2010年6月21日月曜日

スパゲッティの故郷

スパゲッティの歴史編、その5。

アラブルートの話の続きです。

12世紀にシチリア王ルッジェーロ2世に仕えたアラブ人の地理学者、アル・イドリーシー。
彼は、世界初の詳細な世界地図を作った人物です。

アル・イドリーシーの地図
アフリカは北部だけが描かれていてます。
東南アジアから東はありません。

簡略版


アル・イドリーシーは、同じ頃にこの地図の解説も書き記しています。
『ルッジェーロの書』と呼ばれるこの解説も有名なもので、地図と共に当時の地中海世界に大きな影響を与えました。

この書は地理だけでなく、シチリアの伝統や習慣についても記録しています。
その中に、トラビーアという町について書かれた部分があります。
トラビーアは、パレルモから海沿いに30kmほど東に行ったところに今もある町です。

それによると、町は水車のついた粉挽小屋がたくさんある平野で、町で作った“itriya”をカラプリアなどに売っていたそうです。
船でイスラム教国やキリスト教国にも運んでいたそうです。

アラビア語で「糸」はtria。
そしてitriyaとは、「糸のような形のパスタ」のこと。
つまりスパゲッティ?

パスタに関する記述はこれだけのようですが、itriyaがスパゲッティの類だとすると、これはイタリア最古のパスタの大量生産の記録であり、イタリア最古の乾麺の記録ということになります。

当時のシチリアは、シチリア人、ノルマン人、アラブ人、ギリシャ人などからなる多国籍社会。
パスタがアラブ圏から伝わった可能性はあります。
よく言われているのが、遊牧民が移動生活に便利な乾麺を作っていたという説。
でも、アラブ世界でパスタが一般的な食べ物だったという記録はないそうで、疑問の余地も大いに残しています。
そもそも、砂漠でパスタをゆでるって、ちょっと無理があるんじゃ・・・。
アラブ人の航海用の保存食だったという説もあるそうですね。


アラブ人から伝わったかどうかは別として、現在のトラビーアの町のキャッチフレーズは、「スパゲッティの故郷」。

トラビーア市のhpには、ローマのパスタ博物館所蔵の『パスタの絵』が誇らしげに載っています。




トラビーア1154年、ジェノヴァ1244年、ナポリ1295年、ボローニャ1338年と書いてありますねえ。
各町で見つかった歴史的なパスタの記録が記された年ですね。



スパゲッティの歴史の話、次回に続きます。



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関連誌;『クチーナ・エ・ヴィーニ』2008年6月号
“パスタ”の記事の解説は「総合解説」07&08年6月号に載っています。

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ジェラートはパンとの相性も良いデセール。シチリアとナポリの人のジェラートの食べ方は、ほんとに自由。

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