今日はカムット小麦の話。
『ヴィエ・デル・グスト』の解説です。
カムット小麦
って最近に耳にするようになった名前ですよね。
イタリアの料理雑誌にも数年前あたりからカムット小麦のパスタなどが登場しています。
古代小麦として知られるこの小麦。
古代小麦って、いったい何?と思ってましたが、この記事を読んでその由来を知ってビックリ。
それは、第二次大戦直後のこと、エジプトの遺跡の墓で小麦を見つけたあるアメリカ兵が勝手に故郷に持ち帰ったものだったとは。
それを知り合いの農家にあげたところ、その父親が育てて小麦を実らせました。
でもその時はすぐに忘れ去られてしまいまいた。
それを先見の明がある農学者が見つけて商標登録して会社を造り、種子を選別して広く栽培した結果、世界中に知られるブランド小麦となったというのです。
これはあくまでも、いくつかある伝説の一つです。
商売としてみれば、これはある種の一攫千金と言うか、サクセスストーリー。
でも、そもそものスタートが、ちょっとどうなの、ていう感じ?
この他にも、wikiによると、ノアが箱舟で食べていたとか、エジプトに侵略した敵が持ち込んだとか、夢のある話がいろいろあるようです。
こちらのサイトでは現実にありそうな行きさつが語られています。
それによると、ある空軍のパイロットがエジプトの墓から持って帰ったんだそうです。
一種の墓荒しですよね。
きっと、呪いなんか信じない人だっんでしょうね。
でも、それを育てた人は、もっとストレートに、エジプトの墓にあった小麦だから、ツタンカーメン王の小麦という名前を付けて品評会に出したのだそうです。
さすがに、この名前だと怖いかも。
1977年にの小麦を再発見した学者さん(ボブ・クイン氏)は、今度は古代エジプト語で小麦と言う意味のkamut(英語ではカムートと言います)と名付けました。
小麦の原産地は、肥沃な三日月地帯と考えられています。
エジプトもその一部です。
ということは、この小麦は人類が初めて栽培した小麦にとても近いかもしれません。
そこでこの小麦はデュラム小麦の祖先だと言われている訳です。
ただし、異論もあって、そう証明されているわけでないようです。
歴史がどうであれ、この小麦の栄養や特性は大いに注目されています。
もちろん、ずっと遺跡の中にあったのですから、その間、人の手による品種改良は一切行われていませんよね。
これはかなり特殊なことです。
たとえば、スーパーに並んでいる野菜は、“見た目がおいしそうなもの”が売れるから、作り手も外見が美味しそうな野菜の種を残して、その野菜の遺伝子が受け継がれます。
小麦だったら、たとえば、パスタにすると美味しい小麦とか、栽培しやすい、などの理由で選別された突然変異種だけが、数世紀に渡る取捨選択を生き残ってきました。
そういう分別が、まったく行われていないとは、貴重です。
具体的には、カムット小麦は、一般的な小麦の粒と比べて2~3倍大きさで、栄養価が高く、タンパク質は20~40%多く、 脂質、アミノ酸、ビタミン、ミネラルも多いんだそうです。
バターのようなコクのある味で、消化もしやすい。
これらは人工的に大幅に手を加えて味や栄養を犠牲にしているいる現代の小麦にはない特徴なんだそうです。
栽培に肥料や化学物質も必要ありません。
小麦アレルギーの人でも食べることができるんだとか。
カムット小麦は商品名ですが、公式名称はqk-77とかKhorasan wheatと呼ばれます。
まだまだ謎が多そうな小麦ですが、なぜかイタリアでは人気のようですね。
↓カムット小麦と関連製品に関する権利を独占して持つカムート・インターナショナル社のPV。
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関連誌;『ヴィエ・デル・グスト』“カムット小麦”の記事は「総合解説」2011年3月号に載っています。
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2012年4月30日月曜日
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3 件のコメント:
はじめまして。Naviaと申します。カムット小麦のパンを何度か買ったことがあり、そして今回はカムット小麦を買ったので「カムット小麦」について自身のブログで書こうと思い、日本語でカムットと調べてみたらprezzemoloさんの記事が既に詳しく簡潔にまとめられていて、とても勉強になりました。
後日ブログで「カムット小麦」について書くときこの記事へ、外部リンクさせてもらいたいのですがよろしいでしょうか?
他の記事もじっくり読ませてもらいます!初めてのコメントがお願いコメントですみません。
Naviaさん
コメントありがとうございます。
一生懸命調べた話が誰かのお役に立つなんて光栄です。
リンクはご自由にどうぞ。
カムット小麦、かなり広まっているんですね。
何を作るのかな。
ブログに載る時が楽しみです。
prezzemoloさん、快諾ありがとうございます。小麦粉のレポート書いたらまたご連絡させていただきますね!
prezzemoloさんのブログでイタリアに居ながらイタリアのこと勉強させてもらっています!
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