ババの話、その2です。
ナポリを代表するパスティッチェリーア、スカトゥルキオのババ
photo by francescominciotti
元ポーランド王レシチニスキが、フランスのロレーヌ公国で、クグロフからババを考え出したのは1740年代のこと。
このお菓子が、いったいどうしてナポリ名物になったのでしょうか。
当時のイタリアは、フランス、スペイン、オーストリアにあちこちを支配されて、その運命をもてあそばれていた時代です。
列強は、あっちを取ってはこっちを手放し、の繰り返し。
イタリアのどの地方がどの国の支配下にあるのか、もうごちゃごちゃで何が何だか・・・、という状況でした。
そもそも、レシチニスキがポーランドの王位を放棄し、その見返りにロレーヌ公国を与えられたのは、1733年に始まったポーランド継承戦争というのが原因でした。
フランスに後押しされたレシチニスキと、オーストリアやロシアが味方についたフリードリヒ・アウグスト2世が、ポーランドの王位をめぐって戦ったのです。
実はこの戦争が、ババがナポリの名物ドルチェになるそもそものきっかけでした。
最初レシチニスキは劣勢で、ロシア軍によってポーランドから追い払われ、フランスに亡命します。
ところがここで、スペインがレシチニスキの味方に付きました。
スペインは、オーストリアに取られたナポリとシチリアが欲しかったのです。
そして目論見通り、ナポリとシチリアの占領に成功します。
1738年、和平が成立して、領土の再編が行われました。
その結果、レシチニスキはポーランド王位を放棄し、オーストリアの勢力下にあったロレーヌをもらいます。
それまでロレーヌ公だったフランツ・シュテファンは、トスカーナ大公国を与えられました。
スペインはナポリとシチリアを取り戻し、その代わりに、パルマ公国をオーストリアに譲りました。
シロウトには、誰が得をして誰が損をしたのか、まったく分かりませんねー。
こういうのを丸く収めると言うんでしょうか。
そしてナポリですが、ここは13世紀からスペインの支配を受けていました。
ちなみに、この間のナポリの扱いは、植民地。
スペインに搾取されて、いわゆる「貧しい南部」となっていく下地が作られていきます。
ポーランド継承戦争後にナポリの支配者となったのは、カルロ7世。
後のスペイン・ブルボン朝の王様です。
スペイン・ブルボン朝というと、スペインなんだか、フランスなんだか、よく分からない名前ですねー。
実は、フランス・ブルボン朝のルイ14世の孫が、スペイン王として即位したために生まれた王朝なんです。
フランスとは血の繋がりがあったんですね。
現在のスペイン国王も、スペイン・ブルボン家の方なんだそうですよ。
スペインのおかげて敗北を免れた元ポーランド王。
元ポーランド王を口実に、ナポリを取り戻したスペイン。
その元ポーランド王が考え出したお菓子が、スペインが支配するナポリに伝わったのは何の因果か・・・。
ババは、まずナポリの支配階級の間に伝わりました。
富と権力をがっちり握っていた彼らの屋敷では、モンズーと呼ばれるお抱え料理人が料理を作っていました。
“モンズー”とは、フランス語の“ムッシュー”の南イタリア訛りです。
南イタリアの支配階級は、フランス風の料理が大好きでした。
そのため、料理人もフランスから呼び寄せたりしたんですね。
彼らがナポリにババを伝えたとする説が、有力のようです。
ババの話、次回はリチェッタです。
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関連誌;『ヴィエ・デル・グスト』2008年2月号
“ババ”の記事の解説は、「総合解説」'07&'08年2月号、P.31に載っています。
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2009年7月13日月曜日
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2 件のコメント:
ババ食べてみたいです。
シロップ漬けなら、どこかで手に入るかな?
さがしてみま~す!
littlesugarさん
ババのことを書いていたら私も食べたくなってきました。ラム酒がたっぷりしみ込んだやつ。
日本ではアルコールたっぷりのタイプはまずお目にかかれないので、イタリアに行ったら必ず食べます(笑)
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