2015年10月5日月曜日

ゆでる

今日は、今月の「総合解説」料理の基礎シリーズの記事から、“ボッリート”と“レッソ”について。

イタリア語だとbollitoとlesso。

イタリア料理用語の基礎中の基礎ですから、もちろん皆さま両者の違いは、よくご存じでしょう。
ところが、これを日本語にしようとすると、適切な言葉が見つからない。
どちらも“ゆでる”という意味ですが、そのゆでる目的と出来上がったものは、明確に違います。
つまり、イタリア語には、ゆでるという意味の言葉が少なくとも2つあるのです。
でも、イタリア人でも両者の違いがよく分かっていない人もいるようなので、ちょっとだけ専門的な話になります。

その答えは「総合解説」に書いてありますのでご覧ください。
で終わりでもいいのですが、一応、解説の解説です。

ボッリートという名前の料理はありますが、レッソという名前の料理は、あまり見たことないのでは?
これは大きなヒントです。

様々な部位の牛肉をゆでるピエモンテ風ボッリート
 ↓



一方、レッソは鶏肉や野菜によく使う調理方法です。


答えを簡単に言ってしまえば、ボッリートはゆでる食材の味を活かすゆで方で、レッソはゆで汁を美味しくするためのゆで方。
つまり、味を肉に閉じ込めて肉を食べるのと、味をゆで汁に溶け出させてブロードにする方法。

ここで問題です。
和食を代表する料理、しゃぶしゃぶは、ボッリートでしょうか、レッソでしょうか。

うーん、悩むなあ。

実は、以前にも書いたことがある気がするのですが、カルロ・クラッコシェフは、その著書、『ディーレ・ファーレ・ブラザーレ』の“LESSARE”の章で、レッソの調理方法について実に7ページに渡って詳細に分析しつつ、レッソの一つ、日本のしゃぶしゃぶについても深い洞察力で語っています。
彼の初しゃぶしゃぶは日本を訪れたマルケージ氏が驚いた調理方法として作ってくれたものを食べたのだそうです。
彼もかなり衝撃を受けたようで、信じられないテクニックだと書いています。
ボッリートとレッソのゆで方がしみこんでいる国の人からすれば、薄く切った牛肉(クラッコシェフはカルパッチョのようと説明しています)を、だし汁でさっとゆでるだけで、肉も美味しくいただけるし、だし汁も美味しくなるというのは、画期的な調理方法だったのでしょう。

ちなみに、彼の本では、ゆでる調理方法をもう一つ挙げています。
それはスビアンキーレsbianchireです。

クラッコ氏は、イタリアの家庭料理で野菜をゆでると言えば、熱湯に野菜を入れて完全に柔らかくなるまでゆでることだと説明します。
そうそう、これこそが、初めてイタリアでゆで野菜を食べたときに感じた別物感。
日本のゆでると、イタリアのゆでるは違う。
そこで料理人に必要なのが、スビアンキーレのテクニックだと、シェフは語ります。

つまり、沸騰した熱湯に野菜を入れてゆでたらすぐに取り出して氷水で冷やす。
この方法だと色と歯ごたえが活かせます。

考えてみれば、日本では、この方法はよく使いますよね。
野菜だけでなく、麺にまで。

こんな調子で、カルロ・クラッコ氏の本はとても興味深い内容がいっぱいです。
ついでですので、次回はlessareの章をもう少し訳してみます。



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“ボッリート/料理のシリーズ、牛肉編”の記事の日本語訳は、「総合解説」13/14年1月号に載っています。
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