『クチーナ・エ・ヴィーニ』の記事の解説です。
ファルソマーグロ falso magro (またはファルスマーグル falsumagru )は、シチリアの代表的な肉料理の一つ。
ファルソマーグロ, photo by Nick Lüthi
“ファルソ”とは、「うその」とか、「にせの」という意味。
“マーグロ”は、「やせた」とか、「肉が入らない、野菜や魚だけ」、「赤身」という意味。
つまりくだけて言うと、「一見、やせているように見える」(着やせする人?、隠れメタボ?)とか、「実はこってり」、ということ。
料理の言葉なら、「野菜のようでも実は肉」、または「あっさりしているようで実はこってり系」。
イメージとしては、逆精進料理?
でも、このファルソマーグロ、どこから見ても立派な肉料理。
肉が入っていないように見える料理には見えないです。
と言うか、ほとんど全部肉です。
実態にそぐわないこの名前。
でも、『クチーナ・エ・ヴィーニ』の記事にもあるように、その由来を知ると、なーるほどと納得します。
この“ファルソマーグロ”という言葉、フランス語の“ farce maigre ファルス・メーグル”が語源だったんですねー。
フランス語の“ファルス”は「詰め物」のこと。
“メーグル”はイタリア語の“マーグロ”と同じ。
つまり、“ファルス”というフランス語を、発音がよく似たイタリア語の“ファルソ”に置き換えてしまった訳です。
スペルはfarceとfalsoで、微妙に違うんですが、細かいことは見て見ないふりしたのか・・・。
この料理がシチリアに広まったのは、13世紀にフランスのアンジュー家が島を支配していた時代と言われています。
つまり、元々はフランスから伝わった貴族階級の料理だったらしい。
フランス料理の“ファルス・メーグル”は、野菜の詰め物をした料理のこと。
当然、当初はフランス語で“ファルス・メーグル”と呼ばれる、野菜の詰め物をした料理だったはず。
それが、シチリアの庶民階級に広まっていくにつれて、野菜が入っていないように見える料理、という、正反対の意味の名前に変身してしまったとは。
しかも例によって、各家庭ごとに無数のバリエーションがどんどん誕生しました。
その結果、野菜が入っていないように見えるどころか、野菜がほぼ入っていない肉料理になってしまったのでした~。
ただし、この料理、詰め物を覆うのは、子牛の“赤身”、つまりマーグロな肉。
だから、カットする前は赤身肉の料理のように見える、という、ちょっとあとづけ的な解釈も成り立っています。
ファルソマーグロのリチェッタは色々ありますが、シンプルなのを1つどうぞ。
カターニア風ファルソマーグロです。
原文はこちら。
↓
www.gennarino.org
カターニア風ファルソマーグロ Falsomagro alla catanese(Falsomagro in bianco:versione senza pomodoro)
材料/ 子牛もも肉・・400g スライスしたパンチェッタ・・100g 赤身の牛挽肉・・250g 卵・・5個 パンのクラム・・50g 牛乳 パルミジャーノ・・70g ナツメグ 塩、こしょう 玉ねぎ・・1個 白ワイン・・100cc オリーブオイル・・30cc 小麦粉・・15g ブロード・ディ・カルネか野菜のブロード・・レードル2杯 ・肉を開いて叩き、パンチェッタで完全に覆う。 ・挽肉、卵1個、パン(牛乳に浸す)、パルミジャーノ、塩、こしょう、ナツメグをよくこねて肉の上に広げる。 ・卵4個をゆでて殻をむき、肉の中央に一列に並べる。 ・肉を巻いて(必要なら縫って閉じる)糸で縛る。 ・ロールを油で焼く。 ・玉ねぎのみじん切りを油で炒め、ロールを入れて熱する。ワインをかけてアルコール分を飛ばす。 ・プロードを加えてアルミ箔で覆い、さらに蓋をする。とろ火で30分煮る。 ・ロールを取り出して冷まし、厚くスライスする。 ・一般的なコントルノは、玉ねぎのソッフリットに入れて炒めたグリーンピースにファルソマーグロの煮汁少々をかけてなじませたもの。 |
この他に、サルシッチャやサラミが入るリチェッタもあります。
このタイプの肉料理はイタリア各地にありますよね。
家庭料理の定番。
中央に燦然と輝くゆで卵を見ると、食べたくなるなあ。
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関連誌;『クチーナ・エ・ヴィーニ』2007年7/8月合併号(クレアパッソで販売中)
ファルソマーグロの話は、「総合解説」'06&'07年8月号、P.32に載っています。
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