2015年3月9日月曜日

お魚奮闘記

今日はイタリア便りです。
では、どうぞ。


私の住むロンバルディア州には、海がありません。
ですから、魚は値段が高い上に鮮度が良くなく、なかなかこれというものに巡り合えません。
イタリアのいいものは金持ちミラネーゼの元に集まるというけれど、私のような庶民にとって、魚は高嶺の花。
ついつい、お魚よりお値段手頃なお肉を選んでしまいます。
でも、魚は大好きなんです。
日本にいた頃は、瀬戸内海で育った母の目利きで食卓に上がった調理済みのものしか見たことがなかったし、実家を出た後は切り身で買うことが多かったから、どの魚がどんな顔をしているか定かではなく、ましてや、自分でさばいたことなどありませんでした。
食べたいけれど、イタリア語の魚名を見てもチンプンカンプンだし、私にとって魚の購入は賭けのようなものです。
サンマが食べたいと思っていたある日、魚屋さんの店頭で、サンマによく似た魚を見つけました。
わくわくしながら購入し、早速焼いて食べてみると小骨が多いうえ、骨が鮮やかな青色でびっくり。
青色は、食欲を減退させるって本当ですね。
イタリア語でagugliaと表示されていたこの魚、anguillaアングイッラはウナギだけど、アグーリアって何?
調べてみると、地中海沿岸で春によく獲れる魚だそうで、日本語ではダツでした。
私が食べたアグーリアは確かに少し口が長かったけれど、ダツほど長くはなかったし、本当にサンマによく似ていたんです。
辞書をひくと、サンマはイタリア語でcostardella。 ネットでコスタルデッラを検索すると、こんな写真がでてきました。

costardella

日本のサンマとは違う気がしますが、私が食べた魚はこれにとても似ていました。
コスタルデッラは、シチリアとカラブリアに挟まれたメッシーナ海峡でよく獲れる魚だそうで、フリットしたものをマリネにしたり、インヴォルティーニにしたりするのがお勧めなんだそうです。
またある日は、シラスによく似たpesce ghiaccioという魚を購入。
けど、なんか違う。
後日、魚屋のおじさんに尋ねたところ、イワシの稚魚ではなく淡水魚とのこと。
中国産のシラウオでした。
確かに安かったものね・・・。
イワシの稚魚は、bianchettiだと学びました。 イタリアでは、というかヨーロッパでは、シラス漁は乱獲のため生態系を崩してしまう恐れがあるとのことで、現在は、禁止されていたり厳しい制限があったりするようです。
ここにいる限り、大根おろしにちりめんじゃこの夢は叶わないのかも。
今となっては、実家のラミちゃんが食べていた日本のニャン缶、まぐろ&シラスがとても羨ましく思えます。 新鮮な魚は諦めて、塩漬けニシンの燻製を購入したら、これは当りでした。
クリスマスが近くなると、大きな木箱に詰められたニシンが北欧からやってきて、メルカートで買えるんです。
イタリア語でニシンはaringaアリンガ。
卵入りが欲しいと言うと、乾物屋の兄ちゃんは、指でお腹を触って数の子入りを選んでくれました。
数の子入りでもナシでも、量り売りだから値段は同じです。
燻製だけど、イタリアで数の子が食べられるなんて嬉しいー。
友人アッスンタに聞くと、オイル漬けにするといいよ、とのこと。
ネットでレシピを調べてみると、燻製ニシンのオイル漬けは、ロンバルディアの家庭の味だと書いてありました。 やっぱり、ロンバルディアの庶民が手頃でおいしい魚を食べるには、保存食が一番なんだわ。
早速アッスンタのところへ行き、教えてもらう・・・というか、いつものごとく、ほとんどやってもらいました。

arlnghe sotto l'olio

三枚におろして骨と皮を取り、ハーブや胡椒、にんにくと一緒にオリーブ油に漬けるだけ。
食べ頃は最低10日後~とのこと。
身はパンに載せて、オイルはパスタに使うとおいしいのだそうです。
卵はデリケートだからと、身とは別に漬けました。
3匹購入しましたが、1匹分の数の子はお礼にアッスンタの元へ。
ニシンの身は好きじゃないけど、卵は大好きなんですってー。
いつか、日本のおいしい数の子を食べてもらいたい! さて、今週はこんなお魚がお買い得になっていました。

palamita

珍しく脂がのっていそうだし、ハンサムな顔付きだし、泳ぎの速そうなカッコイイ尾びれだし、なんだかおいしそうな予感がして、早速購入。
こんな表示がしてありました。

image

イタリア語でパラミータ、又はサルダサルダ。
地中海西方のバレアレス諸島(スペイン)にて、トロール網で獲れた天然魚。
ほほう、Allevata養殖のお魚じゃないのね。
これはますます期待が膨むぞー。
最近ではカタクチイワシを買って、なんちゃって煮干しを作るようになった私。
今度はみりん干しにできる魚を探していたんです。
これ、いいんじゃない?
魚屋のおじさんによると、お腹にハーブを詰めて、ミニトマト、オリーブ、ケッパーと一緒にオーブンで焼いて食べるのがお勧めなんだとか。
生でカルパッチョもいいよ、とのこと。
日本風にみりん干しにしようと思っている、と言うと、せっかく脂がのっているのに干すなんてもったいないって言われてしまいました。
いやいや、脂がのっているからこそ、おいしいものができるはず。
でも、おじさん、日本食に興味があるみたいで、みりん干しができたら、どんなものだか写真見せてくれ、ですって。
パラミータ、切ったらこんな感じでした。

palamita


切れはしを恐る恐る生で食べたら、ツバスが少し大味になったような感じ。
これは、久しぶりに当りです。やったね。
パラミータはSgombroサバ科の魚で、地中海沿岸ではよく獲れるのだそうです。
日本語では、歯鰹(ハガツオ)。
確かにしっかりした鋭い歯をしていました。
念願のみりん干し、ついに完成です。

mirinboshi

ないものはないなりに工夫し、なんちゃって日本食作りがライフワークの一部になってきました。
魚屋のおじさんに、そのうち写真を見せに行こうっと!
青魚は日本でも庶民の味方ですが、イタリアでも貧しい食卓に上ると言われ、お料理レシピにも登場回数が少ないような気がします。
が、近年ではその良さが見直されつつあるようです。
トスカーナ州リボルノ県のエトルスキ海岸沿いにあるサン・ヴィンチェンツォという町では、10年ほど前から毎年5月にパラミータ祭りが開催されているそうです。
去年は不況や選挙の影響で中止になってしまったようですが、今年はどうかな。 歳を経るにつれて私、ますます青魚が好きになっているかも。
あぁ、日本のお寿司が食べたーい!


Grazie Segnalibroさん。
ニシンのオイル漬けにハガツオのみりん漬けですか!
ロンバルディア暮らしも大分本格的になってきましたねー。

それにしても、ニシンは卵入りでもなしでも同じ値段とは、衝撃の真実。
前から疑問に思っていたのですが、タラコもそうなのですか?

それと、ちょっとだけつけたし解説。
Palamitaはイタリアの料理雑誌にもたまーに登場する魚ですね。
産地はトスカーナ群島あたりが有名で、スローフードの保護食材にもなっています。
sarda sarda は、この魚のイタリア語の名前ではなく、学名(ラテン語)です。
カツオと似てるけど、カツオはお腹に縞模様があって、ハガツオは背中に縞模様があるんだって。
ハガツオはサバ科の魚だけど、ひょっとしたら青魚じゃなくて赤身に分類されるかも。
青魚は、イワシ、アンチョビー、サバ、を筆頭に、イタリア料理には頻繁に使われます。
私の印象では、最近では、経済的で栄養価も優れていると、家庭料理の本で取り上げられる頻度が益々アップしているなーと思っていました。
南の人にはもっと身近なのかも。

イタリアの食材の中でも、魚の情報を正確に伝えようと思うと、難しいですよー。
ハードルは高いけど、そのうちパラミータが得意料理になるかもね。
カラブリア風にも興味あります。
がんばってー♪


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マリア・ルイジアの小さな街、パルマのバターとグラナの娘、アノリーニ。本物は牛と去勢鶏のブロードでゆでます。

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