今日はウンブリアのパスタの話。
そもそも、ウンブリアのパスタって聞かれて、何を思い浮かべますか?
あまりメジャーなのがないかも。
ちょっと地味な印象(ゴメンネ)。
そんなウンブリアのパスタの中で、意外とインパクトのある名前に出会いました。
その名も、ペンキpenchiです。
知ってます?
私、初めて聞きました。
複数形でペンキってことは、単数形だとペンコ?
ププ、超カワイイ~。
『グランデ・エンチクロペディア・イッルストラート・デッラ・ガストロノミーア』によると、
「ウンブリアの、特にスポレート地方の軟質小麦粉、卵、塩のパスタ。
素朴で厚めのラザニェッテの一種で、グアンチャーレとサルシッチャがベースのリッチなソースをかける。
別名、モンテレオーネのストラッシナーティ」
ストラッシナーティというと一般的にはひっかくパスタですが、どうやらこれは、幅広で長くて厚い手打ちパスタのよう。
パッパルデッレに似ています。
ペンキという名前より、モンテレオーネのストラッシナーティと言う名前のほうが有名なようです。
この名前で調べると、すぐに、この料理の由来となった言い伝えが見つかります。
モンテレオーネ・ディ・スボレートはこんなとこ。
↓
典型的なウンブリアの町。
静かで落ち着いたたたずまいですね。
パスタの由来となった伝説ですが、
こちらのページによると、それは、この静かな雰囲気にはあまりそぐわない話でした。
それは1494年のこと。
傭兵隊長のヴィテッリ兄弟の二人は、フランス王シャルル8世によるナポリ王国への侵攻、つまり、第一次イタリア戦争ですね、これに加勢してひと旗揚げようとしました。
当時、フランス王とバチカンは、ナポリ王国を巡って戦争をしていました。
そしてウンブリアは長い間、ローマ教皇領だったんです。
そんな戦争にフランス側で参戦したヴィテッリ兄弟、ところが戦況は厳しく、へとへとになってモンテレオーネの城壁にたどり着きます。
そして城のまかないのおばちゃんに、
「俺様の兵士と馬のために食事を出せ、こるあ!」
と要求しました。
ところが、相手はフランス王の味方、つまり、おばちゃんにとってはれっきとした敵です。
それでも、親切なおばちゃんは、料理を出してあげました。
それがペンキです。
でも、今は戦時下の緊急時。
食べ物は貴重なので、ろくな味付けもできません。
あまりにも素っ気ないそのパスタを見て、傭兵隊長は激怒しました。
「おらあ、もっとちゃんとしたもん出さんかい。
さもないと、捕虜(つまりイタリア人)を馬に括り付けて、城壁の周りを死ぬまで引きずりまわらせるぞー!」
と脅迫したのです。
すると、その話を聞いた一人の美少女が、
「捕虜の兵隊さんが可哀そうだから、豚の生肉と、グアンチャーレとサルシッチャとペコリーノと卵も入れてあげましょうよ」と提案したのです。
そうして作られたリッチなペンキを食べた傭兵たちは大満足し、惨事は回避されたのでした。
そしてそれ以来、このペンキはストラッシナーティ(引きずる)と呼ばれるようになったのでした。
めでたし、めでたし。
ひえ~、昔話って、怖すぎる~。
ストラッシナーティなのに普通のパスタだなあと思っていたら、パスタをひっかくじゃなくて、人を引きずり回す、っていう意味のストラッシナーティだったのかあ。
モンテレオーネのストラッシナーティを作る時は、お腹を空かしたチンピラを怒らせないように、と思いながら作るといいかも。
以上、リッチなソースとの組み合わせがマストのパスタでした。
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関連雑誌『ヴィエ・デル・グスト』2012年1月号、ウンブリア料理の記事と“ヴァルネリーナのペンキ”のリチェッタは、「総合解説」2012年1月号に載っています。
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