『ヴィエ・デル・グスト』の解説です。
ヴェネチアの名物プリーモ・ピアットと言えば、イカ墨のリゾット。
イカ墨の“スパゲッティ”ではなく、“リゾット”。
ヴェネチアならリゾットです。
中世、米はとても高価なものでした。
スパイスと一緒に香料商人が扱う品物で、粉にして薬として、あるいはスープにとろみをつけるなどのために使われていたそうです。
海洋共和国として貿易で富を築いたヴェネチアなら、得意分野の食材ですね。
16世紀になると、北イタリアに米の栽培が広まります。
北部は米、中部と南部はパスタ、というイタリアの構図の出来上がりです。
ヴェネチアにもヴェローナなどで作られた米が入るようになり、16世紀には米はヴェネチア料理の主役の食材になります。
ヴェネチアでプリーモ・ピアットと言えば、米かポレンタでした。
イカ墨のリゾットの他にも、地元以外でもよく知られているリゾットがあります。
リジ・エ・ビジです。
グリーンピースのリゾットですね。
この料理、グリーンピースご飯だと思ってしまうと、今ひとつレストランで注文する気にならないのですが、なんでもヴェネチアの市民的料理なんだそうですよ。
ヴェネチアの守護聖人サン・マルコの祝日(4月25日)には、街中でリジ・エ・ビジを食べるんだとか。
元々は、ヴェネチアの初物のグリーンピースをまず大公が味わって、それから下々が食べたようですね。
その日はみんなが食べるからヴェネチアのグリーンピースだけでは足りなくて、早生のグリーンピースができるリグーリアからわざわざ取り寄せて作ったのだそうです。
下の動画は2009年のサン・マルコの祝日のサン・マルコ広場。
ちなみにヴェネチアでは、同じ4月25日は「つぼみの日」でもあります。
男性が好きな女性にバラのつぼみを1輪贈るんだそうで。
イタリアン(キザ)な伝統だあ。
リジ・エ・ビジは、厳密に言うとリゾットとは違います。
伝統的なリチェッタでは、米は炒めません。
でも、これ以外にも様々なバリエーションがある料理です。
下の動画のリジ・エ・ビジは、ヴェローナ料理として紹介されています。
正確に言うなら、リジ・エ・ビジは“ヴェネト料理”ですね。
この動画のリジ・エ・ビジは、
まず生のグリーンピースをゆでて氷水に取ります。
そして皮をむき、皮とグリーンピース少々を撹拌してピューレにします。
リゾットに粒のグリーンピースとピューレを加えてマンテカーレ。
イタリアの米料理は水分の残し具合ととろみの強さによって様々なバリエーションがありますが、この動画の料理は一般的なリゾットの状態に仕上げていますね。
子羊肉がトッピングされて、見栄えもボリュームもレストランの一品。
『LA CUCINA VENEZIANA』(Marcello Brusegan著、Newton Compton出版)には、伝統的なリチェッタとシェフのリチェッタの2点が収録されています。
まずは伝統的なリチェッタをどうぞ。
■リジ・エ・ビジ Risi e bisi(Riso con i piselli)
材料/6人分 米(ヴィアローネ)・・400g グリーンピース・・1.2㎏ パンチェッタ・・60g 玉ねぎ・・1個 プレッツェーモロのみじん切り・・大さじ2 ブロード・ディ・カルネ・・1.5リットル おろしたチーズ・・大さじ4 塩、こしょう |
・グリーンピースをさやから出して洗い、パンチェッタ、玉ねぎ、プレッツェーモロのみじん切りと一緒にソッフリットにする。レードル2杯のブロードと塩を加えて弱火で煮る。 ・これに残りのブロードをかけて沸騰させ、米を加えてかき混ぜながら煮る。 ・火から下ろす少し前にチーズとこしょうを加える。数分休ませてからサービスする。 グリーンピースのさやをゆでて薄緑色のゆで汁を取り、これをブロード・ディ・カルネに加えると色のきれいなリジ・エ・ビジができる。 |
次はBistrot de Veniseのシェフ、アントニオ・ブーフィ氏のリチェッタ。
店のhpはこちら。
■リジ・コン・イ・ビジ Risi con i bisi
材料/6人分 米(ヴィアローネ・ナーノ)・・6カップ グアンチャーレ・・100g 生のグリーンピース・・500g 白玉ねぎ・・1個 バジリコ・数枚 グリーンピースのさやを加えて取った野菜のブロード 黒こしょう オリーブオイル フレッシュチーズ |
・玉ねぎの薄切りとバジリコを油でじっくり炒め、グリーンピース300gを加える。ブロードで覆って煮てミキサーにかけ、塩味を調える。 ・グアンチャーレを少量の油で炒め、米を加えて軽く炒める。ブロードをかけ、ブロードを足してかき混ぜながらリゾットの要領で煮る。最後はグリーンピースのピューレと残りのグリーンピースも加える。厳密にはリゾットではないので煮汁をやや多めに残して仕上げる。 ・仕上げにたっぷりのこしょう、オイル、おろしたチーズでマンテカーレする。 |
こちらの動画では、Bistro de Veniseとアントニオシェフのリジ・エ・ビジが紹介されています。
29分と長いです。
リジ・エ・ビジを作るのは04:50~07:50。
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関連誌;『ヴィエ・デル・グスト』2008年4月号
“リジ・エ・ビジ”の記事の解説は「総合解説」'07&'08年4月号、P.31に載っています。
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