2016年6月23日木曜日

カルロフォルテのマグロ料理

今日は今月の「総合解説」から、最も印象に残ったパスタの話。

「マグロの島、カルロフォルテ」の記事の“サルシッチャとマグロの赤身のロリギッタス”です。

個性的なパスタが多いサルデーニャの、予想の斜め上を行く意外な形のパスタ。
生地を細長く伸ばすところまでは普通のパスタの作り方ですが、そこから先が個性的。
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乾麺でも使うのかと思ったら、リチェッタは麺を手作りするところから始まりました。
そしてこれが意外と簡単。
出来上がりは、サルデーニャの家庭料理の濃厚な香りが漂ってきそうなパスタです。

で、今回は、サルデーニャのマグロの島、カルロフォルテの料理として紹介されているリチェッタなので、当然マグロが入っています。
マグロのパスタなんて珍しいなあ、と思ったのですが、数々のマグロ料理のリチェッタを訳しているうちに、複雑な気持ちになりましたよ。

私たちが知っているマグロ料理とは、まったく違うのです。
何しろ、一昔前まで、島で水揚げされたクロマグロの美味しいところは、全部日本に輸出されていたのです。
島のマグロの食文化は、日本人が買わない、つまり、食べない部位を、いかに美味しく食べるか、という工夫からすべてが始まっているのです。
日本人が食べないマグロの部位って、どこだと思います?
マグロの内臓や尾、または赤身のオイル漬けや塩漬けの干物です。

例えば、干した胃袋はベルと呼ばれています。
マグロのトリッパなんていうのもあるんですねえ。
マグロの内臓の中ではなかなかの珍味と言われているらしいですよ。
じゃがいもと一緒にトマトや白ワインで煮ます。
イタリアンだと、こうくるかあ的な感じでなかなか美味しそう。

カルロフォルテ風という名前が付いたマグロのローストは、尾の身を厚さ1㎝の筒切りにして油で揚げ、にんにくとローリエを熱した油と白ワインで香りづけし、トマトソースとビネガーを加えて柔らかくなるまで煮る、というもの。
尾にはコラーゲンが豊富に含まれているそうなので、尾の筒切りの大きさからしてなかなかゴージャスな一品になりそう。

新鮮な中トロや大トロといった部位に適した調理方法というのももちろん知られていますが、その他の部位は、手の込んだ自家製オイル漬けにすることも多いようです。
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ロリギッタスに使うマグロも、ボッツォナッリアと呼ばれるオイル漬けです。
白いんげんと一緒に煮込んでファジョラータにするそうです。
ファジョラータはラテン系の国々の定番家庭料理。
日本のお母さんは思いつかないだろうなあ。




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“マグロの島、カルロフォルテ”の記事とリチェッタの日本語訳は、「総合解説」13/14年6月号に載っています。
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2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

夏の地中海、トスカーナのリゾート地Casteglione della Pescaia でクルーザーに乗りマグロ釣りをしたことがあります。勿論オーナーは漁師ではなくスポーツとしてのお愉しみ。餌はバケツに入った鰯。沖に出て鰯を船から蒔きながらマグロをひたすら待ちます。この日は友人のクルーザーと2台でトランスレシーバー(イタリア人は好きですね。猪狩りでもよく使います)で連絡を取りながらマグロを見かけたら集合。40キロ級が3匹釣れました。港に戻りクレーンを使って重さを量ってからすぐ解体。船の上から電話をかけていたなと思ったら、港には案の定日本の商社が待っていてトロの部分を早速お買い上げ。残りはいくつかに切り、大鍋で火をゆっくり入れてから壜に詰め自家製のマグロのオイル漬けが完成。マグロの絵入りラベルも用意されていて何個かもらいましたがおいしかったです。イタリアはなんでも瓶詰めにして保存するのが上手ですね。
Itagliamama

prezzemolo さんのコメント...

Italiamamaさん
トスカーナ沖でマグロ釣りですか。サルデーニャ経由で回遊してきたクロマグロかな。
そんな時代もあったんですねー。
3尾でも日本人商社マンが買い付けにくるなんて、すごい。
売れ残りでも、釣りたてをすぐ加工したら、美味しいオイル漬けになるんだろうなあ。
今回もとても面白い話、ありがとうございます。

マリア・ルイジアの小さな街、パルマのバターとグラナの娘、アノリーニ。本物は牛と去勢鶏のブロードでゆでます。

昨日の最後にサラっと登場したアノリーニですが、このパスタ、(CIR12月号P.5)にもリチェッタが載っていました。クルルジョネスの次の料理です。花の形の可愛い詰め物入りパスタ、なんていうのがこのパスタの印象ですが、イタリア人は、こんな風に思ってるんですね。 「マリア・ルイジアの小...