2009年5月15日金曜日

ヴァッレ・アウリーナのグラウケーゼ

今日はチーズの話。
『ラ・クチーナ・イタリアーナ』の記事の解説です。

クレアパッソで現在配本中の『ラ・クチーナ・イタリアーナ』では、アウリーナ渓谷を紹介しています。

アウリーナ渓谷(ヴァッレ・アウリーナ)は、アルト・アディジェにあります。
もしイタリアの地図があったら、一番北の端を探してください。
そこがアウリーナ渓谷。
周囲は2,000~3,000m級の山に囲まれています。


こんな風景




山小屋ではこんな音楽が流れていたりして、チロルですねえ。


今回取り上げるのは、この地方の名物チーズ、グラウケーゼ Graukäse。
以前にもちょっと書いたことがあるので2度目の登場です。

こんなチーズ
またはこんな、あるいはこんなチーズ。

かなり変わったチーズですねえ。




スライスして玉ねぎの輪切りをのせて・・・
photo by Florian Seiffert (F*)


またはこうやって食べたり・・・

ねぎを散らしてオイルをかけることが多いんでしょうかね。


“グラウケーぜ”とは、ドイツ語で「灰色のチーズ」と言う意味。
イタリアだけでなく、オーストリアなどチロル地方の山間部で作られているチーズです。

それにしても独特ですねえ。
中身の白い部分はまるでカッテージチーズのようにフレッシュそうなのに、外側は硬そうで、粒々で緑色の筋が入っています。
灰色と呼ぶほど灰色には見えませんが・・・。

このチーズ、いわゆるサワーミルクチーズです。
つまり、凝乳酵素ではなく、酸によって固めるチーズ。
元々、貧しい農民は牛乳からバターを作ってそれを売り、自分たちは、残りの脂肪分がなくなったミルクが自然に固まってできたサワーミルクチーズを食べていたんだそうです。
だからグラウケーゼも、脂肪分が極端に少ないチーズです。
固形分中の脂肪分は2%以下。


現在のヴァッレ・アウリーナのグラウケーゼは、まず、牛乳から脂肪分を取り除き、凝固用の酸を加えて2日間置きます。
これをゆっくりと55度に熱し、布に取って吊るして水気を切ります。
30分ほど経ったら手で崩して塩を加え(こしょうを加えることもあります)、型に詰めます。
大きさは500gから7kgまで様々。
そして自然の湿度の中、約25度の部屋で2~3週間熟成させます。
中には、10日ほど経ったところでもっと低温の場所に移し、最高で12週間熟成させるものもあります。

グラウケーゼ作り

素朴な手作りが基本のグラウケーゼですが、最近では大手のメーカーが酵素を加えて作っているものもあるようで、ヴァッレ・アウリーナのあるボルツァーノ県では、伝統的な製法のグラウケーゼの保護も行っています。


さて、グラウケーゼの味ですが、酸からくる強烈な刺激のある香りで、苦味もあるんだそうです。
これっておいしいっていうことなんでしょうか?
チーズの美味しさの基準は複雑だからなあ。

こんなグラウケーゼの定番の食べ方は、玉ねぎの薄切りを少量添えて、油(最近ではオリーブオイル)とビネガーをかけるのだそうです。
ライ麦パンを添えてもOK。
なんだか全体的に、匂いが強くて酸っぱそうなものばかりですねえ。
でも、癖があるところがなんだか面白そう。

イタリアはチーズも色々ありますねえ。
アルト・アディジェに行ったら、ぜひグラウケーゼを味見して、どんな味だったか教えてくださーい。



-------------------------------------------------------

関連誌;『ラ・クチーナ・イタリアーナ』2007年1月号
“ヴァッレ・アウリーナ”の記事は、「総合解説」'07&'08年1月号、P.2に載っています。


[creapasso.comへ戻る]

=====================================

0 件のコメント:

バッカラはノルウェーとイタリアを結ぶ干物貿易の主役で、この航路は1450年作成の世界地図にも記載されるほど重要でした。

(CIR12月号)によると、ヴィチェンツァでは、この料理はCが1つなんだそうです。普通はバッカラはbaccalàでも、ヴィツェンツァでは、Cがひとつのバカラ。んなばかな、と思ったけど、地元のこの料理の専門家たちは、C一つで呼んでました。会の名前の刺繍もC一つ。リチェッタはP.11...