2017年10月23日月曜日

チッチョ・スルタノシェフ

今日は・チッチョ・スルタノシェフ(シチリアのラグーザ・イブラのリスランテ・ドゥオモのシェフ)の話。

「総合解説」2015年6月号では、『ガンベロ・ロッソ』に載った彼のリチェッタを訳しています。
記事ではシェフのことを、「伝統料理の影響が強いディープなシチリア南部で創作料理を作るシェフ」と紹介しています。
すごく革新的な印象を受けますが、彼のリチェッタを見ると、確固たる伝統の上にアレンジを加えていて、地元の食材への神経質なまでのこだわり方などは、相当保守的です。
それでいて完成した料理は、文句なく革新的。
このタイプの料理を作るシチリア料理の巨匠的存在。



グランシェフのリチェッタはどれもとても興味深いですが、今回のリチェッタでは、“tra la campagna e il mare/畑と海の間”と名付けられた料理、副題が“シチリア風スパゲッティ・アルティジャナーレ、アーリオ・オーリオのウニ風味、ワイルドアスパラガス添え”というのがとても面白かったです。

同じ料理ではないけれど、かなり似たリチェッタの“ウニとアスパラガスのスパゲッティ・アルティジャナーレ”
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スパゲッティ・アルティジャナーレという言い方は、グラニャーノのパスタに使われるのをよく目にしますが、これは完全に手打ちパスタ。
普通、手打ちパスタは自家製パスタと言ったりしますが、アルティジャナーレは、技術のある職人が作ったという意味の、手打ちパスタより1段上の印象。


スルタノシェフのスパゲッティは、普通のスパゲッティと同じように作りますが、粉はシチリア産のセナトーレ・カッペリのセモリナ粉を使用しています。
セナトーレ・カッペリはイタリアで生み出された世界中の硬質小麦のルーツで、かつてはイタリア中で栽培されていた硬質小麦。
薪で焼いたパンのような香りと、腰の強さが特徴で、高級パスタの材料でもあります。

このパスタをゆでてアーリオ・オーリオとウニ風味にするのですが、リチェッタを読むと、スモークオイルolio affumicatoというのも使っています。
燻製風味のオイルでしょうか。
初めて訳しました。

セナトーレ・カッペリのパスタは腰と風味が強いせいか、シンプルなアーリオ・オーリオにするケースが多いですよね。
アーリオ・オーリオは、シンプルでかつ、質素なイタリア料理の代表選手。
最上質の小麦粉を使って一流シェフが作る料理が、質素というのはなんとも皮肉ですが、スモークオイルであえたスパゲッティは、外見上は、お腹を空かせた息子のためにマンマが作るボリュームたっぷりでシンプルなアーリオ・オーリオそのもの。
ところが燻製の香りがするんですねー。
この時点でかなり食べてみたいです。
アスパラガスもかなり手をかけて濃厚なクリームにしてパスタの下に敷きます。

素朴と言えば、シチリア料理の代表的なプリーモ、イワシのパスタもこてこての伝統料理ですが、とてもモダンな1品に仕上がっています。
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“チッチョ・スルタノ”シェフのリチェッタの日本語訳は、「総合解説」2015年6月号に載っています。
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バッカラはノルウェーとイタリアを結ぶ干物貿易の主役で、この航路は1450年作成の世界地図にも記載されるほど重要でした。

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