さて、レモンのリチェッタですが、香りや酸味づけのために無数の料理に使わてはいても、レモンが主役の料理となると、ドルチェ以外では見つかりません。
レモン農家にも言及している唯一の本は、サルヴァトーレ・デ・リーゾの力作『ドルチ・デル・ソーレ』
さすがは、デリツィア御殿を建てただけあって、彼の成功はレモンの上に成り立っていたのでした。
カンパーニアのレモンはリチェッタもかなり簡単に見つかります。
問題はシチリアのレモンです。
こちらのサイトによると、コンカ・ドーロのレモンはフェンミネッロ種やインテルドナート種の一種らしいので、それを唯一の手がかりとしてリチェッタを探すことにしました。
ちなみに、同サイトには、レモンは接ぎ木してから完全に熟すまでに30年かかるとあります。
財力のある大地主でないと栽培できない果実なんですね。
『Il paesaggio agricolo nella Conca d'Oro di Palermo』という本によると、
レモンはアラブ人によって伝えられて、16世紀頃コンカ・ドーロに根付いた後は、どんどん実って、シチリアを代表する農作物となり、コンカ・ドーロはヨーロッパ最大の柑橘果実の産地となります。
レモンの他には、オレンジも栽培されていました。
一大産業となって、コンカ・ドーロは大いに栄えます。
19世紀末のコンカドーロは柑橘果実の畑で覆われていました。
産業は国際的になり、水路が巡らされ、輸送用の交通網で覆われ、昔ながらの環境を破壊しながら発展していきました。
ところが20世紀になると、無秩序な畑の拡大や環境破壊が、近代的な技術の導入を困難にし、発展にブレーキがかかります。
千年の繁栄の後に、どっと問題点が噴出したのですね。
その後、コンカ・ドーロの生産者や行政は知恵を出し合って環境を守りながら、ぶどうやオリーブの栽培を取り入れる、国際的な観光地として整備するなど、様々な案にトライしているようです。
コンカドーロが今後どうなっていくのか、楽しみです。
コンカ・ドーロワインなんていうのが生まれるかもしれません。
この歴史を知って思うのは、コンカ・ドーロは国際的な市場のために柑橘果実が栽培されていたので、大量生産の工業製品用の柑橘果実が作られていたのでは、ということです。
そうだとすると、家庭料理にコンカ・ドーロのレモンが取り入れられる可能性は低くなります。
という訳で、コンカ・ドーロから離れて、シチリアの他のレモンの産地を調べてみました。
レモンの話、次回に続きます。
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“レモン”の記事とリチェッタの日本語訳は「総合解説」2017年9/10月号にのっています。
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2019年9月20日金曜日
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