今日は・チッチョ・スルタノシェフ(シチリアのラグーザ・イブラのリスランテ・ドゥオモのシェフ)の話。
「総合解説」2015年6月号では、『ガンベロ・ロッソ』に載った彼のリチェッタを訳しています。
記事ではシェフのことを、「伝統料理の影響が強いディープなシチリア南部で創作料理を作るシェフ」と紹介しています。
すごく革新的な印象を受けますが、彼のリチェッタを見ると、確固たる伝統の上にアレンジを加えていて、地元の食材への神経質なまでのこだわり方などは、相当保守的です。
それでいて完成した料理は、文句なく革新的。
このタイプの料理を作るシチリア料理の巨匠的存在。
グランシェフのリチェッタはどれもとても興味深いですが、今回のリチェッタでは、“tra la campagna e il mare/畑と海の間”と名付けられた料理、副題が“シチリア風スパゲッティ・アルティジャナーレ、アーリオ・オーリオのウニ風味、ワイルドアスパラガス添え”というのがとても面白かったです。
同じ料理ではないけれど、かなり似たリチェッタの“ウニとアスパラガスのスパゲッティ・アルティジャナーレ”
↓
スパゲッティ・アルティジャナーレという言い方は、グラニャーノのパスタに使われるのをよく目にしますが、これは完全に手打ちパスタ。
普通、手打ちパスタは自家製パスタと言ったりしますが、アルティジャナーレは、技術のある職人が作ったという意味の、手打ちパスタより1段上の印象。
スルタノシェフのスパゲッティは、普通のスパゲッティと同じように作りますが、粉はシチリア産のセナトーレ・カッペリのセモリナ粉を使用しています。
セナトーレ・カッペリはイタリアで生み出された世界中の硬質小麦のルーツで、かつてはイタリア中で栽培されていた硬質小麦。
薪で焼いたパンのような香りと、腰の強さが特徴で、高級パスタの材料でもあります。
このパスタをゆでてアーリオ・オーリオとウニ風味にするのですが、リチェッタを読むと、スモークオイルolio affumicatoというのも使っています。
燻製風味のオイルでしょうか。
初めて訳しました。
セナトーレ・カッペリのパスタは腰と風味が強いせいか、シンプルなアーリオ・オーリオにするケースが多いですよね。
アーリオ・オーリオは、シンプルでかつ、質素なイタリア料理の代表選手。
最上質の小麦粉を使って一流シェフが作る料理が、質素というのはなんとも皮肉ですが、スモークオイルであえたスパゲッティは、外見上は、お腹を空かせた息子のためにマンマが作るボリュームたっぷりでシンプルなアーリオ・オーリオそのもの。
ところが燻製の香りがするんですねー。
この時点でかなり食べてみたいです。
アスパラガスもかなり手をかけて濃厚なクリームにしてパスタの下に敷きます。
素朴と言えば、シチリア料理の代表的なプリーモ、イワシのパスタもこてこての伝統料理ですが、とてもモダンな1品に仕上がっています。
↓
-------------------------------------------------------
“チッチョ・スルタノ”シェフのリチェッタの日本語訳は、「総合解説」2015年6月号に載っています。
[creapasso.comへ戻る]
=====================================
2017年10月23日月曜日
登録:
コメントの投稿 (Atom)
ジェラートはパンとの相性も良いデセール。シチリアとナポリの人のジェラートの食べ方は、ほんとに自由。
今日は、(CIR)7月号のリチェッタから、ジェラートの話(P.12)。 リチェッタのテーマは、シンプルにコーンやカップに入れるジェラートではなく、クロスタータやボンボローニ、はてはフォカッチャにのせるジェラート。 ジェラートのデセールの最高峰はトルタ・ジェラート。 パン・ジェラー...
-
グラナ・パダーノの話、その2です。 イタリアで流通しているハードチーズの50%近くを占めるグラナ・パダーノ(AC Nielsen調べ)。 2008年の生産量は、435万5347個でした。 平均的な販売価格は11.05ユーロ/㎏。 イタリアの硬質チーズの平均価格は12.70ユーロな...
-
今日はブラザートの話。 『ラ・クチーナ・イタリアーナ』の記事の解説です。 バローロのブラザート, photo by Silvio 記事によると、 ブラザート brasato は、イタリア語で「炭」という意味の“ブラーチェ brace ”の古い呼び方、“ブラーザ brasa ”が...
-
今日のお題はプリーモピアット。今月の「 総合解説 」P.5の料理です。 スパゲッティなんですが、料理名がやたらカッコイイ。 “アサシンのスパゲッティspaghetti all'asssassina”だって。 初めて聞きました。 聞いたこともない料理だったのに、逆にnetに...
0 件のコメント:
コメントを投稿