今日もシェフの話。
『ラ・クチーナ・イタリアーナ』の記事の解説です。
前回は、世界で一番有名なイタリア料理人で、イタリアで最初に3つ星になったシェフ、グアルティエーロ・マルケージ氏の話をしました。
今日は、マルケージ・チルドレンの一人、ダヴィデ・オルダーニ氏の話。
彼は、マルケージ氏の弟子の中でも現在もっとも注目されているシェフではないでしょうか。
ミラノ近郊のコルナレードという町で、『ドー』という店をやっています。
ミシュランで1つ星です。
なにがすごいかって、この店、1つ星なのに、ランチがプリーモ、セコンド、グラスワイン、コーヒーで11.5ユーロ、約1,600円という安さ!
予約が殺到する超人気店だというのもうなずけますねー。
店名の“ドー D'O”は、日本語で「剣の道」などという時の「道」が元になっているのだとか。
マルケージ時代、日本で仕事をした経験もあるそうだし、シェフの片腕は、10年来の付き合いという日本人、松本ヒデ氏。
店を紹介しているこちらのサイトの下のほうに、両氏の写真が。
店のロゴ
オルダーニ氏は、ミラノのマルケージ、ロンドンのアルベール・ルーのル・ガブロッシュ、モンテ・カルロのアラン・デュカスと、3つ星級の超一流店を渡り歩いた燦然と輝く経歴の持ち主。
ミラノのジャンニーノのシェフを務めた時は、わずか2年あまりでミシュランの星を1つ獲得しています。
そんな彼が自分の店を持つと言ったら、誰もが高級リストランテを想像しようというもの。
ところが、2003年に彼が始めた店は、なんとトラットリーア。
故郷の町で、トラットリーアを買い取って始めたのですが、リストランテにしなかった理由と言うのが、またかっこいい。
「以前の店の顧客を失いたくなかったから」
有能なシェフがトラットリーア。
このギャップが大きなポイントですねー。
無名の人がトラットリーアを始めたところで注目は浴びないけれど、高級料理のキャリアを積んだ人がトラットリーアを始めれば、それだけで、もうお得感満載。
しかも料理の味は、ミシュランの星で保証付き。
彼の店を訪れた人は口々に、料理と価格のバランスは文句のつけようがない、と言っています。
ちなみに、メニュー・デグスタツィオーネは、ワイン別で32ユーロ、約4,400円。
料理書を出版した時のオルダーニ氏のインタビューの動画。
ドーは、なぜ低価格で美味しい料理を提供することができるのか。
オルダーニ氏はきっと何度もこの質問を受けていることでしょう。
上の動画でも聞かれています。
彼の料理哲学は、彼の著書のタイトル、“クチーナ・ポップ”という言葉の中にあります。
“ポップ”とは、ポピュラー、大衆的という意味。
つまり、高級食材は使わない料理です。
大衆的な食材をどうやって美味しい料理にするのか。
まず、新鮮な旬の食材にこだわるというのは基本中の基本。
仕入先との信頼関係も大事。
料理技術に関しては、過去の高級店での経験が物を言います。
その時に学んだテクニックによって、地方料理につきもののこってりした脂肪分を徹底的に取り除いて、軽くて洗練された味にする。
さらに、彼の料理の味は「調和」と「コントラスト」がキーワード。
正反対の味覚を組み合わせることによって、食べる人のイマジネーションを刺激します。
『ラ・クチーナ・イタリアーナ』で紹介されている彼の料理は、実はどれも地味目な外見なのですが、彼の料理哲学を踏まえてリチェッタを見ると、なかなか深く考えられていることが分かります。
ここまでイタリア人をひきつけているのはどんな料理なのか、食べてみたい!、という気になる店です。
予約は数ヶ月前から必要なようです。
D'O
via Magenta 18, frazione S.Pietro all'Olmo, Cornaredo(MI)
Tel.02.9362209、davideoldani@tin.it
日曜と月曜定休、8月は休業、1月や復活祭前は長期休業あり、ランチは平日のみ、クレジットカード不可
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関連誌;『ラ・クチーナ・イタリアーナ』2007年1月号
“ダヴィデ・オルダーニ”の記事は、「総合解説」'07&'08年1月号、P.17に載っています。
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2009年5月21日木曜日
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