今日から「総合解説」9月号のビジュアル解説です。
最初の記事は、イタリアの国民的パスタソースの1つ、プッタネスカの話。
この料理、とても美味しいけど手軽に作れて、人気ありますよね。
なのに、なんでこんな名前。
という訳で、この料理の由来です。
諸説あるのですが、どれも決定的証拠がないので、どれを信用するかは、あなた次第、という状態。
『サーレ・エ・ぺぺ』の記事も、これだ、という決定打はないので、諸説をいくつか紹介というスタンスです。
まず最初の説は、
ナポリ料理のバイブルと言われる料理書、
ジャンヌ・カローラ・フランチェスコーニ著『La Cucina Napoletana』の中に、
この本のルーツについての記述があるそうです。
ジャンヌ(1903-1995)はナポリ生まれの作家で、ナポリ料理の権威と見なされていた人です。
信頼できるナポリ料理の本を、イタリアで2番目に書いた人。
1番目の本は、イタリア料理史に残る歴史的な本とされているので、2番目でも十分すごいこと。
ゆたかなナポリの食文化を研究して本にまとめるという偉業は、高く評価されています。
この人の本に書いてあったことは、イタリア人にとってはかなり信用できる情報と言えそうです。
彼女によると、このソースを考え出したのは、画家でジャンヌの親密な友人だった、エドアルド・マリア・コルッチ(1900-1975)、という人物だそうです。
コルッチはイスキア島生まれでした。
こんな絵を描く人です。
このソースは彼のスペチャリタだったそうです。
でも、数年前にイスキアの日刊誌、『イル・ゴルフォ』(webページはこちら)が発表した説によると、プッタネスカの考案者は、コルッチの甥の建築家で、イスキアでレストランとナイトクラブを経営していたサンドロ・ペッティなんだそうです。
このレストラン、リストランテ・アルベルトのwebページに、現経営者(創業者の孫)が、プッタネスカ誕生の経緯をサンドロから聞いたという話が載っています。→こちらのページ
それによると、1949年の夏の終わり、夜遅くに、彼の経営するナイトクラブRangio Felloneに、1組のカップルが食事に訪れました。
ところがあいにく、その晩は食材を使い切っていて、残っているのはトマト4個とオリーブとケッパーが数粒。
puttanataみたいなのしかできないけど、と断って、その材料でパスタを作ったのだそうです。
puttanataは、お上品に言えば、ろくでもないもの、お下品に言えば、くそみたいなもの。
でも、それじゃあメニューに載せられないので、ちょっとお上品にputtanescaと言い換えて、メニューに載せたのだそうです。
サンドロは、このソースのリチェッタをレストランのシェフに伝授しました。
すると、シェフはすっかり気に入って、すぐに店のメニューに取り入れたのだそうです。
聞いてみると他愛もない話ですが、誰でも考え付きそうなシンプルなこのソースがここまで広まったのは、娼婦風という名前のインパクトにあったのでは、とも思えます。
そうそう、アメリカ人のアーサー・シュヴァルツの、ナポリのスペイン地区の売春宿のオーナーが、手早くできるこの料理を客にふるまったという説も、それなりに説得力ありますねえ。
でも、puttanataのダジャレでputtanescaにした、っていう説は、カンパーニアの人ならいかにも考えそうな話じゃないですか。
現在のリストランテ・アルベルト
↓
こちらはブッタネスカ誕生の地とされるナイトクラブで開かれた映画祭のパーティー。
ちなみに設計したのはサンドロ。
↓
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“パスタ・アッラ・プッタネスカ”の記事の日本語訳は、「総合解説」13/14年9月号に載っています。
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