2019年9月20日金曜日

コンカドーロとシチリアレモンの千年の繁栄

さて、レモンのリチェッタですが、香りや酸味づけのために無数の料理に使わてはいても、レモンが主役の料理となると、ドルチェ以外では見つかりません。
レモン農家にも言及している唯一の本は、サルヴァトーレ・デ・リーゾの力作『ドルチ・デル・ソーレ』

さすがは、デリツィア御殿を建てただけあって、彼の成功はレモンの上に成り立っていたのでした。

カンパーニアのレモンはリチェッタもかなり簡単に見つかります。

問題はシチリアのレモンです。
こちらのサイトによると、コンカ・ドーロのレモンはフェンミネッロ種やインテルドナート種の一種らしいので、それを唯一の手がかりとしてリチェッタを探すことにしました。
ちなみに、同サイトには、レモンは接ぎ木してから完全に熟すまでに30年かかるとあります。
財力のある大地主でないと栽培できない果実なんですね。

Il paesaggio agricolo nella Conca d'Oro di Palermo』という本によると、

レモンはアラブ人によって伝えられて、16世紀頃コンカ・ドーロに根付いた後は、どんどん実って、シチリアを代表する農作物となり、コンカ・ドーロはヨーロッパ最大の柑橘果実の産地となります。
レモンの他には、オレンジも栽培されていました。
一大産業となって、コンカ・ドーロは大いに栄えます。
19世紀末のコンカドーロは柑橘果実の畑で覆われていました。
産業は国際的になり、水路が巡らされ、輸送用の交通網で覆われ、昔ながらの環境を破壊しながら発展していきました。
ところが20世紀になると、無秩序な畑の拡大や環境破壊が、近代的な技術の導入を困難にし、発展にブレーキがかかります。
千年の繁栄の後に、どっと問題点が噴出したのですね。
その後、コンカ・ドーロの生産者や行政は知恵を出し合って環境を守りながら、ぶどうやオリーブの栽培を取り入れる、国際的な観光地として整備するなど、様々な案にトライしているようです。

コンカドーロが今後どうなっていくのか、楽しみです。
コンカ・ドーロワインなんていうのが生まれるかもしれません。

この歴史を知って思うのは、コンカ・ドーロは国際的な市場のために柑橘果実が栽培されていたので、大量生産の工業製品用の柑橘果実が作られていたのでは、ということです。
そうだとすると、家庭料理にコンカ・ドーロのレモンが取り入れられる可能性は低くなります。

という訳で、コンカ・ドーロから離れて、シチリアの他のレモンの産地を調べてみました。
レモンの話、次回に続きます。



-------------------------------------------------------
“レモン”の記事とリチェッタの日本語訳は「総合解説」2017年9/10月号にのっています。
クレアパッソの販売書籍リスト
 [creapasso.comへ戻る]
 =====================================

0 件のコメント:

トンカ豆はバニラの代用品として世に出ましたが、最近の日本のある出来事にそっくりの事実から使用が禁止されました。

きのうはオーストラリアのフィンガーライムとか、聞いたことないフルーツを紹介しましたが、(CIR1月号P.5)の料理で一番謎だったのは、fave tonkaです。 始めて聞いた名前です。いったい何なのか、想像もできません。 ドイツで行われたアイスクリームのワークショップでトンカ豆に...