「総合解説」2019年1/2月号発売しました。
年始の冬の号です。
季節柄、北イタリア料理とトリュフの話がだいぶ増えてきました。
それにしても、トリュフ人気は勢いがありますねえ。
アルタ・クチーナの料理としてだけでなく、庶民の生活の中にも広まってきていることを感じます。
最初に訳した記事は、例によって『クチーナ・イタリアーナ』のリチェッタです。
アンティパストの1品目は、カリフラワーのカルパッチョ、サルサ・ヴェルデ。
食材は、カリフラワー、プンタレッレ、クラテッロの組み合わせ。
プンタレッレとクラテッロは新年のちょっとしたご馳走にふさわしい食材なんですね。
ローマの名物野菜プンタレッレ↓
スパゲッティと同じで常に複数形です。プンタレッラとは言わない。
カタローニャ菜(ローマではチコリオーネと呼ぶ)のほろ苦い芽の部分。
細く切って氷水に晒してカールさせるまでが下ごしらえ。
ローマの旬は冬から春で、クリスマスや復活祭などの様々なローマ料理に使われているご馳走の食材。
この時期にローマに行くなら、プンタレッレは食べとかないと。
アンチョビ、にんにく、白ワインoビネガー、オリーブオイルのソースがローマの定番。
一方、クラテッロはエミリア地方のポー河流域の貴重な名物。
ジベッロのクラテッロが有名。豚のももの最も貴重な部位、霜降りのお尻の肉から造る洋梨型の、しっとりした甘い生ハム。
クラテッロはこの地方の独特の気候と人間の職人技が作り出す傑作。
今月の「総合解説」のタリアテッレの記事でも言っていますが、この地方の湿度のせいでクラテッロはこの地方ならではのカビで覆われ、食品はゆっくり乾燥し、その間に酵素がタンパク質を分解して味が強まります。
この過程は、日本酒なら杜氏と呼ばれるルベテラン職人たちの仕事。
クラテッロは、カットした後の保存の仕方によっても味が落ちてしまうとてもデリケートな食材で、かなり高価ですが、職人たちの手が随分かかっていることを考えると納得です。
生ハムとはレベルが違う。
世界一高価なハム、とも呼ばれていますが、ハムのつもりでむしゃむしゃ食べるともったいないかも。
ジベッロ↓
クラテッロの産地、バッサ・パルメンセ地方は霧の地方と呼ばれる。
寒い季節にポー河の南側を覆う霧をこの地方の肉屋は待ち焦がれている。
「11月には霧が出ますように」が彼らの願いだ。
ちなみに、トリュフの話をするとロッシーニの名前が必ず上がるが、クラテッロの話の時は、ヴェルディの名前が欠かせない。ロシアの宮廷にもクラテッロを持参したという話が伝えられている。
バッサ・パルメンセ地方の肉屋の祭り。↓
祭りが開催される11月は豚肉のサルーミが出荷される季節でもある。
この地方に行くなら11月。