今日もチーズの話。
前回はイタリアの北の端、アルト・アディジェのチーズでしたが、今度は南の端のシチリアのチーズ。
『ア・ターヴォラ』の記事の解説です。
シチリアには、DOPチーズ(産地が法律で定められているチーズ)が2つあります。
ペコリーノ・シチリアーノとラグザーノです。
今回取り上げるのは、ラグザーノ ragusano 。
元々はカチョカヴァッロ・ラグザーノと呼ばれていた歴史の古いチーズで、1996年にDOPになった時に、カチョカヴァッロが取れて、“ラグザーノ”という名前が公式名称となりました。
よく、「シチリアで一番古いチーズ」と言われます。
原料は牛乳で、モッツァレッラなどと同じパスタ・フィラータタイプのセミハードチーズ。
シチリア南東部のイブレイ山地のふもと、ラグーザ県全域とシラクーザ県南部で作られています。
ラグーザの風景, photo by Sebastiano Pitruzzello
前回取り上げたカルブルーは、典型的なチロル地方の風景の中で作られているチーズでしたが、このラグザーノは、いかにもシチリアンな風景の中で作られていますねえ。
出来上がったチーズも、やっぱりシチリア的。
こんな姿をしています。
↓
deliziedelpalato.it
1個10~16kgと大型で、形は無骨な長方形。
下の動画には、ラグザーノを作る過程が少しだけ出てきます。
作り方を簡単に説明すると、まず牛乳を固めて柔らかいチーズになったらスライスし、お湯に入れて休ませます。
これを練ってまとめ、大きな長方形に型押し。
仕上げは真ん中をひもで結び、天井に渡した梁から吊るして熟成させます。
司会の人、古代ギリシャ人も知っていた古いチーズで、シチリアの交易品の一つだった、と言っていますね。
かつてラグザーノは、モディカ牛のミルクから作られていました。
モディカ牛のミルクのチーズは、シチリアのチーズの中でも特に美味しいことで知られていたそうです。
ところが、シチリアの農業の不振などから飼育数が減少してしまい、現在のラグザーノは、100%モディカ牛のミルクから作られている訳ではありません。
現在はシチリア州やラグーザ県、スローフードなどもバックアップして、モディカ牛復活の道が模索されている最中。
モディカ牛でなくても、ラグザーノは、イブレオ高原の牧草を食べた牛のミルクから作られます。
しかも古い道具を使った昔ながらの作り方をしているので、北イタリアのチーズとはまた違った、シチリアならではの個性を持ったチーズになります。
中央にひもで縛った後が残っているのがこのチーズの特徴。
天井から大きな塊がいくつもぶら下がっているラグザーノの熟成室は、なかなか壮観です。
こんな様子。
↓
cicciapausi.it
熟成期間は3ヶ月から10ヶ月以上。
若いうちは甘さが感じられ、熟成が進むにつれて辛口になります。
『ア・ターヴォラ』には、「最上質のものは最低8ヶ月寝かせる」とあります。
ラグザーノの話、今日はここまて。
次回は、ラグザーノを使った料理の話です。
-------------------------------------------------------
関連誌;『ア・ターヴォラ』2006年10月号(クレアパッソで販売中)
“ラグザーノ”の記事の解説は、「総合解説」'06&'07年10月号、P.23に載っています。
[creapasso.comへ戻る]
=====================================
2008年12月22日月曜日
登録:
コメントの投稿 (Atom)
ジェラートはパンとの相性も良いデセール。シチリアとナポリの人のジェラートの食べ方は、ほんとに自由。
今日は、(CIR)7月号のリチェッタから、ジェラートの話(P.12)。 リチェッタのテーマは、シンプルにコーンやカップに入れるジェラートではなく、クロスタータやボンボローニ、はてはフォカッチャにのせるジェラート。 ジェラートのデセールの最高峰はトルタ・ジェラート。 パン・ジェラー...
-
グラナ・パダーノの話、その2です。 イタリアで流通しているハードチーズの50%近くを占めるグラナ・パダーノ(AC Nielsen調べ)。 2008年の生産量は、435万5347個でした。 平均的な販売価格は11.05ユーロ/㎏。 イタリアの硬質チーズの平均価格は12.70ユーロな...
-
今日はブラザートの話。 『ラ・クチーナ・イタリアーナ』の記事の解説です。 バローロのブラザート, photo by Silvio 記事によると、 ブラザート brasato は、イタリア語で「炭」という意味の“ブラーチェ brace ”の古い呼び方、“ブラーザ brasa ”が...
-
今日のお題はプリーモピアット。今月の「 総合解説 」P.5の料理です。 スパゲッティなんですが、料理名がやたらカッコイイ。 “アサシンのスパゲッティspaghetti all'asssassina”だって。 初めて聞きました。 聞いたこともない料理だったのに、逆にnetに...
0 件のコメント:
コメントを投稿