イタリア料理ほんやく三昧: アルトゥージのリチェッタ

2008年6月25日水曜日

アルトゥージのリチェッタ

ペッレグリーノ・アルトゥージ、その3。

今日は、彼の著書、『La Scienza in cucina e l'Arte di Mangiar bene』の話です。





イタリア料理の本には、「アルトゥージによると・・・」という文章が頻繁に登場します。
これは、専門家、一般の人を問わず、多くのイタリア人が、この人物と本の存在を知っているからこそ通用する引用です。

実際、この本は、イタリアで一番売れている料理本なんだそうです。
19世紀末に書かれて以来、今だにイタリア人に愛され、読まれています。
これはつまり、この本の料理がイタリア人に受け入れられていることの証明ですよね。
20世紀初頭のイタリアの中産階級の料理(特にトスカーナとロマーニャ地方)の姿を伝える、もっとも信頼できる情報源、と認められているだけでなく、普通の人が、料理の本として彼の本を利用してきたわけです。

この本には、790ものリチェッタが載っています。
たとえば、「ロースト肉」の章には、38のリチェッタがあります。
ずらっと並べてみると・・・

ローストビーフ1
ローストビーフ2
牛肉のトリュフ風味
乳飲み子牛のロースト
乳飲み子牛の胸肉のオーブン焼き
鍋ロースト
鍋ローストのにんにくとローズマリー風味
小鳥のロースト
子羊のローストのアレティーナ風
去勢羊のもものロースト
野うさぎのロースト1
野うさぎのロースト2
うさぎのロースト
牛肉のラルデッラートの鍋ロースト
鳩のソルプレーザ
うずらのロースト
牛リブ肉の詰め物入りロースト
乳飲み子牛のコストレッタのミラノ風
鶏の詰め物入りロースト
去勢鶏のローストのトリュフ風味
鶏の悪魔風
鶏のポルケッタ
鶏のボローニャ風鍋ロースト
鶏のルディニー風
鶏のパイ包み
ホロホロ鳥のロースト
アヒルのロースト
ガチョウのロースト
七面鳥のロースト
クジャクのロースト
豚肉のミルクロースト
豚ロース肉のロースト
子羊のオリエント風
鳩のグリル
豚レバーのコンセルヴァ
ビステッカ・アッラ・フィオレンティーナ
ビステッカの鍋ロースト
リードヴォーのパリ風



「肉の煮物」の章はもっとも力が入っていて、なんと107点もあります。

ストラコット
フリカンドー
フリカッセーア
チブレオ
鶏のマレンゴ風
リヴォルノ風スカロッピーネ
ジェノヴァ風スカロッピーネ
etc.・・・。


リチェッタをどれか、訳してみましょうか。
どのリチェッタも、まず軽いうんちくから始まります。

鶏の悪魔風 POLLO AL DIAVOLO

 悪魔風という名前は、辛口のカイエンヌペッパーと極辛のサルサで調味するので、食べると口に火がついたようになり、鶏と料理人を悪魔の元に送りたい欲求に駆られるから。
 ここでは、もう少々シンプルで、キリスト教徒にふさわしいリチェッタを教えましょう。

ひな鶏1羽の首と足を切り落とし、胸側を開きます。
押してできるだけ平らに潰し、洗って水気をしっかりふき取ります。
これを網で焼きます。焼き色がつきだしたら裏返し、溶かしバターかオリーブオイルを刷毛で塗って塩、こしょうをします。
この側に焼き色がついたら裏返し、同じようにバターを塗って塩、こしょうをします。
バター、塩、こしょうを適度に繰り返しながら焼き上げます。

カイエンヌペッパーは赤い粉の状態で売られています。イギリス産で、ガラスの小びんに入っています。



ビステッカ・アッラ・フィオレンティーナ BISTECCA ALLA FIORENTINA

 英語で牛のリブを意味する“ビーフステーキ”が、イタリア語のビステッカの語源です。つまり、雌の子牛の背肉から切り取った、指1本から1本半の厚みがある骨付きリブステーキのこと。
 フィレンツェの肉屋では、約2歳の雌牛を“ヴィテッラ”と呼びます。でも、もし牛に話しができたら、ほとんどの牛が、私はもう女の子ではないし、夫と子供もいるんです、と言うに違いありません。

 ビステッカ・フィオレンティーナは、健康的で風味豊かで栄養のある素晴らしい料理ですが、まだイタリアでは普及していません。おそらくそれは、多くの地方で、屠殺するのは年老いた労働用の成牛だけだからでしょう。この場合、一番柔らかいヒレの部分の丸い切り身を網で焼いて、誤ってビステッカと呼んでいるのです。
 本物のビステッカ・フィオレンティーナは、燃える炭火にかけた網に、よく洗って水気をふき取った肉をのせて、何度か裏返しながら焼きます。焼き上がったら塩、こしょうをして、バターをのせてテーブルに運びます。
 肉は、切ると肉汁が皿にたっぷり流れ出るぐらいがおいしいので、焼きすぎてはいけません。
 焼く前に塩をすると、肉が火によって乾いてしまい、多くの人がよくやるようにオイルなどを焼く前にかけると、焦げて不快な匂いになります。



アルトゥージさんは、なかなかおもしろい人だったようですね。
リチェッタはとてもシンプルで、万人に受け入れられたのが分かる気がします。


そうそう、この本は、アルトゥージが生きている間(1891~1911)に、14版が出版されているのですが、アルトゥージの故郷、フォルリンポポリ市では、この14版のどれでも、買い取る用意があるそうですよ。
市立アルトゥージ図書館のコレクションに加えるためだそうです。
古本市を見かけたら、探してみるのも一興。



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関連誌;『サーレ&ぺぺ』2006年6月号(クレアパッソで販売中)
“アルトゥージのチェーナ”の日本語訳は、「総合解説」'06&'07年6月号、P.2に載っています。


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2 件のコメント:

くるり さんのコメント...

このところ時間があまりなくてちら見してただけですが、アルトゥージさんてレシピもさることながら、うんちくも文章もものすごく味がありますね。だから100年たっても古ぼけていないんでしょうが。すごい。こんなことをしることができるプレッツェーモロさんのブログもすごい!と改めて感心。

prezzemolo さんのコメント...

くるりさん
怒涛(笑)のコメント、ありがとうございまーす。とーっても励みになります!
アルトゥージの本、古くてとっつきにくそうなんですが、読んでみるとそうでもないんですよね。