今日はマルケのパスタの話。
『サーレ・エ・ペペ』の解説です。
マルケのパスタと言えば、ヴィンチズグラッシvincisgrassi。
・・・・・。
イメージが浮かびにくいパスタですよねえ。
ブロデットやアスコリのオリーブと並ぶマルケの代表的な料理なのに、地元以外では今ひとつマイナー。
要はラザーニャの一種です。
外見は普通のラザーニャと変わりはないのですが、中にはなかなかゴージャスな具が詰まっています。
バリエーションは無数にありますが、定番は各種の肉(鴨やうさぎ肉が入る場合もあります)、鶏の内臓、トリュフなど。
こんな料理です。
これ↑は、ヴィンチズグラッシ祭りのポスターですね。
このお祭りは、毎年カルトチェートの中央広場で開催されています。
次回は2011年6月半ば。
ヴィンチズグラッシの話をする時に必ず出るのが、その名前の由来のこと。
もっとも信用されている説は、1779年にアントニオ・ネッビアが書いた、『Cuoco Maceratese』という本に出てくる料理、“Princisgras(プリンチスグラス)”だという説です。
ネッビアは貴族の料理人でした。
彼の本は、マルケ料理を体系的にまとめた最初の本として、特に新興の富裕市民層に広く読まれ、アルトゥージの本が登場するまでは、イタリアで最も信頼されていた料理書だったのだそうです。
ちなみに、マチェラータの商業会議所では、この本の1786年版を現代語訳で復刻して出版しています。
マチェラータ市によると、“Princisgras”とは、grasso da principiという意味だそうですが、それがどういう意味なのかは、どうもはっきりしません。
直訳すれば、領主さまのためのこってり料理、とでもいったところですが、ラテン語がどうの、内臓がどうの、というあいまいな説明があるだけです。
その後、別の料理書にも似たような名前(ミッスグラッセ、ヴィグラス)のパスタ料理が登場しています。
これらもソースには内臓が入っています。
マルケの都市伝説なら、もっとすっきりこの名前の由来を説明できます。
それは、1799年にオーストリア軍のヴィンディッシュ・グレーツ将軍がマルケを通った際にこの料理をふるまわれて、その味をたいそう褒め称えた。
そこでこの料理を彼に捧げて将軍の名前で呼ぶようになり、それがなまってヴィンチズグラッシになった、というもの。
言われてみれば、なんとなくドイツ語風に聞こえなくもないような・・・。
魅力的な説ですが、真実性は今ひとつ。
どれが本当なのか真相は謎ですが、“プリンチスグラス”より“ヴィンチズグラッシ”の方がマルケの人にとっては言いやすかったのは確かなよう。
現代版のヴィンチズグラッシは、パスタにトマトで煮たラグーをはさんでオーブンで焼きます。
トマトの栽培がヨーロッパに広まったのは18世紀末のこと。
オーストリアの将軍が食べたパスタにトマトが入っていたかどうか、微妙なところですねえ。
おそらく、元々は白いラグーの料理だったのでしょう。
ヴィンチズグラッシ
上のリチェッタだと、普通のラザーニャのように見えますねえ。
ヴィンチズグラッシは貴族の料理ではなく農民の料理だと言う人もいます。
この動画のシェフ(カルダローラのイル・カステッロのシェフ)もその1人です。
肉はボッリートやロースト用以外の残りの部位を使い、ベシャメルもかけない、というのがポイント。
ベシャメルをかけるかかけないか、そこが分かれ目です。
オリジナルにこだわるなら、ベシャメルなしがマルケ流。
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関連誌;『サーレ・エ・ペペ』2007年11月号
“ヴィンチズグラッシ”のリチェッタは、「総合解説」'07&'08年11月号に載っています。
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2 件のコメント:
うーみゅ、またしてもマチェラータに行きたい理由ができたぞ!
あと、da feliceはティラミスも名物だったのですね。ティラミスなんてあまりに定番すぎて見過ごしてしまうけど、今度から定点観測してみようかな(笑)
くるりさん
私も次にマルケに行ったら(いつになることやら)、あれこれ食べたいもんです。
Da Feliceのグラス入りティラミス、名物なんだそうですよ。パート・シュクルとトッピングのチョコレートの組み合わせ、すごく面白そうです。
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