド用ぶどうの栽培から、ボトル詰め用ワインへと、社会のワインの需要が大きく変わる時代の背景がありました。これにより、プーリアの農家は大きな変化を求められました。その結果生まれたのが、当時のプーリアのロゼワインのブームだったのです。
実は昔の(CIR)、旧総合解説を調べるうちに、2007年のガンベロ・ロッソ3月号に、“ワインと階級”というとても興味深い記事があったのを見つけました。記事のサブタイトルには、“ワインを階級で分類すると、ワインの歴史が見えてくる“、とあります。
その記事は、
「最初のワインは農民のワインだった。かつて地中海でぶどう畑を持つ農民は、みんなワインを造った」という文章で始まります。20年近く昔の記事ですが、懐かしさもあって読んでみると、とても面白かったので、その記事を紹介します。

記事はこう続きます。
「上質な“農民のワイン”」の元祖とみなされているブルゴーニュ地方には、有名な修道院がいくつかある。そこでは修道士たちが書き記した手書きの本によって、ワイン造りの知識が蓄積されていった。また18世紀末から19世紀半ばにかけて、起こった革命は、多くの農民に畑を所有する機会をもたらした。

ブルゴーニュ。


地中海のワイン。

8000年前のワインのアンフォラが発見され、ワイン誕生の地と見なされているジョージアの遺跡。

ぶどうの汁を発酵させただけではなく、それを容器に詰めて遠くに運び、交易品にすることによってワインは生まれました。ジョージアにはキリスト教が伝わっていました。ワインはギリシャの植民都市に広まり、神話の世界にも取り入れられていきます。ギリシャ人はキリスト教徒のワインの知識に、さらに新しい知識を加えました。
ワインが人間の歴史と関わる時、それは決して偶然ではなく、当然の結果と言えるような必然性がありました。

ギリシャのワイン。


 ブルゴーニュの農民は、自分たちの畑で昔から育てていたぶどうを使ってワインを造った。赤はピノ・ノワールとガメイ、白はシャルドネとアリゴテだ。樽はオークの小樽を使ったが、それは木の香りをつけるためではなく、大樽では大きすぎたからだった。
農民が作る近代ワインは、ブルゴーニュからフランスの他の地域に広まり、やがてイタリアのランゲやドイツのモーゼルへと伝わっていった。

ランゲのワイン。


農民のワインは土地と強く結びつき、伝統的なぶどう品種と醸造技術を用いているのが特徴。ぶどうの出来は気候に左右されるため、農民の立場はもろく、リスクも大きかった。ワインの値段はは流通業者によって決められた。1960年代まで、イタリアのほぼすべてのワインはこのようなワインだった。それ以降、徐々に変化が訪れる。中でもランゲのバローロ地区では1900年代初めから、優れた造り手たちが登場した。
ブルゴーニュから続くイタリアのワインの歴史は次回。

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