2009年7月8日水曜日

ラディッキオ、その2

今日はラディッキオの話、その2です。
『ヴィエ・デル・グスト』の記事の解説です。



左の丸いのはラディッキオ・ロッソ・ディ・キオッジャ、右の長いのはラディッキオ・ロッソ・ディ・トレヴィーゾ・プレコーチェ, photo by Jeremy Cherfas


ラディッキオ・ロッソ・ディ・トレヴィーゾ・タルディーヴォは、「冬の花 fiore d'inverno 」、というのがキャッチフレーズ。
11月に、最低2回は霜をかぶった後に収穫されるんだそうです。
でも、収穫してすぐに出荷するのではなく、その後数週間かけて軟白栽培するということは、前回の動画でご覧の通り。

この栽培方法が発見された経緯ははっきりしていませんが、言い伝えによると、19世紀末、ある農民が、家畜小屋に忘れ去られていたラディッキオを見つけて外側の葉を取り除いてみたところ、中から柔らかくて若い葉が出てきたのがきっかけだったとか。
つまり、ラディッキオは一度収穫しても、中心から再び芽が出てくる。
そしてその若い芽は、外側の葉に覆われているために光を浴びず、柔らかくて白くなる、ということを誰かが偶然発見したわけですね。


ラディッキオ・タルディーヴォの掃除の仕方を体験中






そう言えば、バッサーノのホワイトアスパラガスにも、似たような言い伝えがありました。
時は1545年、北イタリアのトレントで、カトリック教会の公会議という大きな会議が開かれた時のことです。
この会議には、各地から司教たちが集合しました。
司教たちは、主にヴェネチアを経由してトレントまでやって来ます。
ヴェネチアとトレントの中間にあったのがバッサーノの町。
農民たちは、これは商売のチャンスと大喜びです。
町を通る司教の一行に、アスパラガスを売って一儲けしよう、と考えたのです。
ところが、誰の行いが悪かったのか、突然ひょうが降って畑のアスパラガスがやられてしまいます。
みんながっくりしている中、諦めきれない一人の農民が、土地の中に埋まっていたために被害を受けなかったアスパラガスを掘り起こしてみました。
するとそのアスパラガスは、真っ白でとても柔らかく、上品な味をしているではないですか。
これだー!
という訳で、バッサーノの農民たちは、その白いアスパラガスを司教たちに売ってみることにしました。
結果は、売行き上々で大成功です。
しかもトレント公会議は、なんと20年も続いたんですねー。
その間に、バッサーノのホワイトアスパラガスの評判は、あちこちに広まっていったのでした・・・。


話が横道にそれました。
最後に、ラディッキオ・ロッソ・ディ・キオッジャ(トレビス)のリゾットのリチェッタをどうぞ。
『サーレ&ペペ』2007年1月号の、うずらをのせたリゾットです。
ワインレッド色が不思議なムードを出してますが、赤ワインは一滴も入っていません。




ラディッキオ・ロッソのリゾット、うずら添え Risotto al radicchio rosso con quagliette panna e salvia

材料:6人分
 米(カルナローリ)・・280g
 掃除したうずら・・4羽
 玉ねぎのみじん切り・・大さじ1
 ラディッキオ・ロッソ・ディ・キオッジャ・・小1個
 セージ・・2枝
 ブロード・ディ・カルネ
 生クリーム・・大さじ2
 おろしたパルミジャーノ・・40g
 白ワイン
 バター・・160g
 塩、こしょう

・うずらの中と外に塩、こしょうをし、セージ2枚を詰める。バター80gと残りのセージで表面を焼き、蓋をして180度のオーブンで35分焼く。20分焼いたところで生クリームを加える。
・うずらの焼き汁を漉して塩、こしょうで調味する。
・玉ねぎをバター40gでしんなり炒め、米を加えて炒める。ワインをかけてアルコール分を飛ばし、熱いブロードをかけながらリゾットに煮る。
・10分煮たところでみじん切りにしたラディッキを加える。
・リゾットが煮上がったら火から下ろし、残りのバターとパルミジャーノでマンテカーレする。
・リゾットを皿に盛りつけてうずらをのせ、うずらのサルサをかけてセージで飾る。




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関連誌;『ヴィエ・デル・グスト』2008年2月号
“ラディッキオ”の記事の解説は、「総合解説」'07&'08年2月号、P.29に載っています。


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5 件のコメント:

Vittorio さんのコメント...

野菜もいろいろなエピソードがあって成功の基になるんですね、

そういう歴代があったんですね、

いいですねこういうお話、使い手もこういうことを思いながら使って行きたいと思います。

ラディッキオも苦味があるからサラダの色合い的にしか使ってなかったんです

ラディッキオとウズラもいいですね。

懐かしいリゾット、作りたくなっちゃいました。

カルナローリ…懐かしい響きです、イタリアでは使っていたのですが、ウチではまだ使ったことがないんです、今度、有機の方を使ってみたいです。

prezzemolo さんのコメント...

Vittorioさん
イタリアのお米は日本のものとはやっぱり違うし、そもそも、食べ方が違うからまったく別のものという気がします。
日本のレストランでイタリア米を使ったリゾットを、イタリアのリゾットを食べたことのない人に出すというのは、きっと難しいことなんだろうなあ。

Vittorio さんのコメント...

同感です、

今度、私の趣味の月に一回の試食会がありますので、有機カルナローリを取り寄せて反応をみてみたいです。

くるり さんのコメント...

なんか発見の経緯がいつも伝説めいていて、不思議な国だなぁ。日本の温泉発見時のエピソードに似てていかにもあやしい話が多い(笑)
ところでウズラとラディッキオのリゾット、めちゃくちゃうまそうですね。ウズラを合わせるのがいいなぁ。でも日本じゃ食べられそうにないなぁ。日本人はどうしてあんなにパスタが好きなんだろう。

prezzemolo さんのコメント...

くるりさん
うずらもイタリア米のリゾットも、日本ではなかなかお目にかからないですよねー。
ヴェネトはリゾットが名物だから、今度行ったら、もっとちゃんとリゾットを食べようと思ってます。
この前ヴェネト(ヴェネチア)に行った時は、イカ墨のスパゲッティなんて超観光客向け料理ばかり食べてました。少なくともあれは、イカ墨のリゾットにするべきだった~。

バッカラはノルウェーとイタリアを結ぶ干物貿易の主役で、この航路は1450年作成の世界地図にも記載されるほど重要でした。

(CIR12月号)によると、ヴィチェンツァでは、この料理はCが1つなんだそうです。普通はバッカラはbaccalàでも、ヴィツェンツァでは、Cがひとつのバカラ。んなばかな、と思ったけど、地元のこの料理の専門家たちは、C一つで呼んでました。会の名前の刺繍もC一つ。リチェッタはP.11...