2014年1月30日木曜日

『カルロ・クラッコの地方料理』

今日は、カルロ・クラッコシェフの新刊のご紹介です。
前作『クールにしたいならエシャロットを使う』は、イタリアでは相変わらず売れていますが、昨年の11月に、早くも次が出ました。
『A QUALCUNO PIACE CRACCO』というタイトルですが、わかりにくいので、クレアパッソでは、『カルロ・クラッコの地方料理』という日本語で販売することにしました。
この本の表紙にも、「LA CUCIN REGIONALE COME PIACE A ME」とはっきり書いてある通り、クラッコ氏が好きな地方料理を集めた本なんです。

そもそも、カルロ・クラッコとは、どんな経歴の人なのでしょうか。

彼がオーナーシェフを務めるミラノのリストランテ・クラッコのこちらのページによると、1965年、ヴィチェンツァ生まれで、ヴィチェンツァ近くのレコアロ・テルメ・ホテル学校卒業。
この学校は1963年創業で、ヨーロッパホテル観光学校協会所属。
プロとしての最初の仕事は、イタリア最初の3つ星店、ミラノのグアルティエーロ・マルケージ。
その後フランスに3年間住み、アラン・デュカスやルカス・カールトンで働き、イタリアに戻ってフィレンツェのエノテーカ・ピンキオッリに入り、この店にも3つ星をもたらします。

さらにエルブスコのマルケージの店、ラルベレータ、ミラノの美食の殿堂ペックと提携したクラッコ-ペックと、いくつか店を渡り歩き、しかも、そのどれもが短期間でミシュランの星やガンベロ・ロッソのフォークを獲得する凄腕シェフ。
2007年に、リストランテ・クラッコのオーナーシェフとなりました。
2012年にはシンガポール航空のビジネスクラスとファースト・クラスのメニューを担当。
シンガポール航空のニュースページ
余談ですけど、シンガポールって、ほんと最近すごいね。
2013年からは、ミラノの5つ星ホテル、パラッツォ・バリジ・ホテル・エ・グランスパのビストロとレストランの経営に取り組んでいる。
パラツッォ・パリジ・ホテル
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いやあ燦然と輝くまぶしい経歴ですねえ。
しかもイケメンで、セクシーと評判。
シェフのインタビュー。
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イタリアを代表するスターシェフですね。
彼の本を読むと、すごーく勉強している人だとわかります。
『カルロ・クラッコの地方料理』の序文は、
「イタリアの地方料理について話すことは、迷路に入り込むようなものだ」
で始まります。
「はっきりした目的地があるのに、気が付くと、あっという間にはるか遠くに飛ばされているのです。
場所だけでなく、時代や文化や伝統の中も飛ばされてしまいます」
「例えば、サクリパンティーナを調べると、リグーリアから出発したのに、すぐにスペイン王家の宮廷に迷い込んでしまいます」
「イタリア地方料理の歴史はイタリアの歴史であり、時には国境も越えます。
しかし同時に、各町ごとに時を告げる鐘楼があり、他では手に入らない地元にしかない無数の食材があるのです。」
「ピエモンテのベテラントリュフハンターからこんな話を聞いたことがあります。
私の人生で食べた最高のリボッリータは、アレッツッォの友達の家で食べたものだった」

いやあ、全くその通り。
私もこのブログをアップするために料理を調べていて、気がいたら全然別な話を追いかけていたということの繰り返しなんです。
しかも、歴史を調べだすと芋づる式に調べなきゃならない別の歴史がずるずる引っかかってくるし、20年以上翻訳していても、初めて聞く名前の食材とかざらだし。

だから、イタリアの地方料理の本を書くというのが、どんなに大変なことかも想像つきます。
しかも、かなりの頑張り屋のようで、イタリアの20ある州のすべての料理を数点ずつ選んでいるのです。
確かに、1000点とか、膨大な数の地方料理を集めた料理書と比べると、数は少ないです。
でも、そのどれもが実に詳細に調べ上げられていて、リチェッタには一流シェフの感性も加えられています。

ちょっとリグーリアのページを見てみると、いきなり、見たこともないような濃厚なペスト・ジェノヴェーゼの写真が。
料理の説明は、プラのバジリコへの熱い思いから始まります。
さらに、ロブションで出会って衝撃を受けたというリグーリア風野菜のズッパへと話は広がっていきます。
野菜スープの仕上げにペスト・ジェノヴェーゼを加えるということを説明するために、ロブションの野菜スープのリチェッタも、ズッキーニは完璧に5㎜角に切らないとシェフが怒る、といったことまで、事細かに書いてあります。
早速やってみよーっと。

次の料理はバッカラかタラのイン・ジミーノ。
イン・ジミーノの意味とか、知らなかったなあ。
オリジナルはこうだけど、私のリチェッタではこうしたとか、詳しく書いてあるなあ。
相当几帳面な人だよ、クラッコシェフは。

前著は、イタリア料理の教本といった感じでしたが、新作は、地方料理を、自分が好きなもの、という基準で選んで、とことん研究して、彼の目線で再構築した、ある意味、とても個性的な地方料理書です。
どちらも若手料理人さんに読んでもらうことを意識して書いているような優しさがあふれています。
お勧め。



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2 件のコメント:

Yoko.N さんのコメント...

私はイタリアの地方料理(家庭料理)にとても興味があります。
この料理の名前の由来は?この料理の発祥地は?など調べていると確かにとんでもないことになります。
しかも私はイタリア語力が低いのでそりゃ~もう大変です。
料理について調べていたのにサヴォイア家ってどんな家柄?とそちらを調べ始め、最後に私は何を調べていたのか分からなくなったりecc...
カルロ・クラッコ氏の本を読んでみたくなりました。

prezzemolo さんのコメント...

Yokoさん

コメントありがとうございます。
地方料理の由来とかうんちくって、調べ出すと楽しいですよね。
歴史の古い国だけあって、横道は無限に広がってるけど、何かしら答えが見つかるのでやりがいがあります。
クラッコさんの本は、とっつきにくいけど、面白いですよ。
イタリア料理を研究している人にとっては、とても役に立つはずです。

prezzemolo

マリア・ルイジアの小さな街、パルマのバターとグラナの娘、アノリーニ。本物は牛と去勢鶏のブロードでゆでます。

昨日の最後にサラっと登場したアノリーニですが、このパスタ、(CIR12月号P.5)にもリチェッタが載っていました。クルルジョネスの次の料理です。花の形の可愛い詰め物入りパスタ、なんていうのがこのパスタの印象ですが、イタリア人は、こんな風に思ってるんですね。 「マリア・ルイジアの小...