2009年4月30日木曜日

イタリアワインの20年、その2

今日は、過去20年のイタリアワインの紆余曲折の話、その2。
『ガンベロ・ロッソ』の記事の解説です。


ワインスキャンダルでどん底に落ちた後、次々に誕生した新しいスタイルのイタリアワイン。
そのワインが華やかに開花したのは、1995年から2000年のことでした。

当時、世界に一大ワインブームが訪れます。
特に、アメリカとアジアの市場が熱狂の舞台。
ガンベロ・ロッソは、「集団泥酔」の時代だったと言っています。
アジアでは、日本だけでなく、韓国、インドネシア、シンガポールもワイン業界が注目する市場となりました。

高級ワインがバンバン売れる。
値段がぐんぐん上がる。
それでも売れる・・・。

当時のワインの値段は、「良識の範囲を超えていた」とガンベロ・ロッソは言っています。
きっかけは、ボルドーの95年のアン・プリムールだったとか。

イタリアで一番の勝ち組になったのは、トスカーナワインでした。
アルト・アディジェの白ワインも注目されるようになり、南では、プラネータ(プラネタ)とフェウーディ・ディ・サン・グレゴーリオが頭角を現します。

まさに、イタリアワインのバブル時代だったんですねえ。


泡がはじけたのは、2001年初めでした。
2001年と言えば、アメリカで同時多発テロが発生した年。
この年の9.11より前に、すでにイタリアは経済危機に突入していました。
きっかけの一つは、1999年のユーロ導入。
最初は目立たないほどの小さな変化から始まって、気がつけば、物価が劇的に上昇しだしたのです。

ガンベロ・ロッソは、「“太った牛”の時代が終わった」と表現しています。
これは、旧約聖書の創世記に出てくるエピソード。
こんな話です。

ある夜、エジプトのファラオが夢を見た。
自分はナイル河のほとりに立っている。
すると、7頭の雌牛が河から上がってきて、草をはみだした。
よく肥えた美しい牛だった。
さらにその後に、別の7頭の雌牛が河から上がってきた。
今度はやせ細った醜い牛だった。
そしてその痩せた牛たちは、なんと太った牛たちを食べてしまった。

ファラオは、夢解きをするというヘブライ人のヨセフに、この夢はどういう意味なのか尋ねた。
するとヨセフはこう答えた。

「それは神のお告げです。
エジプトは、これから7年間、豊作でとても潤う年が続くでしょう。
しかしその後に、飢饉が7年続きます。
だから王様、豊作の7年の間に出来るだけたくさん蓄えて、その後の飢饉にそなえなくてはいけません」

ファラオはヨセフを信頼して彼を宰相に任命し、飢饉に備える大役を任せた。
そして実際に、大豊作が7年続いた後に大飢饉が7年続いた。
もちろんエジプトは、この困難を乗り切ることができたのだった。


この太った牛の話は有名なようで、経済危機になるとエコノミストが必ず持ちだす話なんだそうです。
確かに、いくらでも売れる~とウハウハしていた時代に、売れなくなる時のことをもっと考えておけばよかったですねえ。
でも、もう後の祭り。

すべての物の値段が上がり、イタリアワイン業界は、経費の値上がりに四苦八苦します。
しかもそのうちに、お得意様のドイツやアメリカの経済も雲行きが怪しくなってしまいました。
そうなると、輸出向けの高級ワインが売れない。
外国市場向けに外来品種のぶどうで造ったワインが売れない。
しかも、2003年以降は天候不順で、気温上昇と雨不足。
踏んだり蹴ったりです。

当時のイタリアワイン業界の気分は、「みんな、ちょっと後ろに下がって!」

原点に戻ろう!
やっぱり伝統は大切だよ!!
イタリアの土着のぶどうだって素晴らしいじゃないか!!!

事態が深刻だっただけに、原点回帰の傾向は、時に度を越してしまうこともあったようです。
でもその後、適度に原点回帰、という流れに落ち着きました。
さらに、有機ワインも目立つようになってきました・・・。


これが2007年末までのイタリアワインの流れです。
伝統への回帰とオーガニック、この2つをキーワードに、それなりに頑張ってきたイタリアワイン。
この後に、未曽有の世界的な大不況に見舞われるとは、ガンベロ・ロッソもまったく予想していなかったでしょうねえ。
2009年末あたりにはどんな記事が載るか、注目です。



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関連誌;『ガンベロ・ロッソ』2007年12月号
“ヴィーニ・ディ・イタリア2008”の記事の解説は、「総合解説」'06&'07年12月号、P.38に載っています。


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2009年4月27日月曜日

イタリアワインの20年、その1

まずはクレアパッソからのお知らせです。
次回の配本は5月2日に発送の予定です。
いつも遅くなってすみません。


さて、今日はワインの話。
『ガンベロ・ロッソ』の記事の解説です。

ご存じの通り、ガンベロ・ロッソはワインの格付け本、『ヴィーニ・ディ・イタリア』を毎年出版していますが、21冊目となる2008年版を出した時に、過去20年のイタリアワインの歴史を簡単に振り返る記事を『ガンベロ・ロッソ』に載せました。

それを読むと、イタリアワインは、頂点が見えたかと思ったら急降下と、まるでジェットコースターのように上がったり下がったりを繰り返してきたことが分かります。

この20年のイタリアワインの歴史は、どん底からスタートしました。
1986年、イタリアのワイン業界を揺るがした大事件、いわゆる“メタノールワイン事件”が起きます。

その1年前の1985年は、「ワインスキャンダル」が起きた年です。
これは、オーストリアのワインにジエチレングリコールが混入されていたというもの。
日本でも、「不凍液」という言葉が頻繁にニュースに登場していました。
今ではどれくらいの人が覚えているでしょうか。
当時の日本は、ワインの売り上げが伸びてきた時期だったと思うのですが、この事件の後、店からドイツやオーストリアのワインがすっかり姿を消して、イタリアワインも影響を受けましたよね。

イタリアでは、「ワインスキャンダル」というと、1986年の「メタノールワイン事件」を指すようです。
これは、イタリアの複数のワイン関連業者が、ワインに塗料用のメチルアルコールを混入させていた事件で、19人が死亡し、15人が視力を失うという、イタリアの食品業界がそれまでに経験したことのない大スキャンダルでした。
人の命より利益の追求のほうが大事、と考える人がいる、ということを、イタリアワインの消費者たちは知ってしまった訳です。
この事件でイタリアワイン全体のイメージが低下し、前年は17%もの伸びを見せていた輸出量は、この年には37%減少したそうです。

この後の10年間は、イタリアワインがひたすらイメージの回復に努めた時代です。
ワインスキャンダルが起きるような、ぶどうを栽培している人が販売に直接関わらない、というそれまでのシステムが見直され、栽培から販売まで、全てを行う小さなワインメーカーが次々に誕生しました。
この時代の象徴として、ガンベロ・ロッソはランゲ地方を挙げています。
そしてランゲ地方の新人たちが目標とした造り手が、バルトロ・マスカレッロだったと言っています。
バルトロさんは2005年に亡くなっていますが、いまだに多くの人に影響を与え続けています。
彼のワインだけでなく、ワイン造りの哲学が、他の造り手たちの共感を呼ぶのでしょうね。

有名な「ノー・バリック、ノー・ベルルスコーニ」のラベル。
普段からラベルを自ら作っていたバルトロさん(こんな方)。
これは1995年に書いたラベル。
2001年の選挙の時に有名になりました。
こちらもコレクターズアイテム、彼を描いたラベル


この他にこの10年間を象徴するのが、スーパータスカンの成功です。
さらに、フリウリのワインも頭角を現してきました。
その代表としてガンベロ・ロッソが挙げているのは、イエルマン、ガッロ、グラヴネル(グラヴナー)、ドリーゴ(ドリゴ)。


イタリアワインの20年の話、次回に続きます。



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関連誌;『ガンベロ・ロッソ』2007年12月号
“ヴィーニ・ディ・イタリア2008”関連の記事は、「総合解説」'06&07年12月号、P.38に載っています。


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2009年4月24日金曜日

ボッコンディヴィーノのパンナコッタ

ブラのボッコンディヴィーノパンナ・コッタのリチェッタについて質問があったので、ちょっと紹介。

ボッコンディヴィーノは、スローフード発祥の地、ピエモンテのブラにあるレストラン。
以前、このブログで紹介したことがあります。

この店、パンナ・コッタがとても評判のようですね。
ネット上を探すと、イタリア内外のたくさんの人が、この店のパンナ・コッタはすごくおいしい、という感想を書いています。
「今まで食べた中で最高」、と言う人もいます。

ボッコンディヴィーノのパンナ・コッタ


残念ながら私は食べたことがないので、どれだけ美味しいのか想像するしかないのですが、世界中から客が訪れる有名店なので、噂が噂を呼んで話が大きくなった、ということもあるかもしれません。
でも、それだけ美味しいとみんなが言うのなら、どんなものなのか、興味がわくのも事実。

スローフードがイタリアで出版している本の中に、ボッコンディヴィーノのパンナ・コッタのリチェッタを収めたものがあるそうです。
『リチェッテ・デッレ・オステリーエ・ディ・ランガ』という本です。

この本のボッコンディヴィーノのパンナ・コッタのリチェッタを紹介しているサイトがありました。
まだ実際の本を見て確認はしていませんが、一応、それを訳してみます。

材料/8人分
 新鮮な生クリーム・・1リットル
 グラニュー糖・・230g
 板ゼラチン・・3枚
 00番の小麦粉・・大さじ1
 牛乳・・1カップ

.牛乳を温め、ゼラチンと小麦粉を加えて溶かす。沸騰させない。
.生クリームに砂糖200gを加えて沸騰させ、牛乳を加えて静かに混ぜる。
.砂糖30gを熱してカラメッラーレし、プリン型の底に入れる。さらにを入れ、冷蔵庫で2時間固めて型から出す。



店では、カラメルを糸状にたらして、ザクロの粒で飾ったりしているようですね。
「この店のパンナ・コッタは、シンプルでムースのように柔らかい」、と書いている人もいます。
堅さ具合もポイントですか。


リチェッタが載っているという本は、そのうちクレアパッソでも仕入れてみようと思っています。
多分少し先になりますが、入荷したらhpに載せます。


他にも、「この店のこの料理のリチェッタが知りたい」、というリクエストがあったらお気軽にどうぞ。
見つかるかどうかは別として、できる限り探してみます。



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2009年4月20日月曜日

カルドンとバーニャ・カウダ

今日はカルドンのリチェッタをどうぞ。

カルド・ゴッボ・ディ・ニッツァ・モンフェッラートの料理の動画を探してみたのですが、ないですねえ。
1つだけ見つけたのですが、長いです。
Rai Unoで放送された番組で、25分あります。

内容は、2人のシェフの料理対決。
坊主頭のシェフ、アンドレア・リバルドーネさんが、ニッツァ・モンフェッラートのカルド・ゴッボを使っています。
彼は、ピエモンテのスピネッタ・マレンゴという町にあるホテル・レストラン、ラ・フェルマータのシェフ(店のhpはこちら)。
ミシュランでは星が1つついています。
料理は、伝統と前衛をミックスしたピエモンテ料理。

料理がスタートするのは00:02:50あたりから。

アンドレアさんの料理は、“鴨の卵のカダイフ包み揚げ、カルド・ゴッボ・ディ・ニッツァ・モンフェッラートのバーニャ・カウダ和え添え”。

なかなかおもしろそうですねえ。


地元ピエモンテの食材、カルド・ゴッボ・ディ・ニッツァ・モンフェッラートについては、こう説明しています。

「今(12月下旬)はカルドンが最高においしい季節です。
このカルド・ゴッボというのは、とても特別な野菜なんですよ。
折り曲げて地面に埋めて白くさせる方法で栽培するんです。
寒い季節になると実がシャキッとなって、生で食べることもできます。
定番のバーニャ・カウダですとかね。
とても甘いんですよ」


リチェッタは、
・まず、白玉ねぎ1個、カルドン1個、トピナンブール(タピナンブール)1個をオリーブオイルと湯少々で煮る。これを攪拌して裏漉しする。

・鴨(アヒル?)の卵を落とし卵にする。溶いた鶏の卵をまぶしてカダイフで包み、揚げる。

・バーニャ・カウダを作る。にんにく1片につき塩漬けアンチョビー1尾の割合。にんにくは甘いものはそのまま使い、そうでないものは牛乳で下ゆでしておく。オリーブオイルににんにくとアンチョビーを入れて沸騰させずに熱し、パーミックスで攪拌する。バターや生クリームは加えない。

・カルドンの中心の部分を小さく切ってレモン水にさらす。水気を切ってバーニャ・カウダで和える。

・皿にカルドンとトピナンブールのクレーマを敷き、その上に生のカルドンを盛り付ける。そしてその上に卵をのせる。


もう一人のシェフの料理は、“雉の胸肉のチコリ詰め、雉のレバーのテスタローリ添え”。
これもなかなか美味しそうですねえ。

そして勝ったのは・・・。

動画はこちら。
 ↓
アンドレア・リバルドーネVSユーリ・リッソ


カルドンは、きれいな象牙色で肉厚なのが美味しく、緑色がかっているのは、苦くて硬い証拠。
普通、カルドンは生で食べるわけにはいかず、加熱する必要がありますよね。
変色を防ぐために、切ったらすぐにレモン汁入りの水にさらし、仕上がりの色をきれいにしたい時は、レモン汁や小麦粉を加えた湯でゆでるのが基本。
バーニャ・カウダに添える時は、外側の葉と筋を取って適度な大きさに切り、塩とレモン汁を加えたたっぷりの湯で、30分~1時間30分ゆでます。


クレアパッソの「リチェッタ・ダイジェスト」12月号には、“カルドンのグラティナート、アンチョビーとペコリーノ風味”というリチェッタを載せました。
カルドンのグラティナートは、定番のリチェッタの一つ。
そしてカルドンとアンチョビーも、定番の組み合わせ。
普通はゆでたカルドンにバーニャ・カウダのソースをかけて、チーズを散らしてグラティナーレすることが多いようですが、これはアンチョビーとチーズをパンと一緒にミキサーにかけてカルドンに散らし、グラティナーレする、というもの。
芳ばしい香りが漂ってきそうな一品です。


おまけの動画は、個人のお宅での超楽しげなバーニャ・カウダパーティー。
野菜が主役でも盛り上がれるものなんですね。







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関連誌;『ヴィエ・デル・グスト』'07年12月号
“カルドン”の記事の解説は、「総合解説」'06&'07年12月号、P.32に載っています。
“カルドンのグラティナート、アンチョビーとペコリーノ風味”のリチェッタは、「リチェッタ・ダイジェスト」'06年12月号、P.17に載っています。


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2009年4月16日木曜日

カルド・ゴッボ(カルドン)

今日はカルドンの話。
『ヴィエ・デル・グスト』の記事の解説です。


カルドン。
イタリア語では“カルド cardo”。

見た目はセロリ。
『ヴィエ・デル・グスト』の記事にもありますが、店先に並んでいても、知らない人なら、「育ちすぎたセロリだなあ・・・」、ぐらいにしか思わない。



カルドン, photo by tvol


カルドンを使ったイタリア料理と言えば、ピエモンテ料理のバーニャ・カウダが有名。
カルドンはイタリア各地で栽培されていますが、ピエモンテ(特にアスティ地方)のグルメたちは、この野菜には格別の思い入れがあるようです。


カルドンは野生のアーティチョークが祖先。
味もアーティチョークにやや似たところがあります。
繁殖力の旺盛な植物で、放っておくと、縦にも横にもどんどん成長します。

育ったカルドン

これをそのまま食べようものなら、渋い、苦い、硬いの三重苦。
そこで人間は、カルドンを美味しく食べるために、軟白栽培の方法を用いることを思いつきました。
カルドンを土の中に埋めたり覆いをしたりして、光を当てないで育てる方法です。

『ヴィエ・デル・グスト』によると、カルドンの軟白栽培の方法が記された16世紀の書物が残っているそうですから、かなり昔から行われていたんですねえ。
カルドン自体は、地中海地域では古代からお馴染みの野菜だったようですが。

軟白の方法は地方によって違います。
最も一般的なのは、茎を縛りながら下2/3を遮光性のシートで覆う方法。

ピエモンテやトスカーナなど一部では、
茎を束ねて縛り、覆いをしながら根元に土をこんもりかぶせたり
茎が根から離れないようにしながら倒して横に掘った穴に埋める
という方法も用いられています。
この方法で栽培したカルドンはゆるやかに曲がっているので、“カルド・ゴッボ cardo gobbo”、または“スパドーネ spadone”と呼ばれます。
“ゴッボ”とは「猫背」という意味で、“スパドーネ”は「剣」という意味。

この軟白栽培は、経験が物を言うデリケートな作業。
そしてその技を高度に極めているのが、ピエモンテの栽培農家なんですねー。
この地方のカルドンは、収穫の最低20日前に、先端だけ残して土の中に15~30cm程度埋めて軟白します。
カルドンは冬の間だけ出回る野菜ですが、土の量や埋める時期が適切でないと、霜の被害を受けた、腐ったりします。
だから、経験に頼るこの方法はとても難しく、イタリアでもこの地方でしか行われていない特殊なもの。
特に、ベルボ川流域の砂質の土壌で栽培される“カルド・ゴッボ・ディ・ニッツァ・モンフェッラート”は、生で食べることができる唯一のカルドンとして、とても高く評価されています。
スロー・フードの後援食材にもなっています。

カルド・ゴッボ・ディ・ニッツァ・モンフェッラート


旬の時期は10月から1月と、かなり限定されています。
秋から冬にかけてピエモンテ、特にアスティ地方を訪れる人は、ワインと白トリュフ、そしてカルド・ゴッボ・ディ・ニッツァ・モンフェッラートは、食べておかないともったいないですねー。


カルドンの話、もう少し続けます。



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関連誌;『ヴィエ・デル・グスト』2007年12月号
“カルドン”の記事の解説は、「総合解説」'06&'07年12月号、P.32に載っています。


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2009年4月13日月曜日

有機エキストラバージンオリーブオイル、その2

有機エキストラバージンオリーブオイルの話、その2です。

プーリアで毎年開催されている有機オリーブオイルの国際コンクール、Biol。
今年は4月20日から25日まで開かれます。
エントリーしているオイルは370品以上。
hpはこちら

2007年はスペインのオイルが優勝したという話を前回はしましたが、2008年に優勝したのはシチリアのオイルでした。
テッラリーヴァTerralivaという造り手の、“ケルビーノCherubino”というオイルです。
日本にも輸入されていて、テッラリーヴァという名前で流通しているようですね。
ちなみに“ケルビーノ”とは、「天使のような子供」、という意味。
こんなイメージ
詳しいことは分からないのですが、オリーブの名前でもあるようです。


テッラリーヴァは、シチリア南東部、イブレイ山地のブッケーリ(シラクーザ県)にある農場です。
hpはこちら
アグリトゥーリズモもやっています。

イブレイ山地(モンティ・イブレイ)は、一番高い山が標高986m。
ブッケーリはそのややふもとにあって、標高は約820m。
シラクーザ県の中では一番高い場所にあるコムーネです。
風通しのよい丘陵地帯なんですね。
ということは、オリーブの天敵、ミバエも農薬を使わずに駆除できそう。
有機農業の条件に恵まれている地域という訳ですね。
実際、イブレイ山地は上質オリーブオイルの産地でもあり、“モンティ・イブレイ”地区のオリーブオイルはDOP製品に認定されています。
ケルビーノもモンティ・イブレイDOP。

イブレイ山地の風車、遠くに見えるのはエトナ山。


テッラリーヴァの有機エキストラバージンオリーブオイルはこれ

Biolで優勝した時の晴れ姿

hpの製品の解説によると
ケルビーノは、
オリーブの品種はトンダ・イブレア。
畑は標高700m。
オイルの色は、黄色がかった緑色。
香りは、トマトや刈ったばかりの草の香り。
味は、オリーブの強いアロマがあってフルーティー、苦味と辛味のバランスが取れている。
最適な使い方は、スープ、サラダ、ローストなどに生でかけて。

値段は500mlで10.60ユーロ(約1,500円、送料別)。


ちなみに、2008年の2位はプーリアのオイルで、3位はカラブリアのオイルでした。
プーリアで開催されているコンクールなら、南のオイルが有利かも、ということを差し引いても、今、南イタリアの有機エキストラバージンオイルは、評価がぐんぐん上がっているようですねえ。


2位、SIOのDOPダウノ・ガルガーノ
3位、リブランディ・パスクアーレのノチェッラーラ・デル・ベーリチェ

受賞したオイル
左から、ダウノ・ガルガーノ、ケルビーノ、KAILIS(ベストパッケージ賞、オーストラリア)、カローリ・フルッタート・ブレンデッド(ベストブレンドオイル賞、プーリア)、リブランディ


シチリア産オリーブオイルのテイスティングの仕方(英語)





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関連誌;『ガンベロ・ロッソ』2007年12月号
“有機エキストラバージン・オリーブオイル”の記事の解説は、「総合解説」'06&'07年12月号、P.30に載っています。


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2009年4月9日木曜日

イタリアの有機エキストラバージン・オリーブオイル、1

今日は有機オリーブオイルの話。
『ガンベロ・ロッソ』の記事の解説です。

いつ頃からでしょうか。
スーパーの棚に並ぶエキストラバージン・オリーブオイルが、有機オイルだらけになったのは。
なんだか、気がついたらあっと言う間こうなっていたような気がします。


『ガンベロ・ロッソ』では、イタリアのエキストラバージンオイル事情について、2007年2月号ではこう言っていました。

「今、イタリアのエキストラバージン・オリーブオイルは、ワインブームが起きた頃と同じような状況になっている。
ワインに比べるとスピードはかなりゆっくりだが、着実にブームを迎えているのだ。
有名レストランでは、オリーブオイルのリストを作ったり、ワゴンサービスもするようになった。
テイスティング教室も人気がある」

そしてこうも言っています。

「その一方で、消費者がオリーブオイルを選ぶ基準はいまだに値段だ。
ワインにはそれなりの金額を払っても納得するが、その半額を、500mlのオイルに払うことに抵抗のある消費者は多い」

つまり、ブームを呼んでいるのは高級オイルだが、実際に売れるのは手頃な値段の製品、という現実があるわけですね。

しかも、世界一のオリーブオイル生産国にしてイタリアオイルの宿命のライバル、スペインは、国を挙げてオイルの大規模生産、つまり手頃な価格のオイルの生産に取り組んでいます。

政府のバックアップと、昔からの大土地所有制度の名残で広範囲の畑を一つにまとめることができるスペイン。
一方イタリアは、生産者はたくさんいるけれど、小さな畑が主流、という状況です。
有機オリーブオイルの場合、精油所の数がスペインの2倍以上あるという事実から見ても、一つ一つが小規模であることが分かります。

ということはつまり、スペインに対抗して安いオイルを作ろうとしても、小さな畑では無理!

ただし、見方を変えれば、生産者の数が多いということは、強みにもなります。
つまり、それだけ様々な個性のオイルができる、ということなんですねー。

そこで、イタリアの選んだ道は、「個性化」です。
有機オリーブオイルというのは、ある意味、個性を表す絶好の製品でもあったわけです。


ところが・・・・、
現実は甘くはない!

2007年12月号ではこう言っています。

「有機エキストラバージン・オリーブオイルは、他のオリーブオイルと比べて並はずれて値段が高い。
殺虫剤を使っていないというだけの理由で2倍の値段を払う必要があるのか、という疑問が起きても不思議ではない。
化学物質を使っていない、という理由だけで有機オイルが売れる時代はもはや過ぎた。
今は有機オイルにもおいしさが求められる。
それだけではない。
市場には世界中から有機オイルが集まってくる。
求められているのは、おいしくて、かつ個性のあるオイルなのだ」


値段は高くても品質の良さが自慢のイタリア産オイル。
ところがなんと、その座を脅かすような事態が進行している模様です。
ライバルのスペインが、有機オイルの生産に本気で取り組んでいるようなのです。
ガンベロ・ロッソによると、1991年から2000年の9年間で、スペインの有機オイルの畑の面積は約90倍!に増加。
プーリアで開催されている有機エキストラバージンオイルの国際コンクールBiolでも、2007年大会では、なんとイタリアを抑えてスペインの大手メーカーのオイル(Rincon de la Subbética)が優勝しちゃったんですねー。
2008年の優勝はイタリアのオイルだったので、一応面目は保ちましたが。
過去の受賞者のリストはこちら

さらに、イタリアにとって厳しいのは、イタリアで殺虫剤を使わずにオリーブオイルを栽培するのはとても難しい、という現実。
オリーブの天敵は、オリーブミバエ。
ところが、ガンベロ・ロッソによると、世界の中には、アルゼンチンのように、気候や地形の影響でオリーブミバエがいないという恵まれた国もあるんだそうです。
アルゼンチンやチリの有機オイルはBiolでも何度か賞を取っています。
単品種のオリーブのオイルでは、チリではスペインより上質のものができる、という評価も聞きます。
イタリアのライバルは、スペインだけではないようですねえ。

有機オリーブオイルの話、次回に続きます。



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関連誌;『ガンベロ・ロッソ』2007年12月号
「有機エキストラバージン・オリーブオイル」の記事の解説は、「総合解説」'06&'07年12月号、P.30に載っています。


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2009年4月7日火曜日

イタリア中部、アブルッツォ(ラクイラ)の地震

イタリア中部で4月6日午前3時32分(日本時間6日10時32分)に発生した地震は、時間が経つにつれて被害の大きさが明らかになってきました。
震源地はラクイラから10kmほどの地点。
揺れはロマーニャ地方からナポリまで、中南部全域に及びました。
4月7日付のコッリエーレ・デッラ・セーラによると、亡くなった人は150人以上、行方不明約250人、少なくとも7万人が家に戻れずに避難しているそうです。
翌日も余震が続いています。






ラクイラ





全ての人が一刻も早く救出されますように。



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2009年4月2日木曜日

ロンバルディアの前衛料理

今日はシェフの話。
『クチーナ・エ・ヴィーニ』の記事の解説です。

クレアパッソの今月配本号の中で一番ビックリした料理はこれ。

「豚足と牡蠣」!



作ったのは、ガルダ湖畔のシックなホテル・レストラン、“ヴィッラ・フィオルダリーゾ Villa Fiordaliso”(hp)のシェフ、リッカルド・カマニーニ氏。

フランスの一流店(Lucas Carton, Taillevent, Restaurant Vernet, La Grande Cascade)で修行した経験を持つシェフで、フランスのドーヴィルで2009年2月に開催されたオムニヴォール・フード・フェスティバルにも参加していました。

これはその時の写真。

このつるつる頭、彼のトレードマークなのか、コック帽をかぶっている写真は一枚も見つからない!

この人、ロンバルディア料理を徹底的に前衛的な外見にすることに情熱を捧げているようで、この豚足と牡蠣以外にも、へえ~、と思うような料理を色々と世に出しています。

これは「ウニと山羊のリコッタのリゾット」
 ↓



そしてこちらは「ウナギのグリル、にんにくのグースファット・コンフィ添え」


まずは最初の「豚足と牡蠣」。
豚足は下ゆでしてから香味野菜のみじん切りと一緒にソッフリットにし、ビネガー、ローリエ、粒こしょう、鶏のブロードで2時間以上ブラザーレしています。
ぷるっぷるの艶っつや。
そして牡蠣は生。
こちらもぷるっぷる。
豚足と牡蠣を皿に盛りつけたら、豚足の煮汁を漉して皿に張り、オリーブオイルとマルドンの塩を散らします。
青い花はボッラジネ(ボリジ)で、緑の葉はキンレンカ。

豚足と牡蠣って、一緒に食べることができるものだったんですねえ。
なんでこの二つを組み合わせたのか、その意図がいま一つよく分からないのですが、ひょっとしたら「ぷるっぷる」つながり?
正直言って、豚足と牡蠣をあえて一緒に食べたいとは思いませんが、常識にとらわれないこういう発想が浮かぶということに敬意を表して、紹介してみました。


次の「ウニと山羊のリコッタのリゾット」は、
米を油で炒めてワインをかけたら、ブロードではなく湯で煮ます。
そして仕上げに山羊のリコッタでマンテカーレ。
これを皿に盛りつけて花椒を散らし、山羊のリコッタと生のウニをのせます。
飾りはボッラジネの花と新芽。
仕上げはこちらもオリーブオイルとマルドンの塩。

ウニと山羊のリコッタ、これもあえて一緒に食べたいとは思いませんが、料理の色合いはとてもきれいですねえ。
伝説のマルケージの金箔のリゾットもそうですが、リゾットは前衛的な盛り付けが映える料理だということを実感します。


そして3つめは「ウナギのグリルとにんにくのグースファット・コンフィ」。
イタリアでは、ウナギの皮は、丸ごと布を使って首根っこから引くんですねえ。
その後で開くんだそうで。
布を使った皮の引き方

ウナギは切り身にしたら巻き、オリーブの小枝を刺して止めます。
これをオリーブの薪でグリル。
にんにくは一玉丸ごと使います。
まず水で7回ゆでこぼし、90度のグースファットに入れて2時間煮ます。
仕上げにウナギと同じようにグリルして表面をカリッとさせます。
中は柔らかくなっているので、ウナギに塗って食べる訳ですね。
サルサは、乾燥させた黒オリーブとピーナッツ油をビンビーで4分攪拌したもの。
皿にサルサをたらしてウナギとにんにくのコンフィを盛りつけ、ゲランドの塩、こしょう、フィノッキエット・セルヴァティコを散らしています。

ウナギとにんにく、これはスタミナ付きそうですねえ。
にんにくのグースファット・コンフィもおいしそう。
開いたウナギを見慣れている日本人としては、巻いたウナギと言うのは新鮮です。


それにしてもビンビーって不思議な道具ですね。
ソースもできるし、パン生地もできるし・・・。
今日のおまけ動画は、ビンビーで作るサルサ・トンナータ。




 


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関連誌;『クチーナ・エ・ヴィーニ』2007年12月号
リッカルド・カマニーニシェフのリチェッタは、「総合解説」'06&'07年12月号、P.26に載っています。


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