今日はチーズの話。
『サーレ・エ・ペペ』の記事、「チーズ風味/定番DOPチーズを使った料理」の解説です。
ちょうどリクエストもいただいたので、まずはゴルゴンゾーラから。
ゴルゴンゾーラgorgonzolaは、パルミジャーノ・レッジャーノと並んでイタリアが世界に誇るDOPチーズ。
殺菌した牛の全乳のパスタ・クルーダのブルーチーズです。
パスタ・クルーダpasta crudaとは、カード(凝乳)をカッティング後に加熱しないタイプ。
モッツァレッラもこのタイプ。
ちなみに、加熱するタイプはパスタ・コッタpasta cotta。
このタイプの代表的なものはパルミジャーノ・レッジャーノ。
コッタより低温で加熱するタイプはパスタ・セミコッタpasta semicotta。
こちらはフォンティーナやアジアーゴなど。
つまり加熱の温度が高いものほど硬質チーズになる訳です。
イタリアではチーズの分類をする時に、パスタ・コッタやパスタ・クルーダという言葉をよく使います。
ブルーチーズはイタリア語では、フォルマッジョ・エルボリナートformaggio erborinatoと言います。
“エルボリナート”とは、ロンバルディアの方言でプレッツェーモロという意味の“エルボリンerborin”が語源。
青かびの筋が入っている様子が、プレッツェーモロが詰まっているように見えたところからこう呼ばれるようになったようです。
“青かびチーズ”の語源がロンバルディアの方言であることからも分かる通り、ブルーチーズはイタリアでは北部の伝統に属するチーズです。
ゴルゴンゾーラも、ロンバルディアとピエモンテで作られています。
管理組合の所在地は、ピエモンテのノヴァーラ。
ゴルゴンゾーラがメジャーになったのは20世紀に入ってからですが、それは、イタリア中に広まったというより、外国で人気が出たのがきっかけでした。
特に、イギリスではマイルドタイプ、フランスとドイツでは味の強いタイプが好まれました。
DOPになったのは1996年。
でも、10世紀には既に知られていたという歴史の古いチーズです。
10世紀と言えば、日本では平安時代。
ゴルゴンゾーラがどこでどうやって生まれたのか、誰も知らないのも無理からぬこと。
ゴルゴンゾーラDOPの管理組合(webページはこちら)でも、諸説ある誕生伝説のうち、879年にゴルゴンゾーラ村で生まれた、とか、チーズ造りに適した天然の洞穴があるパストゥーロ村で生まれた、と言った説がある、と紹介しています。
どちらもロンバルディアの村。
言い伝えの中でも有名なのは・・・
農家の若者がデートに夢中になって加熱鍋にカードを入れたまま一晩中忘れてしまった。
翌日、それを出来たてのカードに加えてかき混ぜてみたら、完全に混ざらずに隙間が出来て、そこにカビが生えた。
または、
ゴルゴンゾーラ村の宿屋の主人が、カビの生えたストラッキーノを捨てるのがもったいなくて客に出したら大人気になった。
という話。
確かに、これらの話をうまくミックスすると、ゴルゴンゾーラが出来上がります。
管理組合によると、そもそも、よく分からないゴルゴンゾーラの歴史が最初に具体的に見えてきたのは、ストラッキーノ・ディ・ゴルゴンゾーラというチーズが知られるようになってから。
このチーズは、別名ストラッキーノ・ヴェルデとも呼ばれていました。
ストラッキーノとは、夏の放牧地から下りてきた牛の秋のミルクから作るチーズで、その中でも、ゴルゴンゾーラと呼ばれるチーズは、緑色のストラッキーノ、つまり青かびチーズだった、ということを証明している訳です。
中世のゴルゴンゾーラ村は、山の放牧地から下りた牛が帰り道に必ず通る場所でした。
ゴルゴンゾーラ村以外でも広く作られていたチーズにゴルゴンゾーラという名前がついたのは、そのあたりの理由からではないかとも言われています。
ゴルゴンゾーラの話、次回に続きます。
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関連誌;『サーレ・エ・ぺぺ』2008年1月号
“チーズ風味”の記事のリチェッタは、「総合解説」'08&'09年1月号に載っています。
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