日本語解説(CIR)から、12月の料理の解説をしています。
12月といえば、もちろんクリスマス。
一年で一番豪華な食事をとる時期です。
豪華でも伝統を守るのがイタリアの都会風クリスマスのディナー。
これがシチリアあたりだと、いきなりフルコースかと思うような数の前菜から始まります。
はじめから終わりまで、歓迎の手を一切ゆるめないのが南イタリア風。
さすがにミラノ生まれのパネトーネを出すって話はあまり聞かないけど、ティンバロは出します。
ちなみに詰め物入りパスタがシチリアで進化したのがティンバロです。
クリスマスのゴージャスなディナーに欠かせない食材は、キャビア、牡蠣、フォアグラ、トリュフあたり。
どこの国でもおんなじですね。
キャビアについては後ほど取り上げます。
イタリアのクリスマスのパスタは、トルテッリーニなどの詰め物入りパスタが伝統的。
詰め物入りパスタは北イタリアの日曜日のご馳走として知られています。
そして肉料理。
正統派なのは七面鳥のローストです。
さらに、チキンも普通のチキンではなく、チキンより贅沢なチキン、去勢鶏capponeをいただきます。
クリスマスのために太らせておくチキンです。
詰め物入パスタの詰め物になるだけでなく、美味しいブロードも取れてパスタをゆでるスープにもなります。
さらに、ファラオのチキンこと、ホロホロ鳥など。
ここで簡単に鶏の歴史でも。
鶏の先祖はジャングルに棲む赤い鳥で、インドで家畜化されました。
当初は 卵が目的で、雄鶏は食用にはされませんでした。
ギリシャに最初に伝わった鶏は闘鶏用だったそうです。
鶏の戦い、怖すぎる↓
もちろん今やれば動物虐待ですけど、古代の人間が熱くなるのもわかる気がする。
ローマでは鶏を敬って異教の儀式に用い、やがて上流階級の料理に使うようになります。
紀元前161年に、ローマでは街が汚れるので路上で雄鶏を飼ってはいけない、という法律ができました。
そこで市民は裏をかいて、雌鳥を飼うようになります。
雄鶏同士は喧嘩をするので大量に飼うのは大変ですが、去勢するとおとなしくなります。
去勢された鶏は大きく育ち、肉は白くてとても柔らかい、と人気になりました。
去勢鶏は中世、特にルネサンス時代の宴会の花形だったのです。
小麦で飾った去勢鶏は永遠の命の象徴とされ、金箔で覆うこともありました。
ところが、七面鳥が登場して、この鶏の地位がゆらぎ始めます。
中央アメリカ原産の七面鳥は、1520年にコルテスのメキシコ宮廷にいた神父たちがヨーロッパに持ち込みました。
王族の間でもたちまち人気が出て、フランスでは1570年にシャルル9世が飼育場を増やすように命令し、その30年後にはフランソワ4世がマリア・デ・メディチとの結婚披露宴で七面鳥を出すように要望しています。
七面鳥↓
ホロホロ鳥は、その姿からしてどこかジビエのようですが、雉に煮た味で雉より肉が多く、野鳥の風味の鶏、とも言われています。
珍しい食材、という意味では、クリスマス料理に使うのもおもしろそう。
あまり普及していないので、各地の伝統料理にはまだ加わっていません。オリジナルの料理でもすんなり受け入れられそう。
さて、このかなり庶民的な鶏、ホロホロ鳥を、今月の(CIR)では、ラグーにしてニョッキのソースにしています。レバーも使い、ジビエのようでもどこかほっこりする1品です(リチェッタはP.9)。
ホロホロ鳥のオレンジ風味Faraona all’arancia
・オレンジの皮をむいてジュリエンヌに切る。
・ホロホロ鳥を切り分けて洗う。
・フライパンで油、にんにく、唐辛子をソッフリットにし、ホロホロ鳥を加えて両面を焼く。
塩、こしょう、ローズマリーを加え、コアントローをかけてアルコール分を飛ばす。オレンジの皮を加えて蓋をして40分ブラザーレし、オレンジの果汁を加えて5分なじませる。
鶏の中でもその美しさで常に話題になる品種は、ガッリーナ・パドバーナgallina padovana↓
明らかに1羽だけゴージャス↓
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ブログ『イタリア料理ほんやくざんまい』
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