2010年7月15日木曜日

スターバックスとイタリア

今日はスターバックスの話。
『ヴィエ・デル・グスト』の記事の解説です。

世界最大のカフェチェーン、スターバックス。
シアトルスタイルのカフェの本家で、そのコーヒーはエスプレッソがベース。
なんでも、創業者のハワード・シュルツ氏がミラノのバールを体験して、これだ!と思ったのがそもそものきっかけだったとか。

イタリアのバールを見て、これだ!と思う人は世界中にたくさんいるようですね。
日本でも、イタリアのバールスタイルの店がいくつも生まれました。
でも、なかなか簡単には成功しないんですよね、これが。

シュルツ氏が成功したのは、どうやらバールに対する目の付け所が他の人と違っていたからのようです。

彼は、イタリアのバールをアメリカで、単純にそっくりそのまま再現しようとは思いませんでした。
物や雰囲気ではなく、バールがイタリアの社会で果たしている役割の“大きさ”に注目したのです。
イタリアのバールは「広場」、言い換えれば人々が集う場所、彼はそう分析しました。
そしてこれこそが、アメリカ人が魅了される「イタリア風」ライフスタイルだと考えたのです。

その後、彼がマーケティングの優れた才能を発揮して、スターバックスが成功していったのはご存知の通り。
エスプレッソがベースとなっていながら、イタリアンスタイルではなく、シアトルスタイルとして独自のカフェ文化を造り上げ、今も常に新しいものを模索し続けています。


さて、世界中に広まったスターバックスですが、なんとイタリアには1軒もないんですねえ。
ハワード・シュルツ氏は、自らにこれほどの啓示を与えた国にスターバックスを出店しない理由について、「イタリアではコーヒーをバールの外に持ち出したり、歩きながら飲むスタイルは受け入れられないだろう」と言っています。

『ヴィエ・デル・グスト』の記事の口調は、スターバックスに対してかなり辛口です。

「そもそもスターバックスの戦略は、アメリカ人が憧れるイタリアのイメージに合致した商品を提供する、というものであって、それが実際のイタリアのものとは違っていても、あるいはそういう店がイタリアには一軒もなくても重要ではない」

「もしイタリアで失敗すれば、ブランドイメージが大きく傷つくことは避けられない。
それを考えればおそらくこれ(イタリアには出店しないこと)も、彼らの戦略上の判断なのだろう」


確かに、スターバックスのメニューには、フラペチーノだのラテだのマキアートだの、英語なまりのイタリア語がたくさんあります。
おそらく世界中のスターバックスで、これが(英語なまりの)イタリア語だと意識して注文する人はほとんどいないと思うのですが、イタリア人に取ってはそうはいかないようです。
イタリアのコーヒー文化を真似たものと感じて、少々鼻につくのかもしれませんねえ。

さらに、もしイタリアに出店すれば、イタリア中のバールがスターバックスのライバルと化す訳です。
スターバックスが出店する可能性が皆無という訳ではないでしょうし、スターバックスに興味のあるイタリア人だっているでしょうから、そうなったら見ものですねえ。



イギリスのスターバックス







イタリアのとあるバール








-------------------------------------------------------

関連誌;『ヴィエ・デル・グスト』2008年7月号
「コーヒー」の記事の解説は総合解説'07&'08年7月号に載っています。

[creapasso.comへ戻る]

=====================================

2 件のコメント:

くるり さんのコメント...

その他とは明確に異なる確固たる戦略こそが、場合によっては宗教がかっているように見える時があるんですよね。
ま、とはいえ禁煙を求めて結局入ってしまうのですが(笑)

prezzemolo さんのコメント...

くるりさん
フードチェーンはどこもそんなものですよね。
大きくなればなるほど創業者は神話レベル。
そう言えば、日本で初めてスタバに入った時、イタリア人が一緒だったことを思い出しました。
お互い、これがアメリカのイタリア風カフェの先駆けだとは全然気がつかなかった~。

ジェラートはパンとの相性も良いデセール。シチリアとナポリの人のジェラートの食べ方は、ほんとに自由。

今日は、(CIR)7月号のリチェッタから、ジェラートの話(P.12)。 リチェッタのテーマは、シンプルにコーンやカップに入れるジェラートではなく、クロスタータやボンボローニ、はてはフォカッチャにのせるジェラート。 ジェラートのデセールの最高峰はトルタ・ジェラート。 パン・ジェラー...