今日はパスタの話。
『サーレ・エ・ペペ』の解説です。
今回取り上げるパスタは、ガルガネッリgarganelli。
ガルガネッリ(これはカボチャを練りこんだバージョン)
ガルガネッリは、エミリア・ロマーニャ州の伝統的なパスタの1つ。
詳しく言うなら、ロマーニャ地方がルーツとされています。
ロマーニャ地方とは、エミリア・ロマーニャ州の右側、ボローニャの東の一部と、ラヴェンナ、フォルリ、リミニの一帯。
この地方のパスタですから、やはり麺は卵入りの生パスタ。
筋付きペンネによく似た形をしていますが、ペンネとは筋の向きが違います。
乾麺のペンネ・リガーテ
ガルガネッリの最大の特徴は、やはり筋。
横向きについたこの細かい筋は、“ペッティネpettine”と呼ばれる道具でつけます。
上のほうにあるのがペッティネ
ペッティネと専用の細い棒で筋をつけます
ペッティネとは、布を織る織機の部品の名前です。
日本では“筬(おさ)”とか“リード”と言うようです。
しくみはこういうもの。
↓織機のペッティネの使い方。
この画面で縦糸が通っている黒い部分。
横糸を通した後に手前に寄せる時に使います。
考えてみれば、昔は布を人の手で織っていたわけで、織機が家庭に普通にあったとしても、何の不思議もないですよねえ。
そのうち誰かが、ペッティネに麺をのせて筋でもつけてみようか、と考えたとしても、何の不思議も・・・。
???
いやいや、それはかなり不思議。
『サーレ・エ・ぺぺ』でも紹介していますが、このペッティネで最初にパスタに筋をつけた人については、ある伝説があります。
それは1725年のこと。
当時のイタリアは、トスカーナ大公国やヴェネチア共和国、オーストリアに支配された地域など、相変わらずこまごまと別れていました。
ロマーニャ地方はどこに属していたかと言うと、教皇領です。
ガルガネッリの伝説の舞台は、その教皇領のトップだった枢機卿の、イーモラの館。
ある日のこと、館では大事な客人を招いて豪華な晩餐会が開かれていました。
ところが厨房では、料理番の女性が頭を抱えていました。
特上のカッペッレッティ・イン・ブロード用の詰め物を、猫が食べてしまったようなのです。
詰め物なしのパスタでご馳走を作らなければ。
途方に暮れながらも、何とかしなければと頭をフル回転させた彼女。
あたりを見回すと・・・。
ん、これは織機のペッティネ?
糸を巻きつける棒もある。
そうだこれで!
なんで厨房にペッティネがあったのか、なんてKYな質問はしませんよ。
その都合のよさが都市伝説ってもの。
とにかく、カッペッレッティ用の四角い生地をペッティネにのせて、糸用の棒で押しながら巻いてみたら、なんとも素敵なパスタができあがったじゃありませんか。
これを去勢鶏のブロードでゆでたら、見事な一品の出来上がり~。
晩餐会は大成功でした。
ガルガネッリ誕生の伝説は他にもありますが、それにも教皇に関わる人が登場するので、どうやらかなりのご馳走として食べられていたようです。
ガルガネッリの話、次回に続きます。
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“ガルガネッリ・アッラ・ロマニョーラ”の解説は、「総合解説」2011年3月号に載っています。
解説では“ペッティーネ”となっていますが、正しくは“ペッティネ”です。
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1 件のコメント:
興味深いですね。アクシデントで料理は生まれてきたのですね。
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