2010年9月2日木曜日

イタリア料理の歴史、その1

今日は本の話。

クレアパッソで近日中に販売予定の『L'ITALIANO È SERVITO!』という本をご紹介します。


『L'ITALIANO È SERVITO!』
著者/Maria Voltolina
出版社/Guerra Edizioni
価格/3,500円(税込・送料込)


この本、副題は、「外国人のための料理で覚えるイタリア語」。

外国人にイタリアの様々な文化を紹介しながら、ついでにイタリア語も覚えてしまいましょう、というユニークなシリーズの一冊です。
料理のほかには、「美術史で覚える」、「歴史で覚える」、「地理で覚える」などがあります。

内容は、外国人向けにイタリア料理や食文化を教えるテキストブックといったところ。
写真も比較的豊富で、写真だけ眺めているのも楽しいかもしれません。
ただし、内容は全てイタリア語です。
勉強しようと言う気がないと、イタリア語初心者には読むのは少し難しいでしょう。
逆に、イタリア語の教材として使うには最適です。


内容は、まず、調理器具の写真と、そのイタリア語名のページから始まります。
次は、調理方法とそのイタリア語。

そしてその次が、イタリア料理の歴史です。

なかなか興味深い内容なので、この部分をざっと訳してみます。

日本では、イタリア料理の歴史と言うと、古代ローマ料理から始めることが多いようですが、この本ではこう説明しています。


イタリアは、何世紀にも渡って、北ヨーロッパや(小)アジア、地中海諸国から侵略を受けてきました。
それらの国々は、イタリアにその習慣や言語を伝え、さらに野菜や果物、家畜を伝えました。
その結果、イタリア料理には二つの世界が共存するようになったのです。
一つは北ヨーロッパと(小)アジア。
そしてもう一つは地中海世界です。


ケルト料理

魚は少し、豚肉はたっぷり、オイルは少し、バターはたっぷり。
これがケルト人の料理の特徴です。

彼らは、紀元前5~6世紀にイタリアに侵入し、ローマまで侵略してから北に戻っていきました。
その間に、マルケ、パダナ平野、フランス、イギリスの一部を占領しています。

ケルト人は遊牧民で、家畜をつれて移動しました。
牛は荷物を引かせたり、乳を搾り、豚は全ての部位を食べて、さらに燻製や塩漬けにして保存しました。

彼らが使う油脂は動物性、つまり牛乳から作ったバターや、豚の脂身の“ラルド”です。
植物性の油脂は、使ったとしてもわずかで、主にひまわりの種などから取っていました。
一般的な酒は発酵させた小麦から造ったもので、とても軽いビールの一種でした。


地中海料理

イタリア南部はギリシャ人が征服し、イタリア中部はラテン人の文明が発展しました。
2つは違う文明ですが、料理はとてもよく似ています。

ギリシャ・ラテン文化圏でも、牛は荷車を引いたり、畑を耕すのに用いられ、乳牛からは乳を搾りました。
牛肉を食べるのは、神に捧げものをする特別な時だけで、神へは焼いた骨と脂身を捧げ、人間はローストした肉を食べたのでした。

食用にした肉は、羊です。
そして魚も食べました。
ただ、量は少しです。
その代わり、野菜をたっぷり食べました。
アメリカ大陸が発見されるまで、じゃがいも、ピーマン、トマトといった野菜はなかったということも忘れてはいけません。

豚は、ケルト人の侵略以来、イタリア全土で知られていました。
しかし、イタリア中部と南部は暑すぎて、豚肉の安全な保存には不向きでした。

バターは知られておらず、調理にはオリーブオイルを使いました。
地中海沿岸には野生のぶどうが生えていて、一般的な酒はワインでした。
ラテン人が“自分たちの海”と呼んだ地中海は、あらゆる果物や野菜をもたらし、イタリア料理を豊かなものにしました。


二つの世界の融合

2千年以上たった現在でも、イタリア料理は、二つの世界の融合から成り立っています。
南部、特にシチリアの料理には、ここにアラブの影響が加わりました。

さらに現在では、各種のインターナショナル料理も入ってきました。
ヌーヴェル・キュイジーヌ、ファースト・フード、オリエンタル料理など様々です。
けれど、他の西洋諸国と違って、イタリアでは、これらの食文化はいつまでたってもどこかよそ者の扱いです。




イタリア料理の歴史の話、次回に続きます。



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