イタリア料理ほんやく三昧: バッサ・パルメンセ

2011年11月24日木曜日

バッサ・パルメンセ

今日はバッサ・パルメンセ地方の話。
『ラ・クチーナ・イタリアーナ』の記事の解説です。


バッサ・パルメンセBssa Parmense。

あまり聞きなれない名前ですよね。
でも、クラテッロの産地に行ってみたいと思っている人なら、知っておいたほうがよい名前です。

バッサは「低い」という意味で、パルメンセは「パルマの」という意味。
つまり、パルマ県の中で一番標高の低い地域、という意味です。

パルマ県の地形は、はっきりと3つに分かれています。
一番北が平地でもっとも低く、中間は丘陵地帯、そして南は山地。
この3つの中でもっとも低い平地のことを、バッサ・パルメンセと呼びます。

パルマ県の地図

具体的には、パルマ県北部の、ポー河とエミリア街道にはさまれた部分がバッサ・パルメンセです。
上の地図でいうと、一番上の水色の線がポー河で、その下のまっすぐな緑色の線がエミリア街道。
この2つに挟まれた地区です。


101212_01_Il Po
バッサ・パルメンセのポー河



バッサ・パルメンセの中でも最も低い河沿いは、たびたび洪水に見舞われています。
さらに、河に近い地区ほど湿気が多く、冬は霧に覆われます。

『ラ・クチーナ・イタリアーナ』の記事にもある通り、
「バッサ・パルメンセに君臨するのはポー河で、気候も、歴史も、苦しみも、豊かさも、すべてポー河によってもたらされてきた」訳です。


↓ポー河周辺の霧







そして、このバッサ・パルメンセを代表する産物が、クラテッロculatello


クラテッロ・ディ・ジベッロCulatello di ZibelloはDOP製品です。

クラテッロは、豚のもも肉を塩漬けにして熟成させたもので、いわば生ハム。
でも、プロッシュットとは呼びません。

そもそも、パルマと言えば、イタリアを代表する生ハム、プロッシュット・ディ・パルマprosciutto di Parmaの産地。

ところが、パルマの生ハムの生産地区には、こんな決まりがあります。

「エミリア街道より最低5km南に離れていること」

つまり、エミリア街道より北にあるバッサ・パルメンサは、丸ごと全部、プロッシュット・ディ・パルマの生産地区から除外されているのです。

パルマの生ハムの生産地区


これはおそらく、ポー河の霧のせいだろうと想像はつくのですが、ここまではっきり分けられると、まるであからさまないじめみたいですねえ。

クラテッロの話は次回に。


実は、『ラ・クチーナ・イタリアーナ』の記事では、バッサ・パルメンセを象徴する人物として、“ペッポーネPeppone”と“ドン・カミッロDon Camillo”という二人を紹介しています。
この二人のことを説明すると長くなるので、「総合解説」には載せませんでした。

なのでここで、少し解説。


ペッポーネとドン・カミッロは、バッサ・パルメンセ出身でイタリアを代表する作家、ジョヴァンニーノ・グアレスキGiovannino Guareschi(1908-1968)の作り出した人物です。

二人はバッサ・パルメンセのある町の、町長と司祭。
ペッポーネが町長で、ドン・カミッロが司祭です。
幼馴染ですが、政治的信条が正反対で、町も真っ二つに分かれて大騒動。
けれど、人のつながりは政治とは別のもの。
そんなテーマが、笑いと人情に包まれて語られます。

イタリアでは、ドン・カミッロとペッポーネと言えば、敵で友人、という関係の代名詞。
小説は大人気になり、1952年にはフランスと合作で映画化されました。
映画もヒットして続編が作られ、さらに1983年にはリメイクもされました。
日本でも『陽気なドン・カミロ』という名前で1953年に出版されています。
映画の撮影が行われたブレッシェッロという町には、ドン・カミッロの銅像も造られました。

小説も映画も、とても高く評価されています。
『陽気なドン・カミロ』と『ドン・カミロ頑張る』というタイトルで、日本語字幕付きフランス語版のDVDも出ています。


↓ドン・カミッロシリーズ4作目の一場面



鐘の中から出てきたのがペッポーネ。



↓現代版リメイクのオープニング。
オリジナルとはかなり違いますが、バッサ・パルメンセの雰囲気は伝わります。







-------------------------------------------------------

関連誌;『ラ・クチーナ・イタリアーナ』2008年5月号
“バッサ・パルメンセ地方”の解説は、「総合解説」'08&'09年5月号に載っています。

[creapasso.comへ戻る]

=====================================

2 件のコメント:

italiamama さんのコメント...

バッサパルメンセ、クラテッロ研修で訪れたのが7月。川の畔で湿気が多いため蚊も多く、夏は耐え難い暑さです。この湿気がおいしいクラテッロを育むのでしょう。噛むほどに甘みがあり、まさにハムの王様。パルマなどではクラテッロに使った後の豚もも肉の残りをfiocco di clattaなどと名前を変えて生ハムのように仕上げ、安い価格で売っていました。

prezzemolo さんのコメント...

italiamamaさん
夏は耐え難い暑さですか。
根性のない私には、夏と冬に行くのは無理そうです(笑)
私もクラテッロをパルマで初めて食べた時は、しっとり感と甘みにビックリしました。
トリュフやブッラータと同じで、産地から離れば離れるほど味が落ちてしまう食べ物ですね。
fiocco di clattaですか(メモメモ)。
バッサ・パルメンセで生ハムを作るとどんな味になるのか、興味あります。