2025年12月23日火曜日

イタリアでクリスマスのチキンと言えば、去勢鶏。正統派は七面鳥。

クリスマスが近づくと、チキン界隈が賑わいだすのが日本。イタリアや世界ではクリスマスの正統派のチェーナの主役は七面鳥です。正確に言うと、七面鳥と鶏です。ただし、イタリアの場合、鶏と言っても普通の鶏じゃありません。去勢鶏、カッポーネです。カッポーネはイタリアのクリスマスを象徴する食材ですが、そうなるまでには長い歴史がありました。いったいどんなものなんでしょうねー。

詰め物入り七面鳥のオーブン焼き。

クリスマスの七面鳥のロースト。

七面鳥の飼育。

クリスマスのカッポーネ。

去勢鶏という意味のイタリア語、カッポーネcapponeはギリシャ語で「切る」という意味の“koptein”が語源。ストレートすぎてちょっと怖い。

 鶏の先祖は、ジャングルに棲む赤い鳥でした。インドで家畜化されましたが、当初は卵が目的で雄鶏は食用ではありませんでした。ギリシャに最初に伝わった雄鶏も闘鶏用。ローマでは鶏を敬って異教の儀式に用い、やがて上流階級の料理に使うようになります。

 紀元前161年に、ローマでは町が汚れるから路上で雄鶏を飼ってはいけない、という法律ができました。そこで市民は裏をかいて、雌鶏を飼うようになります。雄鶏は雄同士で喧嘩をするので大量に飼うのは大変ですが、去勢をすればおとなしくなります。鶏の去勢はギリシャでは紀元前7世紀にはすでに行われていました。アリストテレスによると、当時の鶏の去勢はひなの精巣に焼き鏝を当てて行うもので、さらに蹴爪、とさか、睾丸も取り除きました。
 去勢された鶏は大きく育ち、生後8か月で約7㎏になります。肉は白くてとても柔らか。去勢鶏と卵を産まなくなった雌鶏は、中世、特にルネサンス時代の宴会の花形でした。小麦で飾った去勢鶏は永遠の命の象徴とされ、金箔で覆うこともありました。一方雄鶏はブロードや詰め物になって活躍しました。
 ところがここで登場するのが七面鳥です。中央アメリカ原産の七面鳥は、1520年にコルテスのメキシコ宮廷にいた神父たちがヨーロッパに持ち込みます。王族の間でもたちまち人気が出て、フランスでは1570年にシャルル9世飼育場を増やすように命令し、その30年後にはフランソワ4世がマリア・デ・メディチとの結婚披露宴で七面鳥を出すように要望しています。
ここで話はちょっと変わって若鶏のこと。
若鶏は最低90日齢、約4週間のオスの鶏。その歴史はとても古く、5千年もの間、食料としてよりシンボルとしての役割を担ってきました。インドの平野ではこの誇り高い鶏は闘鶏用として広まり、バビロニア、エジプト、ギリシャ、ローマでは儀式の主役になりました。横道にそれましたが、若鶏にも面白い歴史がありました。詳細は次回。

雄鶏の飼育。

カッポーネ。ピエモンテのクリスマスの伝統食材。

雄鶏と雌鶏という言葉をこんなにたくさん書いたのは初めて。書き間違えると意味が違っちゃうので気を使いました。

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2025年12月22日月曜日

貴族のワインから中産階級のワインとなっていったボルドーワイン。その人気は世界中に広まり、20世紀後半には新ボルドーが誕生する。

20年前のガンベロ・ロッソの2007年3月号の記事,『ワインと階級』を読み直しています。毎年ワインの格付け本を発売しているだけあって、ガンベロ・ロッソのワインの記事はガチで面白いです。

 記事によると、最初のワインは農民のワインでした。元祖と見なされているのはブルゴーニュ地方のワイン。すぐ後に、貴族のワインも生まれる。貴族は自分たちで味わうためにワインを造った。最高のものは自分たちのために取っておいた。農民は良いものを売って残り物を飲んだ。その代表的な存在が、18世紀のボルドー。ボルドーワインは、イギリスの中産階級という新しい市場を獲得する。

 ボルドーは貴族のワインから中産階級のワインになった。貴族の立場からすれば、中産階級にワインを提供するのには抵抗がある。しかし、時代は変わっていく。それと共にワインも変化する。流行が生まれ、批評家が登場し、試飲の技術が定義され、ワインを分類するシステムが作られた。これらはすべて、イギリスの中産階級がボルドーワインを飲むために考え出したことだった。この状況は、世界のワイン生産者にインスピレーションを与え、ボルドーワインをベースにした中産階級のワインは徐々に広まっていった。

ボルドーのワインを有名にしたものは?

 そして20世紀後半には、新ボルドーが誕生する。カリフォルニアワインやイタリアのスーパータスカンがそうだ。それまで農民のワインや貴族のワインは地元だけで消費されていた。ところがこの中産階級のワインの登場によって、高級ワインの消費範囲が一気に拡大した。

スーパータスカン。

 中産階級のワインには、土地や伝統との強い結びつきはない。イタリアではティニャネッロ、ガヤ、ビオンディ・サンティ、ベルタ―二、サンドロ―ネ、カベルネ・ソーヴィ二オンを使ったスーパータスカンなどがこのタイプに属する。農民のワインの造り手が、中産階級のワイン造りを始めると必ず議論が巻き起こる。その一方で、批評家たちは完璧にボルドー贔屓だ。それは彼らの判断基準が新ボルドーのワイン理論をベースにしていることからと考えることもできる。

テロワールとは。


 ワインが次に迎えたのは工場生産の時代だ。ここに至って、伝統と土地との結びつきは完全に消える。世界中の少しでも多くの消費者に販売するのがこのワインの目的だ。基本的には、工場生産のワインは、オーストラリアやチリと言った新世界や、アメリカのカリフォルニアで生まれた。ギャロワイナリーは年間10億本のワインを生産しているが、これはアメリカのワイン総生産量の25%に相当する。イエローテールシリーズで知られるオーストラリアのカセラ・ワインズは、2001年創業だが、わずか数年で年間2億3千万本を製造するまでになった。

ギャッロ・ワイナリー。語るのはビジネスの話。

オールド世界と新世界ワインの違いは。

カリフォルニアワインの歴史。

 小さな作り手にとって巨大企業は脅威だが、イタリアでは小規模生産者の協同組合が大企業のベースラインを担当するという協調路線が機能している。世界市場で販売されるノヴェッロやスプマンテはこのケースが多い。代表的な企業は、ドゥーカ・ディ・サラパルータ、サンタ・マルゲリータ、アンティノーリなど。

ノヴェロワイン。

シチリアのドゥーカ・ディ・サラパルータ。

サンタ・マルゲリータのワイン。

トスカーナのアンティノーリ。

今までワインを飲む時に階級のことなんて考えたことなかったけど、気が付けば旧世界のワインにどっぷり浸ってるじゃん。貴族のワインは憧れるけど、触れる機会がない。私、どうしようもなく庶民。

今日の話は(CIR2023年7月号)の記事、“プーリアのグルメガイド”のビジュアル解説が元です。記事の日本語訳と写真はP.16~。
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2025年12月20日土曜日

イタリアワインの歴史を“ワインと階級”をキーワードで読み解く。農民のワイン、貴族のワイン、中産階級のワインはその誕生の背景からして全然違う。

(CIR/クチーナ・イタリアーナ・レジョナーレ)は、昔は「統合解説」という名前でした。多くのイタリア料理雑誌を訳していたので、こんな変な名前になってしまいましたが、長い年月を経て、取り扱い雑誌が変わるなどの変化もあり、結局、イタリアの地方料理に特化しした内容にすると決めて、名前も(CIR)に変えました。そして偶然見つけた2007年3月号の『ガンベロ・ロッソ』の記事、“ワインと階級”。『ガンベロ・ロッソ』はイタリアワインの格付け本を出すなど、イタリアの料理雑誌の中でも、飲食業界の情報がとても詳しい雑誌です。記事の内容もとても専門的で、料理よりワインに中心を置いていました。今回は、その記事の一つを紹介しています。
ガンベロ・ロッソのイタリアワインの格付け本、『ヴィ―ニ・ディタリア』のトレ・ビッキエーリの発表会。

“ワインと階級”というその記事は、イタリアワインの歴史にも触れた興味深い内容でした。イタリア目線で語っていますが、ヨーロッパワインの入門の知識も詰まってました。ここでざっと紹介します。

まず、最初のワインは農民のワインだった。畑を持つ農民は皆、地元のぶどうを育ててワインを造っていました。ルーツはフランスのブルゴーニュ地方。それがやがてイタリアやドイツへと広まっていきます。

ブルゴーニュ。

農民のワインのすぐ後に、貴族のワインも生まれた。農民と違って、貴族は自分たちで味わうためにワインを造った。売るのは必要な時だけで、しかも、しばしば最高のものは自分たちのために取っておいた。良いものを売って残り物を飲んだ農民とは正反対だ。しかし、彼らのワインも土地と強く結びついていた。自分たちの土地のぶどうを使い、最初は地元の品種を栽培していた。

最初の革命は、農民が畑を持つようになって起こりる。農民のワインは土地と強く結びつき、伝統的なぶどう品種と醸造技術を用いているのが特徴。ぶどうの出来は気候に左右され、農民の立場はもろく、リスクも大きかった。ワインの値段は流通業者によって決められた。1960年代まで、イタリアのほぼすべてのワインはこのようなワインだった。

 そこに徐々に変化が訪れる。中でもランゲのバローロ地区では、1900年代初めから、優れた作り手たち登場した。マッシャレッリ、ピーラ、コンテルノ、リナルディといったカンティーナが農民たちのエリートだった。さらにアメリが人がバローロボーイズと呼んだ新しい造り手たちが、地元の流通業者の手を離れて、自由な道を模索し始めた。エリオ・アルターレ、ドメニコ・クレリコ、レナート・チッリア―ティ、ロベルト・ヴォエルツィオといった人たちだ。ランゲ地方以外では、ヴァレンティーニ、クラヴネル、クインタレッリ、エウジェニオ・ロ―ジなどの造り手がいる。

ランゲ地方のバローロの村々。


バローロのベースのワイン、ネッビオーロ。



 ワインの流通業者が大きな力を持っていたんですね。考えたことなかったけど、商品を遠くに運ぶために、最適の容器が考え出され、瓶詰め業者が誕生し、鉄道が敷かれと、地方の産業も地方自体も発展していったのでしょう。
 そんな農民のワインに対して、自分で飲むために創る貴族のワインは、まったく別の社会を構築していきます。

ボルドーは貴族のワインから中産階級のワインになった。貴族の立場からすれば、中産階級にワインを提供するのには抵抗があることだった。しかし、時代は変わっていく。それと共にワインも変化する。

 ヨーロッパの地中海諸国には必ず貴族のワインが存在する。イタリアはシチリアやトスカーナ、スペインはリオハ。そしてその代表的な存在が、18世紀のボルドーだ。
農民のワインの元祖、ブルゴーニュのワインとは、成り立ちからして違うワイン。
ボルドーワインはその後、イギリスの中産階級という新しい市場を獲得する。

ボルドー。





映画『世界一美しいボルドーの秘密』予告編。



中産階級のワインの登場だ。
中産階級(ブルジョワジー)という言葉にはあまり良いイメージがない。この階級は、スノッブと形容されることが多いが、スノッブとは、実は「ノーブル(高貴)さがない」という意味だ。つまり貴族ではないのに貴族のように振舞うことを意味する。中産階級のワインとは、中産階級が造るワインではなく、中産階級のためのワインのことで、造り手は農民や貴族だった。

 最初のワイン、農民のワインは日々の糧を得るためのもの。すぐ後に生まれた貴族のワインは、自分たちで味わうためのもの。農民は良いものを売って残り物を飲んだ。
そして中産階級のワインは、なんと中産階級が造るワインではなく、中産階級のためのワインのこと。生産者と消費者の関係まで変わっていく。

 現在でも貴族のワインは存在する。イタリアではサッシカイア、ダルチェオ、サン・レオナルド、タスカ・ダルメリータ、テヌータ・ディ・カッペッツァ―ナなどがこれにあたる。これらのワインはカベルネ・ソーヴィ二オンを使うなどボルドーの影響が強く感じられる。“インターナショナルな品種”と呼ばれるぶどの分類は、こういった貴族のワインから誕生した。

ワインと階級の話、次回に続きます。
今日の話は(CIR2023年7月号)の記事、“プーリアのグルメガイド”のビジュアル解説です。記事の日本語訳と写真はP.16~。
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2025年12月19日金曜日

農民のワインの歴史、そのルーツはブルゴーニュ。

プーリアのロゼワインを調べていて、ワインの流行の変化には社会の大きな変化が強く関わっていることを知りました。ロゼワインが流行した背景には、プーリアのぶどう農家の主流だったブレンド用ぶどうの栽培から、ボトル詰め用ワインへと、社会のワインの需要が大きく変わる時代の背景がありました。これにより、プーリアの農家は大きな変化を求められました。その結果生まれたのが、当時のプーリアのロゼワインのブームだったのです。
実は昔の(CIR)、旧総合解説を調べるうちに、2007年のガンベロ・ロッソ3月号に、“ワインと階級”というとても興味深い記事があったのを見つけました。記事のサブタイトルには、“ワインを階級で分類すると、ワインの歴史が見えてくる“、とあります。
その記事は、
「最初のワインは農民のワインだった。かつて地中海でぶどう畑を持つ農民は、みんなワインを造った」という文章で始まります。20年近く昔の記事ですが、懐かしさもあって読んでみると、とても面白かったので、その記事を紹介します。

記事はこう続きます。
「上質な“農民のワイン”」の元祖とみなされているブルゴーニュ地方には、有名な修道院がいくつかある。そこでは修道士たちが書き記した手書きの本によって、ワイン造りの知識が蓄積されていった。また18世紀末から19世紀半ばにかけて、起こった革命は、多くの農民に畑を所有する機会をもたらした。

ブルゴーニュ。


地中海のワイン。

8000年前のワインのアンフォラが発見され、ワイン誕生の地と見なされているジョージアの遺跡。

ぶどうの汁を発酵させただけではなく、それを容器に詰めて遠くに運び、交易品にすることによってワインは生まれました。ジョージアにはキリスト教が伝わっていました。ワインはギリシャの植民都市に広まり、神話の世界にも取り入れられていきます。ギリシャ人はキリスト教徒のワインの知識に、さらに新しい知識を加えました。
ワインが人間の歴史と関わる時、それは決して偶然ではなく、当然の結果と言えるような必然性がありました。

ギリシャのワイン。


 ブルゴーニュの農民は、自分たちの畑で昔から育てていたぶどうを使ってワインを造った。赤はピノ・ノワールとガメイ、白はシャルドネとアリゴテだ。樽はオークの小樽を使ったが、それは木の香りをつけるためではなく、大樽では大きすぎたからだった。
農民が作る近代ワインは、ブルゴーニュからフランスの他の地域に広まり、やがてイタリアのランゲやドイツのモーゼルへと伝わっていった。

ランゲのワイン。


農民のワインは土地と強く結びつき、伝統的なぶどう品種と醸造技術を用いているのが特徴。ぶどうの出来は気候に左右されるため、農民の立場はもろく、リスクも大きかった。ワインの値段はは流通業者によって決められた。1960年代まで、イタリアのほぼすべてのワインはこのようなワインだった。それ以降、徐々に変化が訪れる。中でもランゲのバローロ地区では1900年代初めから、優れた造り手たちが登場した。
ブルゴーニュから続くイタリアのワインの歴史は次回。

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2025年12月18日木曜日

プーリアのロゼの中心地、サレント地方を代表するぶどう、ネグロアマーロ。

プーリアのロゼワインの話、今日のお題はネグロアマーロです。

サレントの王様、ネグロ・アマーロ。

サレント地方のネグロアマーロの収穫。

少し前まで、プーリアのワインはブレンド用のワインでした。ネグロ・アマーロは、主に北部やフランスのワインの色付けのために用いられていました。


サレント半島には、ターラント、プリンディジ、レッチェ県があり、農業が盛んな地方で、ぶどう栽培だけでなく、オリーブの栽培も盛ん。イタリアやヨーロッパでは珍しい生物多様性の地で、海に向かって下る地中海性気候の地域は、風が強く、冬と夏の気温差が大きくない。この地方ではプリミティーヴォが多く栽培されている。カリフォルニアではジンファンデルという名で普及している品種。最近ロゼの生産が増えた品種で、優しいボディーがある。
サレント地方は青空のイメージだが、夏は雨が多く蒸し暑く、冬は寒い。これらはネグロアマーロの栽培に適している。
このブドウは神話にも登場する。赤は刺激的で長命なワイン、ロゼは洗練された活力に満ちたワインになる。
ネグロアマーロの栽培の歴史は、少なくとも紀元前7世紀のギリシャの植民都市の時代までさかのぼる。ネグロとアマーロという名前の語源ははっきりしていないが、ギリシャ語で黒という意味の“mauros”とラテン語で黒という意味の“niger”ではないかという説が有力。
ギリシャ語とラテン語で黒という意味なんて、なんだか超カッコイイ。でも、どんだけ黒かったの、このぶどう。ただ、イタリア語でアマーロと言えば“苦い”という意味だけど、このぶどうに苦いという意味はない、とも考えられている。実際にはタンニンなどポリフェノールが豊かなネグロアマーロは、苦みもあるのが特徴。

ネグロアマーロ。

プリミティーヴォ。

ネグロアマーロはサレント地方のワイン農家にとっては毎日の収入源。毎週月曜の朝にレッチェのサント・オロンゾ広場にぶどうが集められ、それを貨物列車でフランスや北イタリアに運びます。

レッチェのサント・オロンゾ広場。
サント・オロンゾはレッチェの守護聖人。街の目立つ場所にあり、いつも学生や観光客などの見学者で一杯。隣には古代ローマの円形劇場があります。

古代ローマ人だけでなく、ネグロアマーロもここに集まってた。
市場がブレンド用ワインでなく、ボトル入りワインを望むようになると、多くの農家は助成金目当てでぶどう栽培をやめ、他の作物に転向してしまいます。そのためサレント地方のぶどう畑は半分以下に減少します。
そのような中で、サレントワインは復活し、プーリアワイン全体を活気づかせます。その中心となったのが、レオーネ・デ・カストリス、フランチェスコ・カンディド、コジモ・タウリーノなど。

フランチェスコ・カンディド。

さらに、グアリー二など旧貴族の新世代、北部から参入したカンテーレなども加わった。
彼らの情熱にあふれた粘り強い努力によって、ネグロアマーロは、プーリアのシンボルワインになった。ネグロアマーロ100%のものだけでなく、マルヴァジーア・ネラやプリミティーヴォ、モンテプルチャーノ、あるいは少量のカベルネ・ソーヴィ二オンを加えた香りのよいロゼもある。エレガントで重厚な赤もある。幅広い料理と合うワインで、サレント地方の料理との相性もよい。有名なロングパスタ、サーニェ・インカンヌテーラや子羊料理、などがお勧め。

サレントの産物。

サーニェ・インカンヌラ―テ。

カルネヴァリ・ネグロアマーロ/プリミティーヴォ。



ワインと時代の変化は強く結びついています。プーリアのロゼワインが一世を風靡した背景にも、歴史の変化があったんですね。
昔のガンベロ・ロッソの記事に、ワインと階級をテーマにした面白いものがありました。ちょっと横道の逸れるけど、次回はその話。

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2025年12月17日水曜日

イタリアで最初のボトル入りロゼワイン、レオーネ・デ・カストリスのファイブローゼスは波乱万丈の歴史のあるワイン。

プーリアのロゼワインの話。
イタリアのロゼワインの有名な産地は、アブルッツォ、アルト・アディジェ、トスカーナのボルゲリなどがありますが、プーリアのロゼが生まれたサレント地方は、海の間にある他に類を見ない特殊や地方。ぶどうをロゼワインにするというのは、気まぐれな流行に左右されない、最低200年に渡る習慣や文化と結びついています。
1940年代に、レオーネ・デ・カストリスがイタリアで最初のビン入りのロゼワイン、ファイブろローゼスを発表します。このワインはサレント半島の西海岸のレストランには必ず置いてあります・デ・カストリスはスペイン系の侯爵が1665年に始めたカンティーナが元。
第二次大戦時、連合軍のアメリカ人物資補給将校チャールズ・ポレッティ将軍がレオーネ・デ・カストリスのロゼワインを気に入り、それを瓶詰めするように依頼したことがきっかけで誕生します。1945年にアメリカに向けて最初に出荷されたのは、1943年のヴィンテージのリゼルヴァでした。アルコール度は14%程度。
物資補給将校の名前が21世紀まで伝わっているのもすごいけど、アメリカがイタリアに残した影響も大きかったんだなあ。ファイブ・ローゼスは、スペインの貴族とアメリカの軍人が生み出した傑作だったんですね~。
ワインを瓶詰めすることは、当時のイタリアではすごく大変なことでした。当時イタリアは北部をドイツ軍に占領されていて、ドイツ軍は強固な防衛線を張っていたため、北と南は分断状態にあったのです。ところが、ワインのボトルのメーカーは、すべてドイツ軍の占領地内にありました。レオーネ・デ・カストリスは。新しいボトルが手に入らない。そこで、地中海のひらめきとアメリカの実用主義を組み合わせたような解決策を生み出しました。ボトルのリサイクルです。集められたボトルは、ビール瓶を初めとする様々な飲み物のボトル12000本以上でした。この中に詰められたワインには、“ファイブ・ローゼス”というラベルが貼られました。
ワインの名前はぶどうがサリチェ・サレンティーノのチンクエ・ローゼという地区で造られているところからつけられました。デ・カストリス家では何代にもわたって5人の息子がいたことから、こう呼ばれていたそうです。英語にしたのは将校がアメリカでの流通を見込んで英語の名前を希望したためでした。
ファイブ・ローゼスはイタリアのロゼワインの代名詞になるほど有名になりました。最初は14%あったアルコール度は、現在は12.5%になっている。生産量は約30万本。ぶどうはネグロアマーロとマルヴァジア・ネラの素晴らしいミックス。

レオーネ・デ・カストリス。

レオーネ・デ・カストリスのカンティ―ナ・アペルテ。


レオーネ・デ・カストリスのファイブ・ローゼスは、澄んだ朱色、フルーティーな香り、ドライで滑らかな熱い味のワイン。

ネグロ・アマーロはサレント地方を代表するぶどう品種。
次回はこのぶどうの話。

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2025年12月16日火曜日

プーリアのロゼワイン。

(CIR)の記事から、プーリアの食文化の話。チーズ、パン、小麦の次はワインです。

プーリアのワイン。

プーリアのロゼワイン。

ひと昔前に、プーリアのロゼがブームになりました。
私がプーリアを訪れたのは、ちょうどこの頃。
普段日本のレストランでロゼワインなんて頼んだこともなかったのに、プーリアでロゼワインを飲んで、その美味しさにすっかりはまり、気づいたら、プーリア以外の場所でもロゼワインを飲むようになってました。
プーリアはイタリアのモダンなロゼの発祥地です。正確にはプーリアのサレント地方で生まれました。

サレント。


ロゼワインの色は、黒ぶどうの皮をモストに短期間浸漬することによって生まれます。浸漬時間は一般的には6~12時間ですが、2日間漬けることもあります。この作業によって色だけでなく、タンニンなどのポリフェノール成分もワインに加わります。その結果、白ワインのようにフレッシュでかつコクもあるワインができ上ります。ロゼは料理との組み合わせの幅も広く、特に夏の料理によく合います。

ロゼワイン。


プーリアのロゼワイン造りはギリシャ人によって始まりました。彼らは袋にぶどうを入れて潰し、“ラクリマツィオ―ネ(涙分泌)”と呼ばれる方法でモストと絞り粕を分離させました。
ロゼワインのブームはフランスから始まり、肉向きでも魚向きでもなく、なんにでも合うワインとして飲まれています。ロゼはフレッシュで飲みやすく、アルコール度の低いワインというイメージがありますが、これは主にアメリカや北ヨーロッパの市場の要求に応えるために作り出されたイメージ。一方、イタリア人がロゼに抱くのは、海辺のテラスで飲むアペリティーヴォというイメージでした。以前はロゼを勧めても見向きもされなかったのが、今ではロゼの品質に関心を持ち、赤に匹敵する組織があると考える人も増えています。
プーリアのロゼは酸味を考慮して作られているので、トマトがベースの料理によく合います。フリットにも合います。上質のランブルスコのように油を落とす効果もあるのです。
プーリアにはサレント・ロザートという、サレント半島の南側で生産されているロゼワインがある。レッチェ県を中心に様々なタイプが造られている。特徴は豊かな香りと味。
サレント半島は黒ぶどうのネグロアマーロの栽培が盛んで、様々な赤とロゼワインが造られている。

サレント半島の主要都市、レッチェ。美しさも美味しいものもある素晴らしい街。

プーリアのロゼの話、次回に続きます。

今日の話は(CIR2023年7月号)の記事、“プーリアのグルメガイド”のビジュアル解説です。記事の日本語訳と写真はP.16~。
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