チーズの話、その3。
『ア・ターヴォラ』の解説です。
最初に説明するのを忘れていましたが、今回取り上げているチーズは、「イタリア人がクリスマスなど特別な時に食べたいと思うチーズ」です。
シチリアの山羊のタレッジョ、ピエモンテの牛乳のベッテルマットの次は、エミリア・ロマーニャからマルケ、ウンブリアにまたがる地方で作られている羊のチーズ、
フォルマッジョ・ディ・フォッサformaggio di fossa、別名ペコリーノ・ディ・フォッサpecorino di fossa。
こんなチーズ。
フォッサとは、穴とか堀という意味。
ペコリーノをやや熟成させてから地下に掘った穴に詰め、封印して3ヶ月寝かせたチーズです。
夏に新鮮な草を食べた羊がたっぷり出したミルクを、冬まで保存しておくために考え出されたのが、この穴で寝かせるという製法。
山羊乳や牛乳を加える場合もあります。
穴は家の地下にあって、中世には主に麦を略奪から守るための隠し穴として使われていました。
秋の間の3ヶ月だけ、穴の所有者がチーズを作りたい人に場所を貸す、というシステムでこのチーズは作られていました。
穴の壁は凝灰岩。
チーズを入れる前に壁を焼いて水気を飛ばし、殺菌します。
次に壁の内側を藁や葦で覆って水はけをよくします。
底には板を敷きます。
チーズは数個ずつ袋に詰め、レンガを積み重ねるように穴に入れていきます。
↓チーズを詰める作業
伝統的には、チーズを詰めるのは8月末から9月にかけて。
入れたら木の蓋をして石膏で封印し、約20度に保たれた穴の中で90日寝かせます。
そして蓋を開けるのは、11月25日の聖カテリーナの日。
穴に詰める前は均等な筒形をしていたチーズも、取り出す時は不規則な形に変形しています。
穴のどの位置にあったかによって形が違います。
↓チーズを取り出す作業
フォルマッジョ・ディ・フォッサの味は、まず最初に甘みを感じ、次第に辛さとほろ苦さが強くくなってきます。
さらに、地下で寝かせているために独特の強い香りがあります。
木、コケ、トリュフ、森の香りなどがアロマの一例。
食べ方は、食事の最後にチーズだけで、またはポティーのあるサンジョヴェーゼやパッシートやを添えて、というのが一般的。
↓子羊肉とペコリーノ・ディ・フォッサのフォンドゥータ、白トリュフがけ
↓アサリ、ポルチーニ、ペコリーノ・ディ・フォッサの手打ちフジッリ
フォルマッジョ・ディ・フォッサは作り手によって出来が大きく違うチーズ。
『ア・ターヴォラ』お薦めの作り手はヴィットーリオ・ペルトラーミ。
webページはこちらです。
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関連誌;『ア・ターヴォラ』2007年12月号
ペコリーノ・ディ・フォッサを含む“ディナーにお薦めのチーズ”の解説は、「総合解説」'07&'08年12月号に載っています。
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2 件のコメント:
これはマルケではどこあたりで食べられるのですか?
穴の所有者って、大土地所有者とか領主的存在だったのかなぁ。
くるりさん
産地はマルケ全体なので、どこでもあるのではないかと。
旬は年末頃らしいですよ。
隠すぐらい小麦があったってことは、お金持ちだったんでしょうねえ。
でもお金を取って穴を貸してたようだから、小金持ちぐらいだったのかも?
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