今日はリチェッタ編。
前回は、イセエビのカタルーニャ風は、スペインのカタルーニャ風という名前でも、れっきとしたサルデーニャ料理、という話をしました。
サルデーニャのアルゲーロいう町は、リトルバルセロナ(バルセロナはカタルーニャの州都)とも呼ばれるほどカタルーニャとの結びつきが強い場所。
そんな訳で、サルデーニャでは、“カタルーニャ風”という名前は、実は“アルゲーロ風”、という意味でもあるわけです。
“アルゲーロ風”をイタリア語で言うと、「アッラルゲレーゼall'algherese」。
“カタルーニャ風”は、「アッラ・カタラーナalla catalana」。
同じ料理でも、アッラルゲレーゼよりアッラ・カタラーナのほうが言いやすいし、親しみが持てます。
イセエビのカタルーニャ風は、イセエビのアルゲーロ風という名前もあるのですが、イタリア国内はもとより世界中で受け入れられたのは、「アラゴスタ・アッラ・カタラーナ」、つまり「イセエビのカタルーニャ風」という名前でした。
料理もネーミングが大事なんですねえ。
そしてこの名前を定着させたのが、アルゲーロの有名レストランのシェフ、モレーノ・チェッキーニ氏、という訳です。
カタルーニャの料理ではなくアルゲーロの料理、という意味では、日本語では、“イセエビのカタルーニャ風”ではなく、“イセエビのカタラーナ”と呼ぶほうがより的確ですね。
イセエビのカタラーナには、大きく分けて2つのリチェッタがあります。
1つはチェッキーニ氏のものとして知られ、オリジナル版とも呼ばれるもの。
そしてもう1つは、トマトと玉ねぎ入り。
チェッキーニ版イセエビのカタラーナ
ARAGOSTA ALLA CATALANA di Moreno Cecchini - Ristorante La Lepanto, Alghero
こちらを訳しました。
材料:4人分 メスのイセエビ・・1kg オスのイセエビ・・1kg レモン・・3個 ピーナッツ油・・100g ビネガー・・大さじ2 塩、こしょう |
・イセエビをゆでて身を取出し、角切りにする。 ・オスのミソとメスの卵をボールに入れる。卵をフォークで潰し、塩、こしょう、レモン汁、油で調味してホイッパーでよく混ぜる。 ・ソースをイセエビにかけ、さらにビネガーを加えてよく混ぜる。 |
トマトと玉ねぎ入りのイセエビのカタラーナ
“リチェッテ・ディ・オステリーエ・ディ・イタリア”シリーズ:『ペッシェ』より、
Trattoria da Riccardo, Magomadas(Nuoro)のリチェッタです。
材料:2人分 イセエビ・・約500gのもの1尾 完熟トマト・・4個 白玉ねぎ・・1個 レモン汁・・1/2個分 ビネガー・・大さじ2 EVオリーブオイル 塩、こしょう |
・イセエビを熱湯で20分ゆでる。 ・その間に野菜を用意する。玉ねぎを薄切りにしてビネガーを加えた水にさらし、辛みを抜く。 ・トマトは種と水を取り除いて小さく切る。 ・イセエビがゆで上がったら縦に半分に切り、身を取り出して小さく切る。 ・イセエビ、玉ねぎ、トマトを混ぜる。 ・油、レモン汁、塩をホイップしてイセエビにかけ、よくあえる。30分冷やしてサーブする。 |
チェッキーニ氏は、トマト入りのほうはアッラ・カタラーナとは呼ばずに、「イセエビのトマトと玉ねぎ入り aragosta con pomodori e cipolle」と呼んで区別していたそうです。
今はどちらかというと、トマトと玉ねぎ入りのほうが一般的でしょうか。
その結果、シーフードにトマトと玉ねぎを加え、ヴィネグレットやシトロネットで和えた料理を「カタラーナ」と呼ぶバリエーションも生まれました。
“オマールエビのカタラーナ”や、『サーレ・エ・ペペ』で紹介している“ムール貝のカタルーニャ風”もその一例。
ムール貝のカタラーナは、一見シンプルなムール貝のサラダですが、元をたどれは、こんなに長い物語があるのでした!
↓たっぷりの野菜入りバージョンのイセエビのカタラーナ
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関連誌;『サーレ・エ・ペペ』2008年7月号
“ムール貝のカタルーニャ風”のリチェッタは、「総合解説」'08&'09年7月号に載っています。
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